特集

2010.04.28 Special Issue No.28

栄養が守る、子どもの命と未来 ~子どもの飢餓~

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INDEX

いま、5歳の誕生日を迎える前に命を落としてしまう子どもは、世界で年間880万人。その原因の1/3以上に栄養不良が関係しています。

なぜ、栄養不良が起きるのでしょう。
食べ物が手に入らないからだと思われがちですが、それだけではありません―。


栄養不良とは、健康に生きるために必要な栄養素が不足している状態のこと。単に十分な量の食事をとれていないことだと思われがちですが、それは栄養不良の一部に過ぎません。栄養不良には大きく分けて二つあります。一つは、食べる量が少ないことで十分なエネルギーを得られなくなってしまう“カロリー不足” 。食べる量が少ないと摂取できる栄養素も減ってしまうため、栄養素全般が不足してしまいます。このカロリー不足に陥っている人、いわゆる飢餓人口は世界で10億2000万人。そして、もう一つは“栄養素不足”。これは、お腹いっぱい食べられてカロリーは十分でも、人間の身体をつくるために欠かせない栄養素をバランス良くとれていない状態です。隠れた飢餓とも呼ばれ、世界中で20億人以上います。

栄養素は目に見えないもの。不足することで何が起こるのかあまり知られていません。でも、実は人間の成長、特に子どもに与える影響はとても深刻です。

5歳未満児の死因

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出典:Tracking Progress on Child and Maternal Nutrition/ユニセフ


食べる量の問題だけではない栄養素不足の影響

多くの人が、“栄養が足りない” “飢餓”と聞いて頭に思い浮かべるのは、やせ細ることでしょうか。これは、カロリー不足によって起こることの一つで、体重が少しずつ落ちていき、深刻になると栄養失調になります。さらに悪化すると極端にやせて脱水状態に陥り、最悪の場合、死に至ります。では、栄養素不足でどんな問題が起こるのでしょう。

たとえば、タンパク質(※1)。成長期の子どもがタンパク質を得られないと、身長がのびない、体重が増えず十分な筋肉がつかない、内臓が成長しないといった問題が起き、成長がとまって体力が全体的に低下してしまいます。さらに悪化すると、体に水分がたまりやすくなって、むくんでしまうクワシオルコルと呼ばれる状態になります。この言葉は、「最初の子と2番目の子」という意味の西アフリカ・ガーナの言葉からきています。2人目の子どもが生まれると最初の子どもは母乳を2人目に取られ、まだお乳が必要な時期に乳離れすることになり、幼いうちからイモ類やコメなど炭水化物中心の離乳食になってしまうことに由来します。

また、免疫力をつけるビタミンA(※2)。足りないことで抵抗力が弱まってしまい、肺炎や下痢などにかかりやすく、治りにくくなり、命を落とすリスクが高くなってしまいます。ほかにも、ヨウ素(※3)や鉄分(※4)などさまざまな栄養素の不足が、体に大きな影響を与えます。

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腕囲を測ることは、外見ではわかりにくい栄養不良の診断方法の一つ

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※1 タンパク質  身体をつくる基本となる。幼い子どもに不足すると、成長が止まる、言葉を話し始めないなどの発達障害に陥る。
※2 ビタミンA  不足すると免疫力が下がり、病気にかかりやすくなる。また、目の病気の原因にもなり、ひどい場合は失明する。
※3 ヨウ素  不足すると首に大きなコブができる甲状腺種にかかる。子どもに不足すると、知的発達が損なわれ、成長が妨げられる。
※4 鉄  鉄不足は貧血の原因の一つ。出産の際の大量出血の危険が高まる。貧血のお母さんから生まれた子どもも貧血であることが多い。


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