特集

2006.06.01 Special Issue No.12

貿易で豊かになれるはずなのに? 貿易が作り出す貧困問題

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INDEX

飢餓と貧困を生み出す貿易から、 みんなを幸せにする貿易に変える試みへ
貿易の自由化。先進工業国は、これを進めて、ますます富を得ようとしています。
でも、競争力のない貧しい国々にとっては大打撃に。 まさに生きるか死ぬかの分かれ道となるのです。


代償が高い「債務の帳消し」の条件

世界の貧しい人々の約80%は、農業によって生計をたてています。農業から十分な収入を得られる仕組みこそ、開発途上国が求めている貿易のあるべき姿。ところが先進工業国側は、その反対とも言える厳しい要求を、開発途上国に突きつけているのです。それは、「自由貿易を推進する」という大義名分のもと、関税を下げさせ、自由化を進めること。そして、その取り引きのために、債務の帳消しをちらつかせています。しかし、債務が帳消しになって一時的に楽になっても、競争力の弱い開発途上国の農業は衰退してしまい、貧しさから脱することはできません。

なぜならば、自由貿易は、先進工業国の農業にとってのみ有利に働くからです。多くの先進工業国では農業団体の政治的な力が強く、多額の農業助成金が農家に支払われています。日本では、助成金がないと立ち行かない農家が対象ですが、欧米では裕福で大量生産をしている農家が助成を受けて、国内で消費しきれない量の作物を生産しています。あまった作物には、輸出補助金が出され、時には生産コストを割る安値で世界中に、もちろん開発途上国にも輸出されます。

自由貿易によって、開発途上国の農家は市場から見放され、生活が圧迫されてしまうのです。

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HFWの事業で、赤ちゃんにおかゆを食べさせることができたお母さん(ブルキナファソ)


WTOで繰り広げられる先進工業国と開発途上国の攻防

この状況を改善するには、秩序ある国際的なルールを作ることが必要です。そして、貿易の国際ルール作りに関する機関には、WTO(世界貿易機関)があります。WTOは、農産品、工業品の貿易自由化だけでなく、サービス、開発途上国問題、紛争処理なども幅広く扱う通商交渉全般である「新ラウンド(新多角的貿易交渉)」にも取り組んでいます。 ところが、もともとWTOは、関税を低くして、比較優位が生かせるシステムの実現のために作られた機関。高価な工業製品を生産・輸出してきた先進工業国の考え方が根底にあるのです。その矛盾のため、1994年の設立以来、2年に一度開かれている参加国の閣僚会議は、難航が続いています。

開発途上国側は、いつも不利なルールばかり押し付けられていることを理由に、新ラウンドに抵抗していました。1999年のシアトルで開かれた第3回閣僚会議は、7万人の抗議デモと開発途上国の抵抗によって流会。新ラウンドを開始することができず、WTO消失の危機といわれました。

しかしその後、先進国側が「開発途上国に最も有利なルールにする」と約束。2001年のカタール会議に始まり、2005年1月1日までを期限として交渉が行われることになりました。欧米諸国は、輸出補助金をやめ、開発途上国に対して自由化や市場開放を求めないことを約束。 ところが、それは表向きの約束に過ぎなかったのです。2003年のカンクン会議でのこと。インド、中国、ブラジルなどを中心にG20として結束していた開発途上国を、欧米諸国側が個別に交渉して切り崩し、自国に有利なルールを押し付けようとしていたことが明るみに出たのです。結局、会議は決裂に終わってしまいました。

2005年12月の香港会議は、新ラウンド交渉期限を2006年末まで延長すること決まった後の、初めての閣僚会議でした。開発途上国と先進工業国の対立で新ラウンドが決裂する事態は、閣僚宣言の採択により回避し、欧米の輸出補助金の全廃期限を2013年と定めるなどの前進もありましたが、全体の進展は乏しかったといわれています。

きちんとつくられたモノを買うことで、世界を変えることができます。

「ピープル・ツリー」のフェアトレード商品

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オーガニック・コットンや手紡ぎシルクなどの天然素材の衣料品、アクセサリーなどの服飾雑貨からインテリア雑貨や食品まで、幅広いフェアトレード商品を展開している。 東京・自由が丘と表参道の直営店と、全国500店舗の取扱店のほか、通販カタログで購入できる
フェアトレードカンパニー株式会社
TEL 03-5731-6671
http://www.peopletree.co.jp/

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「ピープル・ツリー2006春夏号」(税込350円)は、2月下旬に全国書店で販売開始。600点のフェアトレード商品が掲載されている


あなたも世界とつながっている! 公正な貿易に参加しよう

開発途上国に対して、無理な要求をせず、自国の農業への補助金制度も秩序があるといわれている日本。しかし、日本に住む私たちにも、貿易で生まれる飢餓・貧困に歯止めをかける責任があります。

2005年7月から始まった「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーン※では、世界のリーダーたちに公正な貿易を行うことを求めています。私たちひとりひとりの声を集めて、世界の仕組みを変えていく試みです。 また、生産者を苦しめず、環境にも配慮して作られた商品を扱っているフェアトレードショップを利用したり、日本で作られた商品を買うようにするなど、身近にできる取り組みもあります。日々の暮らしの中で、できることから始めてみませんか。

※現在は、動く→動かす(GCAPジャパン)が活動を引き継いでいます。


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