研修期間:2010年1月27日〜
今後の事業の参考のため、ベナンとブルキナファソ職員の交換訪問を実施しました。隣り合っていても風土も政治状況も異なる西アフリカの2つの国。それぞれの国での飢餓のない地域づくりは、各職員の目にどうに映ったのでしょうか。

ベナンの事業地を視察するベナン、ブルキナファソの両職員
HFWにとって、支部の職員同士がお互いの活動地を訪問し、経験を共有する機会をつくるのは初めてのことです。それぞれ2005年から本格的に活動をはじめ、ベナンは2006年に、ブルキナファソは2009年に支部に昇格、活動の幅を少しずつ広げてきました。私が2ヵ国の担当をはじめたのも2005年。事業計画の作成時から今までの成長過程を現地職員、住民と共に歩んできました。
今年度に入り、ベナンでは母子保健センターの建設に着手。今後、子どもの栄養改善事業に力を入れていきたいと考えています。ブルキナファソでは2005年から0〜5歳児とそのお母さんを対象とした栄養改善事業を実施し、政府とも協力して成果をあげています。その経験がベナンの今後の活動に役立つのではないでしょうか。一方ブルキナファソでは、事業実施における主体的な住民参加をどのように促すかが課題となっていました。ベナンでは、HFWが支援する識字教育の教員のほとんどは、かつて教室の生徒だった地元の住民。学校などの建設にも村総出で必要な水や砂を運んでくるなど、事業実施における住民の自主的な参画が定着しています。これはブルキナファソでの今後の事業展開にとって大きな学びになる、と考えました。「近いんだから訪問したい」という職員の要望は前々からありましたが、今こそ必要な時期! と、このタイミングで実施することにしました。
いよいよ明日、ブルキナファソ支部職員がベナンに到着です。
HFW本部 開発事業部ベナン・ブルキナファソ担当職員 冨田沓子

ブルキナファソでは見られない、露店のガソリン
飛行機を使えばたった1時間半で行き来できてしまうベナンとブルキナファソですが、今晩到着するブルキナファソ支部の職員はみな、ベナンに来るのは初めてです。
ベナンの空港に降り立ったブルキナファソ支部職員の第一声は「暑い!」私にとっては、ブルキナファソの照りつけるような太陽は痛いくらいで、ベナンよりよっぽど暑いと感じていたし、スタッフは普段から暑さには慣れているはずだと思っていたのに……。その感想には驚きました。確かに、日中こそ暑いものの夜間と早朝は気温がぐっと下がるブルキナファソに対して、湿度が高いベナンでは、ジメジメしていて夜も常に汗をかいている状態。慣れない彼らにとっては、暑く感じるのかもしれません。
空港から事務所に向かう道のり、「あの大きいビンに入っているものはなんだ?」と、ブルキナファソ支部職員の一人が聞きます。ベナンの道端で違法に売られているガソリンが入ったビンのことです。ベナンでは、お隣の石油輸出国ナイジェリアから石油が運びこまれ、道端で安価に売られています。一方で、ブルキナファソではガソリンの売買権は一業者に限られていることもあり、このような光景を見ることはありません。「ガソリンを道端で売ってるの!?」「値段がブルキナファソの半額だ!」と驚きいっぱい。日本人が初めてベナンに来るのと変わらない新鮮な彼らの驚きに、逆に私が驚かされます。まだ到着から1時間。これからの10日間の訪問中に、どんな違いと共通点を見つけられるのかとても楽しみです。
明朝には、HFWベナンの事業地ベト村を訪問します。
HFW本部 開発事業部ベナン・ブルキナファソ担当職員 冨田沓子

