特集

2003.11.30 Special Issue No.3

アフリカ・アジアで深刻な社会問題 HIV/エイズの現在

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初めて確認されてから22年が経過したにもかかわらず、今なお感染が拡大しているHIV/エイズ。労働人口の減少や対策費への莫大な支出により、多くの国々に危機が訪れています。今まさに国際的な取組みが求められています。今回はHIV/エイズの現状、そして貧困との連鎖についてお伝えします。

HIVに感染している人の推計数(2000年末)

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2002年に新たにHIVに感染した人の推計数
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2002年にエイズで死亡した人の推計数
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毎日、1万3000人以上が感染、8000人が死亡

現在、世界では推計4200万人がHIVに感染しており、毎日新たに1万3000人以上が感染、8000人が亡くなっています。さらに、今後有効な予防策を取らなければ、2010年までに低・中所得国を中心に、4500万人が感染すると予測されています。

世界で最も感染率が高いのは、ボツワナです。成人の38.8%、2.57人に1人がHIVに感染している状況にあります。そして、世界で最も感染者が多いのは、南アフリカ共和国で、500万人。成人の20.1%が感染しています。人々のHIV/エイズに対する恐怖心は高まり、「処女と性交をすればエイズが治る」という迷信を信じて、幼い少女がレイプされるという痛ましい事件まで多発しています。


ジンバブエの農業地帯で、エイズによる労働力不足で食料生産が50%も減少

HIV/エイズは、社会の発展を阻害するばかりか、破壊しかねないほどの悪影響を及ぼしています。国を担う人材が次々と亡くなり、対策費が国家予算の多くを占めるようになっていきます。特に、最大の感染経路である性的活動が盛んな若い年代で感染が広まっているため、労働力の減少は深刻な問題です。

エイズによる被害が顕著なアフリカの25ヵ国では、1985年以降、エイズで700万人の農場労働者が死亡。ジンバブエの農業地帯では、エイズによる労働力不足で、この5年間に小規模自作農の食料生産が、50%も減少したと言われています。

世界のHIV/エイズ感染者の70%がアフリカのサハラ以南に集中していますが、日本を含むアジア太平洋地域でも増加しています。特に、カンボジア、ミャンマー、タイで爆発的に蔓延しはじめたほか、インドでは、世界2番目となる397万人がHIVに感染。中国でも100万人が感染しており、有効な対策がされなければ10年後には1000万人に増えるとさえ推定されています。


なぜHIVは蔓延防止が難しいの?

なぜHIV感染は、これほど増加しているのでしょうか? その原因のひとつは、性交渉、薬物使用時の注射器の回し打ち、母子感染、検査が行われないままの輸血など、感染経路が数多くあることです。さらに、文化や宗教的な慣習、そして貧困など、さまざまな背景が影響しており、いくつものアプローチを組み合わせなければ、効果を上げることができないのです。

【ケース1】危機感の欠如、性に対して閉鎖的な社会
先進工業国の中で唯一、感染率が増えている日本。2002年のエイズ患者・HIV感染者数(凝固因子製剤による患者・感染者は除く)は922人で、これまでの報告数の累計は7696人(2002年12月末現在)です。行政の過ちもありましたが、主な感染経路は性的接触です。コンドーム使用により防げる性感染症「クラミジア」の感染が、1990年代から急増していることが示すように、感染予防のためにコンドームを使用する危機感の欠如、性に対してオープンに語られる機会が少ない社会慣習のため、HIVが流行する素地を十分に持っていると言われています。

【ケース2】根強く存在する「HIV感染=同性愛」という先入観が問題を潜伏させる
カンボジアやタイでは、現在でも「HIV感染=同性愛」という先入観が根強く存在しています。そのため、HIV/エイズ患者への差別意識が強く、差別されるのを恐れ、検査を受ける人が少ないのが現状です。たとえ検査を受けても、陽性と診断された事実を隠して結婚したり、性交渉を続けるケースも多く、感染を拡大させる一因となっています。

【ケース3】注射の回し打ちによるHIV感染が増加
マレーシア、ミャンマー、ネパール、タイでは、注射による薬物使用者の半数以上がHIVに感染しているといわれ、薬物使用者の増加とともに、HIV感染が拡大しています。また、東アジアと中央アジアでは、注射の回し打ちによる感染が急増。20万人の感染者がいるロシアでは、公式に発表された感染者の90%が注射の回し打ちによるものと言われています。

【ケース4】貧しさのために対策が講じられない…、感染すると貧しい家計がさらに切迫……。
多くの貧しい国では、医療施設の整備、薬の配布、HIV/エイズ予防の教育などに費用を捻出することは難しい状況です。このような国で、貧しい国民が HIVに感染すると、お金がないために、発病を遅らせる抗HIV治療はもちろん、免疫機能が低下したためにかかる、肺炎や結核などの治療すら受けることができません。また、多くの人が、感染を周囲に知られて解雇や離婚されてしまったり、子どもは学校から登校を拒否されるなどの悲劇に見舞われています。そして、より一層、生活が困窮していくことになります。

多くの国民がエイズで働けなくなったり、死亡してしまうと、国全体もさらに、貧しくなります。このように、エイズによる悪循環は続いているのです。
もはや、開発途上国が各国で、HIV/エイズ防止の環境を整えることは困難であり、国際的な協力が必要です。

その他にも、女性の地位が低いために男性にコンドームの使用を要求できない、HIV/エイズに関する情報を得る機会がなく、また検査を受ける機会もないため、子どもにまで感染させてしまうなど、HIV/エイズを蔓延させる要素はいくつもあります。それぞれの社会に適した方法で、対策を講じる必要があるのです。

参考:ユニセフ、UNAIDS(国連エイズ合同計画)、WHO(世界保健機関)、国連食料農業機構(FAO)、厚労省エイズサーベイランス委員会、2002 本文中のHIV感染率(00%):2002年の14歳から49歳までのデータ


そもそもHIV/エイズって何?

HIV (Human Immuno-Deficiency Virus)
ヒト免疫不全ウィルス ヒトに感染し、病原体への抵抗力を働かないようにしてしまう病原体のことです。

エイズ (Acquired Immune Deficiency Syndrome)
後天性免疫不全症候群。 遺伝が原因でおこるのではなく、HIVに感染することで、病原体への抵抗力が十分に機能しなくなり、その結果引き起こされる、結核や肺炎などのさまざまな症状の総称です。

非常に致死率が高いものの、現在はさまざまな治療により、HIVに感染していてもエイズの発症を抑えることができるようになりつつあります。近年では、薬品会社が症状を和らげる薬品を途上国に無償提供する動きも。しかし、未だ多くの貧しい人々にとって、薬品の恩恵を受けることは困難です。

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