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2017.01.27 ニュース&トピックス

食料問題の国際的な政策を決定づける世界食料安全保障委員会(CFS)。 栄養、企業参加、農業における課題と懸念…… 日本の市民社会の代表の一人として参加した HFW 職員が、その模様を報告します

本会議場。議長は写真左の壇上に、市民社会の席は写真奥と手前のスクリーンの下にある

第 43 回世界食料安全保障委員会(CFS43)が 2016 年 10 月17日~21日にローマの FAO 本部で開催されました(CFS についての詳細下記)。今回の CFS には、国際機関、政府関係者、NGO など市民社会から約 1400 名が参加。HFW もオブザーバー参加し、食料と栄養をめぐる最新情報を収集。その内容について報告します。

(アドボカシー担当職員:米良)


SDGs 採択一年の CFS。 オープニングでは、SDGs の目標達成に向けた決意が

潘 基文(パン・ギムン)国連事務総長の開会の辞で始まった今回のCFSは、持続可能な開発目標(SDGs)が採択されて一年後の開催となりました。栄養不良をはじめ、加速しつつある異常気象、食や農に関連する巨大企業の合併など、分野横断的に取り組まないと太刀打ちできない非常事態であることを改めて感じさせるものでした。「もし誰一人取り残さないのであれば、関連のあるすべての人(小規模農家や市民社会)の声を聞く必要がある」と国際農業開発 基金(IFAD)総長がオープニングセッションで述べたのが印象的でした。 本会合では食料の適切性、SDGsのなかでの食料安全保障について議論され、サイドイベントでは、SDGs達成のための市民社会の役割や、食料の適切性に寄与する調査、食料安全保障と企業のかかわり方などのテーマが取り上げられました。

肥満を社会的課題として取り上げ議論。 メキシコのソーダ税の事例発表も

肥満といえばエネルギーの過剰摂取であり豊かな食生活の代償のように言われてきましたが、現在、栄養が足りないことで太ってしまう肥満が世界で注目されています。貧しいために、あるいは栄養についての知識がないために、高カロリーで栄養の偏った安い食材を多く摂取した結果、開発途上国でも肥満になる人々が増えています。CFS ではすべての人々がただ単に食料を得るだけでなく、「適切な」食料を「十分に」得る権利を重んじ、適切性を重視するために、「栄養のための行動の 10 年」に基づき何をしなくてはいけないか、ということが議論されました。健康・保健分野を対象に活動する世界保健機関(WHO)も、食料摂取が健康に与える影響を重視。本格的にベースラインとなるデータ収集をより細かく把握し、それをもとに対策を練っていくためには政府、国際機関、市民社会、企業、学術機関などの多様な立場で取り組む必要があるという認識が進んでいます。 本会議参加者以外でも自由に参加できるサイドイベントでは、社会のしくみを変えることで人々の行動を変えたメキシコのソーダ税の事例が報告されました。肥満が社会的な課題となっていたメキシコでは、2014 年から砂糖を含む飲料に課税。その結果、人々はより健康的な飲料を選択するようになりました。これは、学術機関、NGO、マスコミが協働し、調査で得た詳細な情報をもとにメディアキャンペーンを実施し、多くの声に後押しされて政策・法律が変わったものです。世界各国でメキシコに続きこの課税を取り入れる自治体が増えており、多様な立場の人々の連携が人々にとって良い成果を生んだ成功事例といえます。

