特集

2011.09.01 Special Issue No.32

お産とお母さんたち ~開発途上国での出産とリスク~ 2

お母さんの命を危うくする原因と、その解決策とは

なぜ、妊娠や出産におけるリスクの格差がここまで開いているのでしょうか。

開発途上国の妊産婦がおかれている状況をみてみると、近くに保健医療施設がないだけでなく、医師や助産師などの熟練分娩介助者が立ち会う出産の割合がとても低いことがわかります。立ち会いのもとの出産の割合は開発途上国全体で64%。なかでも低いのが南アジアの48%とサハラ以南アフリカの45%です(世界子供白書2011)。また、このような国や地域では、農村部での立ち会いの割合は、都市部の半分あまりといわれます。

そして、妊産婦が介助を受ける割合が低い国や地域ほど、妊産婦死亡率が高くなっています。つまり、「安全なお産ができる環境」があるかないかによって、リスクに大きな違いができてしまっているといえます。

分娩時に何らかの体の異変が起きたときに、介助者が適切な施術を行えば助かるケースが多くあります。たとえ介助者だけで治療ができなかったとしても、症状を見極めて医療設備の整った施設へ素早く搬送することで、より多くの命を救うことができます。これらを考えると、お母さんの命を守るために国レベルの対策として求められることは、熟練介助者を育成して介助を受けられる妊産婦の割合を高めること、そして保健医療施設を増やすことです。ですが現状では、そうした妊産婦のケアが十分に行われていない国や地域が数多くあります。

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毎月200名の赤ちゃんが生まれる、ブルキナファソの国営保健センター。近くにこうした施設のない地域では、助産師の介助なく自宅出産する女性も多い


女性の地位が低いことで、妊産婦保健への優先順位が下がっている

その原因として、国の予算が乏しく必要な資金が得られないことに加え、女性の地位が低いために予算が優先して振り分けられていないことが挙げられます。実際に、経済発展が同じくらいの国々を比べてみると、女子初等教育就学率が低いなど女性の地位が低い国ほど妊産婦死亡率は高くなっています。

家庭や地域レベルで考えてみても、女性の地位が低いことが大きな影響を与えています。たとえば妊産婦と赤ちゃんは特に栄養が必要ですが、多くの開発途上国や地域では男性の食事が優先され、女性は子どもと残った分を食べる、あるいは食事を抜くようなことがあります。妊娠期に鉄分が不足して貧血症になると、出産時の大量出血の危険性が高まるなど、栄養不良はお母さんの体に大きな影響をもたらします。さらに開発途上国では、女性が親や親せきが決めた相手と10代前半で結婚・出産することが多く、体が未発達な年齢での出産によって危険が高まります。実際に、世界の15~19歳の女性の死因でもっとも多いのが妊娠と出産に関連するもの。15歳未満の妊娠や出産で命を落とす確率は20代の女性の5倍にもなるといいます。家庭や地域、社会の中での女性の地位を向上させること、女性が教育を受け、結婚や出産について自分で決められるようになることが、妊産婦を守るためにも重要なのです。

そのほか、出産と出産の間隔が短すぎる、出産の回数が多いことなども、女性の体に大きな負担を与えます。望まれない妊娠を減らし、夫やパートナーと相談して必要に応じて避妊を行えるなど、家族計画を含めたリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)についての普及と啓発も必要です。

安全なお産をできる環境の重要性が開発途上国と先進国それぞれに浸透し、政策や支援方針の中に位置づけられ、家庭や地域でも理解されること、そして女性の権利が守られ尊重されることが、お母さんの命を守ることにつながります。

数字で見る妊産婦の現状 (3)
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