特集

2007.05.01 Special Issue No.14

世界を変えるのは、誰だ?
飢餓を生む仕組みを変えよう~アドボカシーのチカラ~

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INDEX

現在の全人口を十分に養うことができる穀物を生産しながら、
8億5000万の人々が飢えに苦しむこの世界。
飢餓をなくすためには、貧しい生活を送っている人々を支援するとともに、
飢餓を生み出す不公正な社会の仕組みを変える必要があります。

人間によって作られた社会の仕組なのだから、私たちに変えることができるはず。
社会を変える大きな力について、考えてみましょう。


社会を変えてきた、市民の力

草の根レベルで始まった小さな運動が共感を呼び、賛同者や活動資金を集め、やがて世論となり、ついには社会が変わる― かつて世界に存在した奴隷制度やアパルトヘイト、そのほか多くの不公正な社会の仕組みを、私たちは市民の力で変えてきました。このような、社会を変える意志を持った行動のことを、「アドボカシー」といいます。

社会を変えるという言葉の印象から、アドボカシーは、政治的リーダーへの政策提言そのものだと思われがちです。しかし、多くの市民に問題を理解してもらい、一緒に行動してもらうための啓発活動もアドボカシーの大切な要素の一つ。私たちの提言が、多くの市民の支持を得ることで説得力が生まれ、政治的リーダーを動かす原動力となるからです。中でも、多くの市民を巻き込んで行われる大規模な活動はキャンペーンと呼ばれ、初等教育を普及させるためのもの、貿易の公正化を目指すもの、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成を訴えるものなど、世界中で様々なキャンペーンが行われています。


開発支援とアドボカシー 両輪で活動する国際協力NGO

開発支援に取り組む国際協力NGOは、長く開発途上国に対して物資などを提供してきました。貧しい生活を送っている人々に適切な支援を行えば、人々の生活状況は改善されます。しかし、開発途上国が抱える莫大な金額の債務や、不公正な貿易のような飢餓・貧困を生み出す根本の構造は、どれだけ開発支援を続けても変えることができません。世界から飢餓・貧困をなくすためには、開発支援だけではなく、不公正な構造を変える必要がある― そのことに気づいた国際協力NGOは、様々な関係者を巻き込んでアドボカシーを行ってきました。

例えば、「ジュビリー2000」と呼ばれる重債務貧困国(※)の債務削減キャンペーン。NGOだけではなく、経済や金融の専門家、労働組合や宗教団体などさまざまなグループが協力し合い、先進国の政府や国際機関に対して「2000年までに重債務国の債務を一切放棄しましょう」という働きかけを辛抱強く実施。その結果、2000年のG8沖縄サミットで各国首脳は重債務貧困国への債務放棄を合意しました。開発支援では解決し得ない構造問題を市民が変えた、アドボカシーのとても重要な成功例です。

2005年に日本で大きな盛り上がりを見せた「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーンもアドボカシーの一つです。同キャンペーンは、450万本を売り上げたホワイトバンドをシンボルに、「貧困を終わらせよう」という市民の声を集め、「債務を帳消しにする」「貿易を公正にする」「援助の質を高めて量を増やす」の3点を日本政府に訴えました。その結果、2008年までの対アフリカ援助額倍増、2010年までの政府開発援助(ODA)100億ドル増額、小泉首相(当時)が当初欠席予定だった国連サミットに急遽出席して演説で貧困問題に言及、などの成果が生まれました。中でも首相のサミット出席には、日本全国から首相官邸に送られた約170通のハガキが大きな影響を与えたと言われています。

※ 重債務貧困国 国際通貨基金(IMF)と世界銀行によって定義される、世界で最も貧しく重い債務を背負っている途上国のこと。


世界的な貧困撲滅キャンペーン “STAND UP”

2006年10月15日、東京の日比谷シティで “STAND UP”(「ほっとけない 世界のまずしさ」主催)が行われ、HFWもブースを出展しました。“STAND UP” とは、国連主導の貧困撲滅キャンペーン。 10月15日から16日にかけての24時間に、貧困撲滅とMDGs達成のために世界中の人々が立ち上がり、貧困を終わらせたいという想いを結集しました。

会場には約250人が集合。巨大なホワイトクロスを手に、「私たちは、極度の貧困をなくそうという意思表示をする世代の一員として……」から始まる力強い宣誓文を全員で音読し、一斉にSTAND UP!(立ち上がる)。

全世界で立ち上がった人数は即日集計され、その数なんと2354万2614人。「一人一人の行動が大きな輪となって繋がることを、肌で感じることができた」との感想が聞かれました。

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会場に集まった250人を含めて、日本中で2711人が立ち上がった

“STAND UP” 日本語サイト http://www.standup2015.jp/


日本全国から首相官邸に送られたハガキ

2005年7月のG8サミットで小泉首相(当時)が約束した「途上国への援助金100億ドルを、最も必要としている貧しい人々の保健や教育などに無償で使う」ことを実行するよう書かれていた。

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写真提供「ほっとけない世界の貧しさ」


NEXT P2 ハンガー・フリー・ワールドに求められる役割

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