特集

2004.09.01 Special Issue No.5

木と人々の暮らし ~森林の消滅と貧困の関係~

生活のために木を切る人たちがいます。森が消えて飢える人たちがいます。
砂漠化や温暖化の原因である森林消滅は、飢餓・貧困とつながっているようです。

2秒ごとにサッカー場の広さの森林が消えている

“熱帯雨林破壊”一時期メディアを騒がせたこの言葉も、最近ではあまり耳にしなくなりました。スーパーマーケットの牛乳パック回収、百貨店の簡易包装、「再生紙使用」の表示なども、日本ではよく見られるようになりました。なんだか問題は目の前から去りつつあり、私たちはすでに責任を果たしているような気にもなりますね。それでは、森林破壊は収まってきているのでしょうか?

答えは「いいえ」です。こうしている今も、地球上では2秒ごとにサッカー場と同じ広さの森林が消えているといいます。日本で「緑を大切に」「地球に優しく」と言われ始めた1990年から2000年までの10年間で、全世界で9400万ヘクタールもの森林が失われました。熱帯地域にある天然の森林は、年平均1420万ヘクタールが減少したと言われています。毎年、本州の3分の2にあたる面積が喪失しているのです。

森林の面積39億ヘクタール
意外と少ない!

熱帯雨林 47% アマゾン川流域、中央アフリカ、東南アジアなどのジャングル
亜寒帯 33% ロシア、カナダ、シベリアなどのタイガ
温帯林 11% 日本、ヨーロッパなどの常緑広葉樹、落葉広葉樹、針葉樹が混在した森
データ:国連食糧農業機構(FAO)


森林がなければ、人は生きられない

世界の森林面積は、約39億ヘクタールで、南極を除いた陸地面積の約3割。意外と少ないですね。しかし、その恩恵は計り知れません。森が失われることで、どのような影響があるのでしょうか。

食料・燃料が採れなくなる
木の実、キノコ、山菜などの食料が採れなくなります。海に流れ込む森からの養分が減ることで、魚介類にも影響があります。また、薪を燃料にしている地域では、日々の調理にも困ります。まさに“飢え”に直結する問題です。

二酸化炭素が大気に溜まると、気温がどんどん高くなる
森林は二酸化炭素を吸収して酸素を送り出しています。しかし、その“地球の肺”である森林が減少し、一方で産業活動によって二酸化炭素の排出は急激に増えています。二酸化炭素は、地球を覆い宇宙対してフタをしてしまうので、必要以上の赤外線や熱が大気中に留まってしまいます。これが、地球温暖化現象なのです。森林が減少することで、2100年には、地球の平均気温は今より最大で5.8℃上昇すると言われています(気象変動に関する政府間パネル[IPCC])。

洪水、土砂崩れ、砂漠化で土地を追われる
森林は雨水を土の中にしみこませて蓄える“緑のダム”の働きもあります。森林を伐採することによって、雨は地表を滑って流れ、洪水や土砂崩れを引き起こします。また、地下水が枯れ、砂漠化も拡大していきます。
このような被害で、貧困は深刻になり、暮らしていた土地を追われる環境難民が増えています。将来、水を求めるための戦争が各地で起こることも予想されています。

野生動物のすみかが奪われる
また、森林とともにたくさんの動植物も地球上から姿を消しています。生物種の50%~90%が生存するといわれる熱帯雨林では、森林の消失に伴い、一日あたり74種もの生物が絶滅しているとされています(E・O・ウィルソン『生命の多様性』1992年)。地球上の種の多様性が失われているのです。

世界の森林面積の変化(2000年までの10年間)

データ:農林統計協会「国説森林・林業白書 平成14年度」、FAO


どうして木を切らなければならないの?

このような被害があるにも関わらず、どうして人間は森林を伐採し続けるのでしょうか?

先進工業国では、大気汚染による立ち枯れや大規模火災による森林の減少も見られますが、経済発展期の伐採で減少させた反省から森づくりを進めている結果、全体として面積は増えています(ただし日本は減少)。現在、主に森林伐採が拡大しているのは開発途上国です。その大きな原因は商業的な伐採ですが、貧困と人口増加の影響も深刻です。

多くの開発途上国では人口が増加しています。人口の増加に伴い、木や紙の消費が増えています。また、増加した人口の食料を手に入れるために、森林をどんどん開墾せざる得ません。食料を輸入する余裕はなく、農地や農業資材も限られており、農業技術も低い国は、このように農地を広げるしか方法がないのが現状です。さらには、海外に売れる商品作物を増産することでも、その傾向は強まります。もちろん伐採した木材を輸出することで得られる外貨も魅力です。

参考:林野庁 『絵で見る森林・林業のすがた 行ってみよう! 世界の森へ』
フェアウッドキャンペーン、財団法人世界自然保護基金(WWF)


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