活動レポート ニュース&トピックス

2017.11.01 ニュース&トピックス

世界食料安全保障委員会(CFS 44)にオブザーバー参加。飢餓人口の増加に対する危機感のなかで解決に向けた議論が交わされました

本会議場。壇上の様子は両サイドに映し出される

第44回世界食料安全保障委員会(CFS 44)が、ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部で10月9日~13日に開催されました。今回の CFS には、国際機関、政府関係者、NGO など市民社会から1000名を超える参加がありました。HFWも昨年に引き続きオブザーバー参加し、効果的なアドボカシーを行うために、食料をめぐる世界の課題について情報収集しました。その内容について報告します。
(アドボカシー担当職員:米良)

増えてしまった飢餓人口
世界はかなりのペースで人口増加があったものの、開発途上国における栄養不足人口の割合は、1990-92年の23.3%から2014-16年の12.9%まで、およそ半減しました。しかし、今この減少傾向にブレーキが今かかり、増加に転じました。国連機関が9月に出した報告書は、世界の飢餓人口が8億1500万人に上ると伝えています。このままではSDGsで掲げている「飢餓をゼロに」どころではありません。そんな危機感を今回のCFSの会場では随所に感じました。開会式でもこの危機的状況をさまざまな人が各々の立場で話されていましたが、最も印象的だったのが世界食糧計画(WFP)の事務局長デイビッド・ビーズリー氏の言葉です。「(今世界がこのような状況になっているのは)you don’t blame anyone but ourselves(自分たち自身以外の誰のせいにもできない)。我々はもっと効果的に仕事をしなくてはいけない」と最初に言い切ったことです。低身長、低体重、肥満などの課題に対する取り組みは昨年のCFSで報告されていましたが、これら取り組みに反して飢餓人口が増え続ける主な原因は「紛争だ」とCFSは分析しています。

紛争と飢餓、自然災害を超えるために
国連機関が発行した「世界の食料安全保障と栄養の現状2017」(The State of Security and Nutrition in the World)で報告されている国別の統計では、慢性的に栄養不良の人たちのほとんどが紛争国にいることが見てとれます。すでに今年に入ってからも南スーダンで飢饉が宣言され、ナイジェリア北部、ソマリアやイエメンでも飢饉の兆候に警鐘が鳴らされています。FAOでは現在19の国が危機的状況にある、と分析していますが、いずれの国も紛争や暴力がはびこっている国です。
そして、これらの既に脆弱な立場にいる人びとを、干ばつなどの自然現象がさらに脅かしています。特に報告書でも取り上げられている南スーダンでは、紛争に加え干ばつと洪水に繰り返し襲われ、イエメンでは洪水やサイクロンの影響が大きいとみられています。
解決策として食料システムへの投資ということが言われていますが、それを正しく実施するには2007-2008年に起きた食料危機をきちんと理解する必要があります。その際、農業の工業化、商品化そして多国籍企業の関わりに目を向けることがポイントです。
農業の商品化について、2007年の世界金融危機で富と権力が一部に集中していることが明るみに出たにも関わらず、現在でも同じ経済モデルが続いていることが問題ではないか、とCFSのサイドイベントでも指摘されていました。本来「食料への権利」(Right To Food) を軸に「人」を優先して考えなくてはいけないところ、2007年以降はさらに農業の商業化が進み、企業ファーストの傾向がさらに強まっていることが、食料の安全保障に危機感を与えています。企業にとっての利便性や効率を追求することが農業従事者や環境にとって多様性の損失につながっている懸念があるのです。また、2001年のFAOの総会において、「食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約」(ITPGR)※が採択されているにも関わらず、近年の大規模な企業の吸収・合併の動きはそれに反するものもあるのではないか、と疑問に思わざるをえません。(企業の大規模な企業の吸収・合併については昨年のレポートを参照)