爪の中までしっかり洗う習慣が身についた園児たち

幼稚園の手洗い場を試すブルキナファソ職員
今日は、さっそくHFWベナンの事業地であるベト村を訪問してきました。村に到着して最初に感じたのは、住民がHFWの職員を歓迎しているということ。村に到着するなり、道行く人たちが笑顔で手を振って迎えてくれます。村長の家まで歩いていく間にも、学校に行く途中の中学生や仕事中の女性が、ファトゥマトゥさん(HFWベナン事務局長)や、沓子さん(本部担当職員)の名前を呼んで話しかけてくるのです。その様子からはHFWベナンと住民の間に、「与えている人」と「与えられている人」という関係ではない、人間的で親密な関係を感じ取ることができ、とても印象的でした。
この日一番はじめに視察したのは、幼稚園。子どもたちがのびのびと学習している姿はとてもかわいらしく、「Bonjour(ボンジュール)」と元気に迎えてくれました。園長先生から園での活動や、先生たちが受けた研修の話しを聞いた中で特に印象に残ったのは、子どもたちがとても清潔だったということ。HFWブルキナファソでは最近、学校給食の支援をしている小学校に手洗い場を新しく設置しましたが、多くの子どもたちは正しい手の洗い方を知りません。先生が目を離すと、適当に水で手をぬらすだけの子どももいます。一方でベト村幼稚園の子どもたちは、指の間や爪の中まで丁寧に洗っていて、幼いながらもすでに習慣として身についている様子でした。園長先生の話しによると、最初は汚れた洋服で幼稚園に通ってくる子や、手を洗った後に床を触ってしまう子がたくさんいたそうです。でも毎日指導を繰り返すことによって、自ら率先して手を洗うようになったとか。根気よく子どもたちに指導していくことが大切だということを学びました。
HFWブルキナファソ支部 会計担当職員 ジョエル・ヤメオゴ

改装中の識字教室で、啓発活動。住民同士で婚姻制度や女性の相続の権利について話し合う

啓発活動に参加した住民の前で自己紹介するブルキナファソ職員。右からジョエル・ウエドラオゴ、ジョエル・ヤメオゴ、モリース・ソメ
HFWベナンには、HFWブルキナファソと同様に3名の職員がいます。事務局長、フィールド担当、会計担当と構成も同じです。異なるのは、ベナンにはHFWと住民の間に立って両者をつなぐ有志の若者がいるということ。彼らはHFWの活動に理解を示し、職員の代わりに住民との会合の調整を行うなど連絡役をも担っているのです。HFWの考えを共有し代弁できる人が住民の中にいるのは、事業を効率的に実施していく上でも、事業の成果を地域に定着させていくためにも、とても大切だと気づかされました。
今日の午後は権利啓発事業を視察し、ここでも住民の参加の姿勢に感銘を受けました。ベト村では週に一度権利啓発活動を行っているそうで、この日は、30名ほどの住民が集まっていました。夫婦が結婚するときに婚姻届を出さなくてはいけないこと、婚姻届を出していれば女性は夫が亡くなっても相続権を得ることができることなどを話し合っていました。この会合の進行役を務めていたのは、地域の若者たち。中には女性の姿も見られました。私は以前、ブルキナファソ厚生省の役人として、農村地域で同じような権利普及のための研修の進行役を4年間務めたことがあります。私は大学で社会学を専攻していたので、人権などに関する知識を持っていました。しかし、ベナン職員の説明によると、進行役を務めている住民はつい最近まで読み書きができなかったそう。それなのに人前で堂々と話し、次々に飛び交う質問に的確に答え、みなが発言しやすいよう会議を運営している姿には驚かされました。
権利だけでなく、保健や公衆衛生の分野でも、政府の役人やNGOの職員が農村に出向いて啓発を行うことはよくあります。その場合住民に集まってもらうために、ご飯を出したり、お金を支払ったりすることもめずらしくはありません。しかしベト村では、住民が知識を求めて自発的に集まってくるので研修への姿勢もより真剣です。さらに、役人が外からやってきて話すよりも、同じ地域で同じ課題を抱えている人同士が話し合うほうがずっと効果的ですし、毎週話し合いを繰り返すことによって、1回の研修だけでは得られない成果が得られると感じました。
HFWブルキナファソ支部 事務局長 モリース・ソメ

