特集

2003.04.30 Special Issue No.2

学校に行きたい! 教育で貧困のサイクルを断ち切る

01_top

INDEX

楽しかった夏休みも終わり、真っ黒に日焼けした小学生が、元気に登校する姿が見られます。しかし、世界にはノートも鉛筆もない子ども、学校に通うことさえできない子どもたちがたくさんいます。

学校に行けない子ども1億1300万人

ユネスコの2000年の統計によると、学校に通えない6歳~11歳の子どもは約1億1300万人もおり、15歳以上の成人で読み書きのできない人は8億 8400万人といわれています。国の教育制度の未整備に加え、貧しい家庭に生まれた子どもたちは、入学金や授業料が払えない、学用品が買えない、働かなければならないといった事情から学校に通うことができないのです。

また、せっかく小学校に入学できたとしても中途退学する子どもが多くいます。開発途上国では入学した生徒が5年生まで在学する率は55%にすぎません。

初等学校年齢に相当しながら
就学・通学していない子ども

02_03


入学できたとしても…続く貧困の悪循環

朝、まだ暗いうちに起きて、水汲みの仕事を終える子ども。その後、朝食を十分にとることができないまま、学校まで遠い道のりを歩きます。

やっと辿り着いたのは、窓も電灯もない薄暗い教室。何十人もの子どもが詰め込まれています。先生は多すぎる生徒の指導に疲れ、授業を進行させるために厳しい規則や体罰を必要とします。授業では、ふだん使っている言葉とは違う言語が使われ、質問もできず、暗記ばかりの退屈な授業。勉強に集中することができず、欠席も多くなってしまいます。

ついには、基礎学力をつけることができないまま学校を辞め、安い賃金で働き始めます。成長して家庭を持っても、貧しいまま。自分の子どもを学校に行かせることができません…。
例えば、このような悪循環の中に暮らす人々もいるのです。


就学率が上がると貧困・死亡率が減少

教育はきちんと身につけることができれば、貧しさと決別する絶好の機会になります。危険で搾取されやすい仕事が多い児童労働や詐欺などから身を守ることが可能になり、より安全で収入がいい職業につくことができます。

農業においても学校に通った農民は、通わなかった農民よりも、生産高が多くなる傾向が見られます。また、生命に直結する問題である保健衛生への理解も深まり、特にHIV/エイズに対して正しい知識を得ることは大切なことです。

さらに、女の子への教育は重要な意味を持っています。教育を受けた女の子は結婚の時期が遅く、若すぎる妊娠や出産による死亡が少なくなり、育児への関心を高く持つようになります。実際、女子の小学校就学率が10ポイント上がると乳児死亡率が出生1000人当り4.1低下し、女性の中等教育就学率が同じだけ上がると、乳児死亡率がさらに出生1000人当り5.6低下することが期待でき、人口増加の抑制にもつながるのです。

教育への投資は、命を守ること、そして貧困からの脱却、社会の発展にとって非常に有効なのです。

2_01_01

ウガンダのカニャニャ小学校


削減されやすい教育への支出

教育は貧困のサイクルを断ち切る重要な鍵であり、すべての人の基本的人権であると世界的に認識されているにも関わらず、教育の普及には困難がつきまとっています。

開発途上国の経済危機による支出の切り詰めは、まず公的サービス、特に教育の普及を直撃しました(例えば、債務危機が起きた1980年から 1987年までの間にラテンアメリカとカリブ海諸国では住民1人あたりの実質の教育支出がおよそ40%減少、サハラ以南のアフリカでは65%減少)。

政策の決定は、国内の権力ある人々の主張が優先されやすく、教育のない人々の声は無視される傾向にあり、真っ先にしわ寄せがくるのです。しかも、教育は GNPや他の経済・社会指数の増加に即時に反映されないので、短期的に成果を求める場合は優先されません。手っ取り早く乳児死亡率を下げるためには、教育より予防接種などが優先されがちです。

しかし、教育の普及なしには、民主政治の進展や社会経済の開発は期待できないことも事実なのです。

2_01_02

バングラデシュのモルビダンギ小学校校


国連識字の10年~すべての人に教育を~がスタート

国際社会でも、教育の普及に関して、数々の約束がされてきました。その結果、1960年当時、開発途上国では6~11歳児で小学校に就学していたのは半分以下(先進工業国は91%)でしたが、1980年にはアジアとラテンアメリカで小学校の就学者数が2倍以上増え、アフリカでは3倍に増えるという目覚しい結果となりました。しかし、その後人口の急増や依然として教育支出の優先順位が低いことなどにより、未就学・非識字人口の減少は停滞しています。

このような状況の下、国際社会は再度教育の大切さを訴えはじめました。2000年には、世界教育フォーラムが開催され、新たに6目標、12戦略、優先地域、フォローアップの方法などについて、180ヵ国が合意。2003年1月からは国連識字の10年もスタートし、さまざまなレベルで行動がとられています。

しかし、世界教育フォーラムの2015年までの基礎教育完全普及という目標達成は難しいとの見方もあり、より一層の国際社会の連帯、政府の取組み、またNGOの活躍も必要です。

参考 1999年/2002年世界子供白書 ユニセフ

世界教育フォーラム(2000年4月セネガル)「ダカール行動の枠組み」6つの目標

1. 就学前の子どもの福祉及び教育の改善
2. 2015年までに全ての子どもが受け、修了できる良質の無償初等義務教育を確保
3. 生活技能プログラムへの公平なアクセスを確保
4. 2015年までに成人識字率の50%改善を達成
5. 2005年までに初等中等教育における男女格差を解消
6. 教育の全ての側面における質の向上

教育をめぐる世界の動き

1948年 国連総会 世界人権宣言を採択、教育を万人の基本的権利と宣言。
1959年 国連総会 児童の権利に関する宣言を採択、教育はすべての子どもの権利と宣言。
1960-1966年 ユネスコが4つの世界教育地域会議を開き、無償の義務初等教育の地域別、期限付きの目標を設定。
1980年 就学する子どもがラテンアメリカとアジアで2倍、アフリカで3倍に(ただし、世界教育地域会議の1980年までに初等教育の完全普及という目標は未達成)。
1981年 女性に対するあらゆる差別の撤廃に関する条約発効。女子教育の平等の権利を呼びかける。
1982年 債務危機。開発途上国の教育を含む公的サービスが大打撃を受ける。
1990年 万人のための教育世界会議(タイ)子どものための権利条約発効。子どもの教育の権利が国際法になる。子どものための世界サミット。159ヵ国が2000年までに基礎教育を完全普及すること、就学年齢児の少なくとも80%が初等教育を修了することを約束。
1993年 E-9教育サミット。世界の人口の約半分、非識字成人の70%を占める人口最多の開発途上の9ヵ国(バングラデシュ、ブラジル、中国、エジプト、インド、インドネシア、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン)が2000年までに初等教育の完全普及を実現すると約束。
1995年 世界社会開発サミット。貧困解消のために質の高い教育の普及を約束。
1996年 万人の教育に関する国際協議フォーラムの中期会議(ヨルダン)
2000年 世界教育フォーラム(セネガル) 1990年「万人のための教育世界会議」の達成は困難であることを確認。新たに6目標、12戦略、優先地域、フォローアップの方法などについて合意。
2003年 国連識字の10年 スタート

NEXT P2 HFWの取り組み

  • 1
  • 2