特集

2010.03.01 Special Issue No.27

地球を守る、命のつながり ~生物多様性と食~

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INDEX

住まいの材料になる木々、着るものをつくる布になる植物、そして食べものとなる動植物。私たちの暮らしは、地球上に暮らす、さまざまな命によって支えられています。そして、その命も多くの命に支えられている……

この無限のつながりで世界は構成されています。でもいま、その命のつながりのバランスが崩れようとしています。

地球上には、科学的に明らかにされている種類で約175万、未知のものも含めると3000万種ともいわれる生き物が暮らしています(平成20年版 環境/循環型社会白書)。この数字には動物や植物だけではなくカビなどの菌類や微生物も含まれます。これらは、おたがいに影響しあって共存していて、私たち人間も例外ではありません。しかしいま、そのバランスが崩れ、絶滅する生き物が急激に増えているのです。

そのような中、国連は2010年を「国際生物多様性年」と定めました。あらためて地球上に暮らす生き物と人間との共存について考えようという取り組みです。しかし、「生物多様性」という言葉に、なかなかピンとこない人のほうが多いのではないでしょうか。


生物多様性って、どんなこと?

環境省は、生物多様性を生き物の“個性とつながり”と表現しています。その言葉の意味を、具体的に考えてみましょう。

ここでいう“個性”とは、さまざまな違い(=多様性)のことで、3つのレベルに分けられます。まず「生態系の多様性」。これは、自然林や里山林、人工林などの森林、湿原、河川、サンゴ礁など、さまざまな環境があることです。次に「種の多様性」。地球上には、3000万種ともいわれるいろいろな生物種が暮らしています。三つ目は「遺伝子の多様性」。同じ種であっても一つひとつの生き物の間で遺伝子が違います。すべての生き物は、約40億年もの進化の過程で、さまざまな環境に適応し、その特徴が遺伝子レベルで分かれてきました。乾燥に強い、暑さに強い、その土地で流行る病気に強いなどです。同じ人間でも、一人一人の顔や背格好、そして性格が違うように、生き物には生息する地域によって特徴に少しずつ違いがあります。

でも、こうした個性だけが生物多様性ではありません。それぞれの個性が、一つの地球の上で役割を持ち“つながり”あってこそ、生き物の命が成り立っているのです。たとえば、ドードーという飛べない鳥が、かつてインド洋のモーリシャス島に存在していました。しかし、その島に人間がやってきて食べるために乱獲し、飛んで逃げることができないドードーはあっという間に絶滅してしまいました。すると、島の樹木に異変がおきはじめます。ドードーが食べていたカリバリア・メジャーという木の実は、そのフンと一緒に排泄されてはじめて発芽するのです。ドードーの絶滅によって、島独自の樹木の命も絶たれてしまいました。さらにこの樹にだけに宿る昆虫や微生物なども絶滅していきます。このように、1つの種の命は、他の種の命にもつながっています。

つまり、生物多様性とは、多くの生き物がそれぞれの個性を持って地球上に共存しているということ。そして、お互いの命はつながって成り立っている、ということです。

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ミツバチの受粉で実をつけるマスタードの畑。人間は生態系を活用して農業を営んできた

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涼しい木陰で勉強するブルキナファソの子どもたち。人間はあらゆる面で自然の恩恵を受けている


15分に1種類が絶滅……

ところが近年、地球温暖化や生き物の乱獲・過剰な採取、森林の伐採や土地の埋め立てなど、人間の活動によって、生物多様性が危機にさらされています。環境省によれば、ここ数百年の地球上の種の絶滅のスピードは、それ以前の1000倍にも達し、年に4万種も絶滅しているといいます。

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では、生物多様性は私たちの暮らしのなかでどのような役割を果たしているのでしょう。生態系を通じた人間社会への恩恵として考えるとわかりやすくなります。生態系サービスともいわれ、大きく4つに分かれます。

まずは「サポート」。微生物が水をきれいに保ち、植物が光合成を行って酸素をつくる…… さまざまな生き物がそれぞれの役割を発揮することで人間を含むすべての生き物が存在するための環境がつくられ、維持されています。 次に「緩和作用」。化学物質による環境汚染や気候変動などで、害虫が急激に発生したり自然災害が起きたときに、その急激な変化を緩和します。たとえば、マングローブやサンゴ礁は津波を軽減してくれます。 そして「供給作用」。私たちは生態系から衣食住などを得ているほか、医薬品などを生み出す際には、菌類や微生物などを利用しています。 最後に「文化的効用」。これは、文化や精神面での生活の豊かさのこと。観光やお祭り、文学、音楽にとって、その地域にしかない美しい自然の景観などが大きな役割を果たしています。

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飲み水となるきれいな水も、地中の微生物が浄化している


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