特集

2003.04.30 Special Issue No.1

水不足と環境・紛争、そして貧困 水問題から見る世界 2

安全な水が飲みたい! HFW活動国の水事情

バングラデシュ 毎日飲む水にヒ素が混入

ヒ素の毒性は昔から知られており、殺虫剤や除草剤、化学兵器などに用いられてきました。地下水や河川水に通常でも微量は含まれているのですが、濃度が濃くなり、また長年にわたって日常的に飲んでいると病気になります。日本でも、北海道、宮城、神奈川、長野、大分などで自然鉱脈から出る自然ヒ素による地下水汚染が問題となっています。WHO(世界保健機関)は飲料水中のヒ素濃度を0.01ppm以下にするよう勧告を出しています。

繰り返し摂取している場合には、皮膚では角化症、色素沈着などが起こり、顔面やまぶた、くるぶしなどに皮下浮腫が起こり、爪に白い線状ができたり、爪や頭髪が脱落することもあります。食欲不振、麻痺、運動失調など、末梢神経の異常もよく見られます。また、ひどい場合には、皮膚癌を起こし、肺癌の発生率も高くなります。

水源へのヒ素混入被害については1950年代頃から報告がありましたが、風土病として片付けられていました。しかし、1980年代後半からインドの西ベンガル州、次いでバングラデシュでも報告がされたガンジスデルタのケースは、汚染分布と被害規模の大きさで例を見ないもので、注目されることになりました。これらの地域では現在、約2000万人の健康が脅かされており、さらに規模が拡大すると推定されています。

HFWバングラデシュでは、水源から遠い村に井戸を設置することに加え、水質調査を行いヒ素汚染対策にも取り組んでいます。フォリドプール県バンガ郡をはじめ、飲料水中のヒ素濃度が50ppm以上の3地域で、ヒ素除去、あるいは汚染されてない雨水などを飲むためのろ過装置の普及を進めています。

開発途上国の妊産婦がおかれている状況をみてみると、近くに保健医療施設がないだけでなく、医師や助産師などの熟練分娩介助者が立ち会う出産の割合がとても低いことがわかります。立ち会いのもとの出産の割合は開発途上国全体で64%。なかでも低いのが南アジアの48%とサハラ以南アフリカの45%です(世界子供白書2011)。また、このような国や地域では、農村部での立ち会いの割合は、都市部の半分あまりといわれます。


体中が熱くなって、体が弱くなった
ゾリナ・カトゥンさん(35歳)
バングラデシュ・バリアハティ村

症状は7年前から現れました。まず、手が熱くなってヒリヒリしました。次に体中が熱くなって、体が弱くなり、力が入らなくなってしまいました。何の病気かわからないので、どうすることもできませんでした。

3ヵ月前に政府の保健センターの出張診療があって、やっとヒ素中毒だとわかり、無料で薬をもらうことができました。この地域では480人がヒ素中毒になっているそうです。昔は、医者はただの皮膚病と診察していました。ビタミンを採るようにも言われているのですが、お金がなくて難しいです。薬は、毎日寝る前に飲んでいます。しかし、副作用が強く、しっかり食事をしていないと、冷や汗が出て意識がなくなってしまいます。

でも、効果が出てきて、黒く硬かった手が少し良くなってきました。今は、HFWが支援してくれたろ過装置の水を飲んでいます。

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爪がはがれている状態。伝染する病気だと誤解されて差別される人もいるという


ウガンダ 3時間かけて手に入れるのは、汚れた水

ウガンダ、カソジ村の子どもたちは、毎日朝と夕方の2往復、3時間ずつかけて泉から水を汲み、家まで運びます。しかし、この泉の水は、汚水が混入するなどしてとても濁っています。さらに、水汲みに使っているタンクは、泥だらけ…。

このような汚れた水から、細菌性・アメーバ性の赤痢、コレラなどの下痢症状が広がったり、寄生虫に感染したりします。寄生虫は、直接命を奪うだけでなく、子どもの発育を阻害したり、成人の体力も弱らせて労働力を低下させるなど、貧困の大きな原因となっています。

HFWウガンダでは、泉の保全を行い、同時に水質汚染を食い止めるため公衆トイレを設置します。

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子どもたちにとって水汲みは重労働

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水浴びや洗濯をする人もいて、泉の水は汚れてしまう


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