特集

2009.12.01 Special Issue No.26

見えない“水” 輸入で成り立つ日本の食 ~世界の水危機と飢餓~2

では、世界の水事情は?

水道の蛇口をひねれば、いつでも水が使える日本。
でも、世界では静かに水危機が広がっています。


すぐ使えるのは、地球上の水の0.01%

そもそも、地球全体ではどれくらい水があるのでしょうか。国土交通省によれば、地球上に存在する水のうちの約97.5%が海水で、残りの約2.5%が淡水です。ところが、この淡水のうち約7割が「氷河」や「氷山」の状態で存在しています。これらは、人間がすぐ使うことはできない水です。

そうなると、地球全体の水の約0.8%が人間が使える水になるのですが、そのほとんどが地下水です。河川や湖沼などとして地表面に存在しているのは地球上の水の約0.01%にあたる10兆㎥。このわずかな分量の水だけが、すぐ使える水資源なのです。世界で使われている3兆5720億㎥の水の約3倍の量です。3倍といっても、これをすべて使うと河川や湖沼が干上がってしまうことになるので、決して十分な量ではありません。また、この水は蒸発して雲になり雨となって地表に戻ってくるという循環を繰り返しているので、量が増えることも減ることもありません。

一方、地下に蓄えられている地下水は、雨水が地中に染み込むなどして一部は循環しますが、多くは貯まるまでに長い時間がかかります。そのため、人間がくみ上げ過ぎれば、失われてしまう水です。

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出典:平成19年版 日本の水資源/国土交通省

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ブルキナファソの農村部では、水に雑穀とトウガラシ、シアバターを混ぜて、ゴミをろ過し栄養分を摂る

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河川の多いバングラデシュ。生活や農業用水としてだけではなく、物流でも重要な役割を果たす

人口は2倍、水の消費量は4倍に

ところが、人間の水の消費量はどんどん増えています。「過去50年間に世界の人口は倍増し、水の消費量は4倍になった」と、2003年の第3回世界水フォーラムで報告されています。

水の消費量が人口増加よりも倍のスピードで増えているのは、食生活の変化によるものです。私たちは豊かになると、量より質にこだわった食生活を求めて、肉や乳製品、油脂などをたくさん食べるようになります。これらの食料を生産するためには、多くの穀物を使います。日本も含めた各国の経済が成長し、急激に食生活が変化するにつれ、間接的に消費される穀物の量が増え、必要な農業用水の量も増えています。農林水産省は、さらなる世界の人口増加で2025年の農業用水の年間使用量は、1995年に比べ26%増加すると推測しています。人口増加以上に、肉や乳製品、油脂などを食べる傾向が増えれば、この数字はさらに高くなるでしょう。

いま多くの国で水資源が不足しつつあり、ヨルダン川、ナイル川、ガンジス川などでは水をめぐる紛争が起きています。今後、人口増加と人々の好みの変化に合った食料を確保するためには、水資源の確保が不可欠と、水争奪戦が始まろうとしているのです。

世界水フォーラムとは

年に1度、3月22日の「世界水の日」に合わせて、世界の重大な水問題を討議するために開催されている。各国の政府関係者や政府代表も多数参加し、世界の水問題とその政策に関する議論に大きく影響を与えている。

日本向け食料をつくる海外で水が枯れる……

バーチャルウォーターは実際に目に見える水ではないので、水道から水が流れるのを見て「もったいない」と感じるような感覚を持つことはできません。しかし、世界では水を使いすぎている地域が着実に広がっています。地表や地下で循環している水資源のうち、4割を超えて人間が使うと、水資源へのストレスが高くなり、水不足などが心配されますが、第2回世界水フォーラムでは、2025年には水資源へのストレスが高い国に住む人口は40億人を超えると予測されています。
たとえば、日本に多くの農作物を輸出している中国北部や米国中西部では、循環している水資源の6割も使用していて、かなり水ストレスが高い状態です。実際に、米国中西部のカリフォルニア州セントラルバレーでは、ここ数年の干ばつによって農業用水を確保できず、多くの農家が失業する事態に陥っています。

2025年の水ストレス予想図
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出典:農林水産省「危機に直面する世界の水と食料生産」
資料:第2回世界水フォーラム採択 世界水ビジョン


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