特集

2008.05.01 Special Issue No.19

気候変動と飢餓 ~明日のエコでは間に合わない?~

増え続ける人口、多様化する食生活、バイオ燃料ブーム……
静かな食料の奪い合いが始まっています。 さらに気候変動によって自然環境が変わる中で、貧しい人たちは食料を確保できるのでしょうか。


食品の値上げから見えてきた、食料危機の可能性

突然始まった値上げラッシュ

2007年の秋頃から食品の値段が次々と上がっています。日本の食品メーカーが商品の価格を上げたのは十数年ぶりのこと。対象となったのは、食パン、ビール、醤油など、私たちにとって身近なものばかりです。この他にも、内容量を減らして値上げをしないよう踏みとどまっている“値上げ予備軍”が控えています。これらの商品には、小麦や大豆などの穀物から作られるという共通点があります。

日本の食料自給率は39%、家畜のエサになる飼料用を含む穀物の自給率はわずか27%と、穀物のほとんどを輸入に頼っています。そんな構造の中で、世界では原油価格の高騰によって輸送コストが上昇。また、食生活の変化やバイオ燃料ブームなどによって増える穀物への需要に生産が追いついていません。これらの要因によって原料となる穀物の価格が上がったことが、食品の値上げラッシュを引き起こしました。

2008年に価格が上がる食品

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出典:各社ホームページより抜粋


多様化する穀物の消費先

一般に収入が増えると、私たちは量よりも質にこだわった食生活を求めて、肉や魚をたくさん食べるようになります。日本人も貧しかった時代の食卓の中心は “五穀” とよばれる穀物でした。今では欧米と同じように肉や魚をたくさん食べています。食肉1kgを生産するには、エサとなる飼料用穀物が牛肉で11kg、豚肉では7kg、鶏肉では3kg必要です。直接消費は減っても多くの人口を抱える中国やインドなどの経済が成長し、家畜を通じて間接的に消費される穀物の量はそれ以上に大きく増えています。

また、価格が高騰する石油に代わる安いエネルギーとして世界が注目する、バイオ燃料の影響も無視できません。バイオ燃料とは、サトウキビや大豆、トウモロコシなどから作られる燃料のことです。アメリカではブッシュ大統領が 2007年に、「10年間で自動車の燃料の20%をバイオ燃料にする」と発言したことで、バイオ燃料がブームに。食用の穀物から、エネルギーのためのトウモロコシへと作付けを変える農家が多く見られました。本当にブッシュ大統領の計画を実現させた場合、食用の穀物を生産している耕地の30%がバイオ燃料のために使われることになります。


食料危機が現実となる?

穀物需給の目安となる在庫率は2000年の30%から下がり続け、2006年には15.6%にまで落ち込んでいます。これは、国連食糧農業機関(FAO)が適切な在庫率として示す17~18%より低く、全世界で食料危機が心配された1970年代に近いレベルです。

同じ期間に生産量は7%も増えていて、2006年には世界中で19億7450万トンもの穀物が生産されています。それでも穀物が足りないため、これまでの在庫を切り崩してどうにかしのいでいる状態です。

こうした状況の下でさらに心配されるのが、気候変動による影響です。20世紀に入り温暖化が進むにつれて、自然災害の規模や被害が大きくなっていて、農業に大きな打撃を与える例も報告されています。世界有数の小麦生産国オーストラリアでは、ここ6年間毎年のように干ばつが発生し、2006年度の生産高は前の年の40%に満たないという危機的な状況に置かれました。 気候変動による世界の食料事情への影響が気にかかります。

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産業革命の前と比べて平均気温が2℃以上高くなると、2080年の時点で飢餓、水不足、マラリア、洪水の危険にさらされる人口は36億人にも達する。

出典:Millions at risk/Parry et al


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