識字教室で学ぶ生徒に話を聞く

ベナン支部フィールド担当のソランジェ(左)とブルキナファソ支部フィールド担当のジョエル・ウエドラオゴ(右)
HFWベナンの事業地ベト村を訪問して一番印象に残ったのが、青少年・成人を対象とした識字教育です。ブルキナファソの事業地では、事業の開始前に行った農村調査で、地域の識字率がとても低いことが判明。そこで当初のマスタープラン(※)には、識字教育が事業の1つとして挙げられていました。しかしHFWが事業を開始して間もなく、ブルキナファソ政府が進める識字教育が地域内で始まったため、HFWとして独自の事業を実施することはしませんでした。けれど政府が実施する識字教育は1年に1度3〜4ヵ月間行われる短期集中プログラムで、学校に通ったことのない住民の中には授業についていけない人もいます。また識字教育への関心を高める努力がされていないため、実際に授業に参加する住民は少数です。このようにブルキナファソでは、識字教育がなかなか広まっていませんでした。
一方HFWベナンが実施している識字教育事業では、地域のニーズに基づいた独自のカリキュラムをつくっています。読み書き計算の他、収益活動を行うための簡単な帳簿のつけ方、予算の作り方など実生活に役立つ指導がされています。また学校に通った経験のない住民がじっくり学べるように、1年間という授業期間が設けられています。このような工夫が、ベナンとブルキナファソの識字教育の成果に大きな違いをもたらしていることを感じました。
さらに感銘を受けたのは、生徒と先生の意欲の強さです。誰にとっても、大人になってから自分のできないことや弱みを認め、新しいことを学ぼうと決心するのは容易ではありません。それでも自分の、そして地域の将来のために、今までペンを持ったこともなかった生徒たちが勉強しようとする強い意欲は、とてもすばらしいと思いました。先生たちに関して言えば、彼らの能力は高く、街に出ればいくらでも仕事があるはずです。にもかかわらず、村で自分の知識を還元しようとする姿は、まさに「知識」が地域の発展を支えるということを、よく理解している証拠だと思いました。教育はすべての発展の土台となるということを、ベト村の識字教育を視察し改めて感じました。
(※)マスタープランとは住民と共に創る3〜5ヵ年の開発事業計画のこと
HFWブルキナファソ支部 事業担当職員 ジョエル・ウエドラオゴ

かつて奴隷船が出航した港の記念碑「帰られざる扉」
今日はベナン滞在の最終日です。ブルキナファソへの出発準備で、ベナン職員と沓子さんは忙しい様子。その間私たちブルキナファソ職員は、車でウィダを訪問してきました。ウィダはかつて奴隷船が出航した港街で、ベナンに来たら一度は訪ねてみたいと思っていた場所です。ウィダへ向かう道すがら、奴隷たちが最後に歩いたという、港へ続く道を通りました。車で走っているだけなのに胸が痛くなり、身体が重くなったように感じました。博物館では、奴隷をつなぐために使われていた鉄製の足かせの模型などを目にし、アフリカの暗い歴史の一部に触れる機会となりました。
帰り道のこと、車の運転手に「僕が経営している床屋があるから、髪を切らないか?」と誘われ、ベナン・スタイルにしてから帰国するのも悪くないと、床屋に寄ることにしました。ブルキナファソ職員3名とも、ばっちりと新しい髪型になり、明日はいよいよ帰途につきます。
HFWブルキナファソ支部 事務局長 モリース・ソメ
ベナンとブルキナファソは隣同士の国とはいえ、文化も政情も自然環境も大きく違います。2つの国を担当し、両方の事業を長い間見ていると、「このアイディアをこちらの国でも使えばいいのに……」と思うことも何度もありました。でも、どんなにうまく伝えようとしても、2つの国のスタッフにとっては、比べられているような気持ちになってしまったり、「そう言われても、違うんだから」という考えに陥ってしまうことを避けるのは簡単なことではありませんでした。しかし、今回の交換訪問を通じて、与えられた状況の違い・共通点を自ら見出したことで、お互いの活動から学び合う土台ができつつあるように感じています。
さて、これからブルキナファソに移動です!
HFW本部 開発事業部ベナン・ブルキナファソ担当職員 冨田沓子

ベナン支部とブルキナファソ支部の職員が、お互いの活動を知り、経験を共有して今後の事業展開の参考にしようと、2010年1月27日〜交換訪問を実施しました。