公式の場で、市民社会の指摘をもとに、企業、国際機関などが議論
このような状況に対して、今回、公式サイドイベント”AGRIBUSINESS MEGA-MERGERS’ THREAT TO WORLD FOOD SECURITY – Updates, Scenarios and How the CFS can Respond” (仮訳 アグリビジネスのメガマージャー 世界食料保障への脅威 - 近況、シナリオ、そしてCFSはどのように対応できるか)が、市民社会によって開催されました。かなり挑発的なタイトルですが、朝一番の早い時間に開催されたのにも関わらず、大勢が参加しました。これは昨年、急遽市民社会側から話し合う必要性があると提案したものの、議題に挙げるためのプロセスが取られていない、という理由で却下されたものでした。しかし、今回は公式サイドイベントとして取り上げられただけでなく、ドイツの外務省の方やCFSの議長もパネリストとして登壇していました。このセッションの最初に、CFS議長のAmira Gornassが「Let us exit from comfort zone (自分が所属する立場を離れて議論をしましょう)」と伝えていました。会場には政府、企業の人達も大勢参加し、その言葉どおり、主催の市民社会側から投げかけられた問いに議論が活発に行われました。
多くの市民社会が、1、作物の多様性に何が起こっているのか? 2、作物の種苗や殺虫剤等は誰がコントロールしているのか? 3、現在の水の使用について我々は疑問視しないで良いのか? 4、誰が土を守るのか? 5、誰が食料を廃棄しているのか? など疑問を投げかけ、CFSとしての対応を求めました。各国からは、解決に向けた取り組みとして、食料廃棄の削減やオーガニックの推進、工夫ある近郊農業などの事例が紹介されていました。また、この議論の行方を握るのはインド、ブラジル、中国、メキシコのような新興国であり大きな農業国であるということも、参加者から指摘されていました。
CFSは市民社会にもほかの代表団と同じく発言の機会が与えられています。市民社会だけの事前会合にも通訳もつけてきちんと議論ができるような環境が提供されおり、またこのような市民社会主催のイベントにも多様な方が参加して議論を盛り上げるところがこのCFSのよさだと思います。

若者と農業の新しいチャレンジ
今回のサイドイベントでもう一つ集客があったセッションは、若者と農業というテーマでした。昨年もこのテーマでセッションが設けられていましたが、昨年はどちらかというと「大人」の視点で、どのように若者を農業や1次産業に巻き込んでいくか、ということがポイントでした。今年は、若者らが食料の安全保障と栄養改善の担い手として何ができるか、そしてSDGs達成の観点から若者の役割は何かということを、「若者自身」がセッションの主役として話すものがいくつかありました。そこには親から受け継いだ土地やスキルを、自分たちの世代のニーズに合わせ変えていく、ちょっとした「改革」ともいえることが国や地域を問わず起こっていると感じました。なかでも印象的だったのは、南アフリカで農場を経営している若い女性のコメントです。「若者の農業従事者を増やさないといけない、また増やすにはどうする?という類の話をよく聞くが、目の前にいる私たちは何なのですか? 我々は透明人間ではない。現実の状況をきちんと分析して、失敗も経験しながら経営を学びつつ事業を拡大している若者はたくさんいる」と力強く語っていました。彼女の農園では、政府の助成金や制度を活用し、多くの人を雇用して地域の雇用創出に貢献するとともに、農地に見合う機械を導入して生産性を上げています。また、それ以外にも、従来の農業経営にとらわれず、マーケティングに長けている人だったり、ITが得意な若者だったり、いろんな人が農業経営のチームに加わる機会があるということを、今回のセッションで聞くことができました。
若者たちは、農業、漁業など代々伝わってきた産業や土地に誇りをもち、そこに大きなチャンスもあると感じています。ハンガー・フリー・ワールドの事業地にも農業従事者または従事者予備軍の若者は大勢います。彼らの発想を生かして新しいモデルが構築でき、さらにそれが地域の食料及び栄養事情の改善につながるようなことができる可能性を、改めて感じました。

※ITPGR
食料や農業のための植物の多様性の保全と持続可能な利用、そして、その利用から生じる利益の公正な配分を行うことを定めており、持続的農業と食料安全保障を図ることを目的に定められた。

 

市民社会にも正式な発言権がある

会場ロビーにはさまざまな資料が配布されている

電光掲示板で今年のテーマに関連した動画が表示された

ニュース&トピックスの最新レポート