特集

2006.06.01 Special Issue No.12

貿易で豊かになれるはずなのに? 貿易が作り出す貧困問題

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最近、スーパーマーケットで並んでいる、見たことがない形の果物や野菜。格安の服や日用品。
よく見ると遠い国で作られた輸入品たちです。消費者である私たちにとってはうれしいことですね。
でも、そのことが多くの人々を苦しめているとしたら?
のぞいてみましょう、貿易に潜む、貧富の格差を生むからくりを――。


得意なものを作り、交換すればみんなが助かる

私たちは生活の中で、たくさんのものを手にし、口にしています。身の回りでできるものだけで生活していた時代もありましたが、さまざまな種類のものを使い、食べるようになると、全部自分で作るのは不可能ですね。

そこで私たちは経済活動、つまり物とお金の交換を通じて、欲しいものを手に入れています。 一人では作れない物を補い合う、みんなが幸せになるための仕組みが経済活動。「貿易」もその一つです。そして、貿易の利点として取り上げられるのが、それぞれが得意なものを作り、交換すれば効率がいいという発想(「比較優位」の発想)です。

例えば、あなたは1日でアメ4個、チョコレート2個を作ることができます。あなたの友人は1日でアメ2個、チョコレート4個を作ることができるとします。そこで、あなたが得意なアメを専門に、友人がチョコレートを専門に作ることにします。あなたがアメを8個、友人がチョコレートを8個作り、半分ずつ交換。すると、あなたも友人も、チョコ4個とアメ4個を手にすることができるのです。あなたと友人、どちらにもうれしい結果となりました。


貿易の落とし穴 格差が生まれるシステム

ところが、この考え方は、交換する物と物が同じ程度の価値でなければ成立しません。このバランスが崩れてしまったらどうなるでしょう。

例えば、あなたはアメ作りを専門に1日8個作っていますが、友人は1日にパソコンを1台作っているとします。アメとパソコンでは、パソコンのほうがはるかに高価ですね。友人は、パソコンと交換するならアメは8個では足りないし、アメばかりたくさんは要らない。だから、残りは他のモノかお金で支払うよう言ってきました。そこで、あなたは他の人と貿易に励み、パソコンとの交換に役立つものやお金を手に入れようとします。でも、アメよりも価値が高いモノを作っている友人が多く、必要な交換ができません。ついにお金を借りてパソコンを購入してしまいました。

このような貿易を続けた結果、あなたは借金の利息返済に苦しむように……。あなたにできることは、寝食を忘れて、ひたすら一番得意なアメ作りに励むこと。余裕のある友人は、最新の技術を導入して、どんどん価値の高い物を作れるようになり、あなたとの差は開く一方です。

世界の現状は、まさにこのように商品価値のバランスが崩れている状態です。綿を例にすれば、開発途上国は第一次産品の原料の綿花を輸出しながら、先進工業国がその綿を加工して作った衣服を輸入しているケースもあるのです。第一次産品は加工品よりも価値が安いのが一般的ですから、貿易による赤字は増える一方で、国を発展させ債務を返済するには至りません。債務は返済が不可能なまでに膨れ上がり、開発途上国を苦しめているのです。


ウガンダからのレポート

バニラの価格変動によって生まれた貧困

世界のバニラの約半分を生産していたマダガスカルが、ハリケーンの被害に遭ったのは2000年のこと。その後、バニラの価格は一気に高騰しました。輸入業者らは、世界各地の農家にバニラの生産を促し、売買して利益を上げました。しかし、次第に生産が過剰になり、5年余りで価格が低迷しました。

バニラ生産のみに切り換えてしまったウガンダの貧しい農家は、今、とても厳しい生活に追い込まれています。買取業者にも見放され、対処する手立てがありません。

気候や天災の影響を受けやすく、投機の対象にもなりやすい一種類の一次産品だけに頼った生活は、常に貧困の危機と隣りあわせといえるのです。

バニラ農家の声

「昔はいろんな野菜を少しずつ作り、家族で食べたり、市場で売ったりしていました。貧しい生活でしたが、家族が食べていくことはできました。

でも5年ほど前に、バニラがもうかると言われ、全部の畑をバニラ畑にしたんです。バニラは収穫まで時間がかかるけど、3年我慢したら収穫できて、驚くほど儲かったの。

それなのに、今は当時の80分の1の価格に。でも、もう引き返せないし…。そろそろ蓄えが底をついてきて、昔より厳しい生活になってしまいます。」

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バニラ農家の女性。支柱を立てて育てるなど、バニラは栽培に苦労する作物でもある

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バニラの中身(ウガンダ・ルグジ区、2005年8月)


植民地時代に押し付けられた産業

こうなったのは、開発途上国に能力がないから仕方がないのでしょうか? そうではありません。必要なものを少しずつ作って自給自足していたのに、植民地時代に統治国によって「他のものは輸入すればいいから」と、サトウキビ、ゴム、タバコといった、自分たちでは消費しない換金作物(お金を稼ぐためだけに作られる作物)一種類だけの生産を強いられ、不公平な貿易をせざるを得なかった国々がたくさんあるのです。植民地時代の後にも、莫大な資金を盾にした巨大な国際企業や、植民地時代に権力を手に入れた役人が同じことをしてきました。


膨らむ一方! 限界を迎える債務問題

多くの開発途上国は、先進工業国に対して多額の債務(国がする借金)を抱えています。戦後まもない日本も、復興のために多くの「借金」をしました。問題は、そのお金の使い方です。日本の場合、それらの借金は国の発展のために使われ、成長後に返済することが可能でした。

しかし、現在債務に苦しんでいる国では、社会のシステムが整っていなく、しっかり機能していないことも多くあります。一次産品のみの生産が続いている上、借りたお金やわずかな利益が独裁政権の指導者によって軍事費につぎ込まれたり、ひどい時には特権階級が私的な用途に着服し、国のためには全く使われなかったり。そのように繰り返された債務の返済金が、先進国からの援助金よりも多額なため、たくさんの国の発展を阻んでいるのです。


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