小規模農家逼迫への懸念は宙に浮いたまま......。NGOの提案は却下され、そして、企業の声は例年以上に大きくなったと実感

さまざまな立場の人々との連携において、企業との連携も大きなポイントであり、栄養改善の分野でも多数の企業が参入しています。多くの場合はプラスの側面が強調して語られますが、サイドイベント「公平な調査の必要性」では、企業から資金が出ている調査や研究の成果が、企業にとってマイナスのものになりにくいことが指摘されていました。企業活動の正当性の裏づけとして発表されることが多く、実際に新たに課題を生み出していることは公表されていません。 たとえば、農業の生産性向上のために大規模農園などの新しい事業が始まると、周辺の農民から土地収奪が起こっているというようなことは表に出てきません。現実に、バイエルとモンサント社の合併やダウケミカルとデュポン社の合併により、今後世界では、流通する種子のうち60%が、そして殺虫剤の 70%が、たった 3 社によってコントロールされてしまう可能性が出て来ています。NGO の間では、これが実行されると小規模の農家の今後はどうなるのか?とかなり危機感があります。農業はさらに”大型”にシフトし、小規模の農家は作りたい作物を自由に作ることができず、農業の多様性や自主性を失い、今以上に厳しい環境に追いやられる可能性があるからです。また、種子と殺虫剤がこの動きになれば、機械のメーカーの間でも合併の気運が高まってしまいます。そこで、NGO 側が議長に本会議での議論を提案したのですが、関係各国の反対でサイドイベントのみでの討論となり、周知の時間も限られていたことから、結局は NGO 関係者が参加者のほとんどを占める会合となってしまいました。 CFSでは、NGOなど市民社会が参加できる枠組みがありますが、同時に企業の参加も確保されており、今回のCFSでは企業の声が例年以上に、市民社会の声よりも大きくなってきていると感じた人が少なくないようでした。

農業をめぐる課題が報告される。 市民社会は小規模農家の権利の実現が課題を解決すると主張

今後の食料の安定供給に何が必要かという議論の際に、「農業の工業化」と「若者の就農促進」は必ず挙げられるテーマです。今回もいくつかのセッションで、この点についての発表がありました。「農業の工業化」については、機械化、IT 化という側面がクローズアップされますが、 小規模農家がほとんどの地域で果たして大型の機械が必要なのでしょうか。多くの機械は年間を通じて限られた日数しか実際には稼働していないにもかかわらず、購入や維持にコストがかかります。したがって初期投資やランニングコストがあまり負担にならない機械や代用が利く機材の代案を考える必要があります。 また、「若者の就農促進」には、すでにいくつかのアフリカ各国で教育に農業関連情報を盛り込んでいることが報告されています。情報は力となります。HFWでも若者を対象に農業研修を行うなどサポートをしています。同時に、若者が土地を持ち、金融や市場へアクセスできるようになる環境を整えていくことが重要になっています。今後は若者を巻き込んだアドボカシーや情報提供などがさらに重要になると思われます。CFSの本会合で、NGOら市民社会を代表してスピーチを行ったジンバブエのエリザベス・ムポ フさんは、「過酷な状況で食料を生産する労働者の権利を支援することによって、地球が抱える気候変動の課題を解決できる」と主張。生態系を破壊する取り組みや政策ではなく、小規模農家の土地や森、水、種子に対する権利を大切にすることが、安定した食料生産と同時に地球環境の保護につながる、と参加者に訴えました。エリザベスさんはジンバブエで小規模オーガニック農民フォーラムの代表を務めており、土壌や気候の変化が農作物や農家に与える影響を日々実感しているからこそのコメントでした。

本会議場の両サイドのスクリーンに写された、開会の挨拶をする国連事務総長

会場ロビーには、膨大な資料が展示された

解説【CFS】

CFS とは、「食料栄養安全保障に関する、政府間及び多数の利害関係者を最も包括的に含むプラットホーム」(FAO)です。1974 年に設置され、2009 年に行われた大規模な改組の結果、 あらゆる立場の人々を包括的に含められるようになりました。 参加するのは、FAO などの国連関係機関の加盟国だけでなく、市民社会組織(CSO)や NGO、国際農業研究機関、国際・地域経済組織、民間セクター、慈善活動を行う団体です。CSO や NGO が市民社会メカニズム (CSM)という枠組みに参加できること、そしてこの CSM が他の参加者と対等の発言力を持っ ているということが、CFS の大きな特徴のひとつ。開発途上国の貧しい農家や先住民など、食料問題の当事者である多様な人々が、食料問題に関する国際的な政策を決定づける場で自分たちの言葉で語り、政策作りに関与できるというのは非常に大きな意義があります。

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