特集

2003.11.30 Special Issue No.3

アフリカ・アジアで深刻な社会問題 HIV/エイズの現在 2

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INDEX

政府、宗教、そして若者自身の取り組みを紹介

現在、国連開発計画の掲げる「2015年までにHIV/エイズの蔓延を阻止し、その後減少させる」という目標を軸に、各国政府、国際機関、NGOなどによって、HIV/エイズ蔓延防止への取り組みが進められています。

バングラデシュ イスラム教の指導者が活躍

バングラデシュは、人口1億3000万人のうち1万3000人とHIV感染率はまだ低く、危機感も薄いのが現状です。しかし、性感染症が蔓延している、婚前・婚外の性交渉が高い比率で行われていること、性産業の利用率が高いにも関わらずコンドームがほとんど使われていないこと、検査抜きの輸血が行われていることなど、HIV感染が拡大する要素が数多く存在。早い段階での、本格的な取組みが必要とされています。

もっとも、1991年から国家政策としてHIV予防プログラムが行われており、NGOなどの民間・学校・マスメディア・軍などを巻き込んで、HIV/エイズの流行拡大を阻止しようという動きがあります。 さらに、国の宗教であるイスラム教の指導者による教育も行われています。宗教問題担当省が運営する「バングラデシュ・イスラム財団」の一組織、イマーム(宗教指導者)訓練アカデミーでは、1998年から約2万人の宗教指導者が、HIV/エイズの啓発と予防についてトレーニングを受けました。そして、礼拝や集会で多くの信者に伝えています。

コンドームの使用を訴えれば不道徳な行いを助長する?
しかし、宗教指導者は、イスラム教で固く禁じる不倫と同性愛、婚外交渉を戒めることに重点を置き、コンドームの使用については、積極的に勧めません。不道徳な行いを助長すると考えるからです。しかし、現実には複数の性的パートナーを持っている人が多く、コンドーム使用を呼びかけずにHIV蔓延を防止することは不可能です。しかも、HIV/エイズが背徳者の病気だという考え方を定着させ、HIV/エイズ差別を助長することにもつながってしまいます。

イスラム教に限らず、宗教的理由からコンドーム使用を勧めない宗教は多くあります。世界各地で、HIV/エイズ活動家は、宗教指導者の影響力を重要視しながらも、コンドーム拒否のジレンマに頭を悩ませているのです。

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エイズ撲滅キャンペーンのポスター(YEHガーナが使用)。初期のエイズ蔓延防止キャンペーンは、瀕死の患者の写真を使うなど人々の恐怖心を煽るものであったが、差別を生む結果となった。現在は、前向きなものがより効果的ということでコンドーム使用を訴えるものが使用されている。

※ガーナ準支部は2005年3月に閉鎖しました。経緯はこちらをご覧ください。(2006.2.1)


マラウィ 若者から若者へ

HIV/エイズの新規感染の半数は15~24歳の若者のため、ハンガー・フリー・ワールド(HFW)の青少年組織のユース・エンディング・ハンガー(YEH)も、HIV/エイズ蔓延防止に積極的に取り組んでいます。若者から若者へのメッセージは強い影響力を持って、受け入れられているようです。

10人に1人がHIVに感染していると言われるマラウィ。毎日、平均267人がHIVに感染し、139人がエイズ関連の疾病で死亡しています。マラウィでは、13歳くらいで性的活動をはじめる人も珍しくなく、若者への性教育は非常に重要です。早い時期からの性教育は、性の乱れにつながるという大人の反発もありますが、ほとんどの場合、若者の性行為を遅らせ、責任ある決定ができるようになります。

マラウィの教育・スポーツ・文化省とマラウィ教育研究所でも、ユニセフの支援を得て、性教育のカリキュラムを開発。HIV/エイズ蔓延防止のための国家戦略の一環として、学校で実施しています。

YEHマラウィは、若者から若者に、HIV/エイズの危険や予防について伝えるワークショップを開催しています。2002年7月から2003年6月までの1年間で、学校や青少年センターで開催した25回のワークショップには、1万人が参加。ビデオや劇、歌、ダンスなどを交えてわかりやすく工夫したため、小学生から大学生の参加者に大好評でした。YEHに参加したいという生徒も多く、訪問先では11のクラブが設立されました。妊娠による退学が減ったなどの効果があり、学校の教師や役員もこのワークショップを歓迎しています。さらに、ラジオや新聞、ポスターの掲示によっても、より多くの人にメッセージを伝えました。

HIV/エイズ患者の病棟でのボランティア活動や、HIV検査とカウンセリング(自分や周囲の人が感染した場合どうするか)なども行っています。
今後も、退学している若者を対象にするなど、同様のプロジェクトを実施していきます。

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YEHマラウィメンバー。同世代に伝えるため、自分たちもHIV/エイズについて勉強した

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HIVウィルスの感染経路を知る輪投げゲーム


若者の声
私は、これからは男の人とディスコで夜遊びすることをやめて、HIV/エイズの危険について友だちに注意します。YEHの活動に参加したいって強く思いました。村に行ってたくさんのエイズ孤児をサポートできたらいいです。
エディス・フィリさん(21歳)YEHのワークショップに参加して、家族は喜んでくれました。今、私はたくさんの男の子と付き合っている何人かの友だちに落胆しています。不幸なことにそのうちの一人は妊娠して学校を退学。彼女はとても後悔しています。
マーサ・ンダロワさん(21歳)

今まで多くの女子生徒が妊娠のせいで、学校を退学してきました。YEHは、誘惑を受けてもNoと言い、授業に励むように訴えてきました。私は弁護士になりたいので、これから勉強をがんばって、男の子たちと寝ないようにしようと思います。
プリスカ・カピトさん

僕は病院を訪問したときに、エイズ患者の方と触れ合いました。エイズは人を殺していきます。これからは安全なセックスを心がけようと思います。僕はプロジェクトの運営者の1人だったことをとても嬉しく思います。
ジョン・フェルナンドくん(中学4年生)

HIV/エイズはいまの我々の問題であり、
私たち一人ひとりがそれぞれの役割を担うことで必ず解決できる          
国連事務次長 ナフィス・サディック

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