「世界食料デー」に向けて、栄養士さんと考えよう。 複雑化する栄養の格差とは? : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

活動レポート ニュース&トピックス

2012.10.01 ニュース&トピックス

「世界食料デー」に向けて、栄養士さんと考えよう。 複雑化する栄養の格差とは?

日時 8月26日(日)14:00~16:30/ 会場 JICA横浜/ 参加者 51名/ 共催 セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)、FAO日本事務所、HFW

セミナーレポート 「栄養の視点から考える格差問題-栄養士にできること-」

日本では生活習慣病が深刻になる一方で、生活に困窮して栄養不足になる人も増えています。世界に目を向けてみると、十分な食べ物があるのに、飢餓に苦しむ人の数は減っていません。この現状について、「栄養」の視点から4名のゲストにお話ししてもらい、参加者と話し合うセミナーを開催しました。ゲストのお話から、概要をお届けします。

 

「肥満と飢餓が、どの国でも同時に起きています」

国立保健医療科学院生涯健康研究部主任研究官 石川みどり先生

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「かつては、<先進国では肥満、開発途上国では飢餓が起こっている>という図式でしたが、今や、どの国でも、肥満と飢餓の両方が起きています。そして、原因は複雑です。たとえば日本で栄養不足になる原因は、経済的な問題のほか、一人暮らしの高齢者に多い、買い物を頼める人がいないという社会的な問題などが絡み合っています。開発途上国でも、安くて腹もちのよい栄養が偏った食事が原因で、都市部の貧困層の間で生活習慣病が増えています。このような構図を踏まえると、行政機関や施設などさまざまなレベルにいる栄養士が各地で連携し、その地域の栄養問題の解決を図っていく必要があるのではないでしょうか」

 

「災害時に必要な栄養は変化します」

セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ) 広報室長 井出留美さん

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「2HJでは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を、施設や生活困窮者に提供しています。2011年は1600トンの食品を扱っています。お金に換算すると9億円以上に。2012年は半年で1400トンを越えましたが、これは日本の食品ロスのおよそ1万分の一でしかありません。

東日本大震災後は、被災地へも食品を届けました。災害時、被災者に必要な栄養は段階的に変化します。被災直後はとにかく炭水化物などのエネルギー源が必要ですが、震災後1週間たつと、栄養バランスを考える必要があります。現在も原発事故のため長期避難している双葉町の方々の食事は、揚げ物が多いお弁当中心。そこで2HJは、毎月200食の、新鮮な野菜・果物、汁物、麺類などを炊き出ししています 」

 

「貴重なタンパク源となるべき豆が、貧乏人の食べ物といわれています」

HFWバングラデシュ支部担当職員 西岡はるな

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「バングラデシュで栄養改善事業※を行っています。貧しい家庭の多くは、一日一食、野菜カレーのみ。栄養の知識がほとんどなく、貴重なタンパク源であるはずの豆も、貧乏人の食べ物といって、食べたがらない人も。しかも、おかずは優先的に男性や年長者にまわされ、お嫁さん、特に妊婦さんは栄養不足になりがちです。そこでHFWは、まず深刻な栄養不足のお母さんと赤ちゃんに栄養価の高い食事を提供しています。同時に、食材の栄養損失の少ない調理法や栄養の知識を教えるワークショップを行いつつ、養鶏を支援して卵や鶏肉を食べられるようにしています。食生活を急に変えることは難しいので、根気よく取り組んでいくことが重要です」
※この事業は、味の素「食と栄養」国際協力支援プログラムの助成を受けています。

 

「知識の不足からも、栄養状態が悪化することがあります」

伊勢原市立竹園小学校 学校栄養職員(青年海外協力隊OG)

吉永加那さん

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「以前はコロンビアで、青年海外協力隊員として、都市部の貧困層の子どもたちの栄養状態を改善するNGOで活動していました。現地の栄養士やソーシャルワーカーと一緒に家庭訪問をする中で驚いたのは、一見栄養状態が良さそうな体格のいい子がいたこと。でも実際は、貧困や知識不足から、炭水化物ばかりに偏った食生活を送っていて、栄養状態が悪かったのです。

この経験を生かし、現在勤めている神奈川の小学校では、和食の良さや朝食の大切さを教えています。ほとんどの子どもは朝食をとっていますが、栄養バランスには課題があります。知識が知識だけで終わらないよう、生活に取り入れてもらうことを目標に、食育に取り組んでいます」


セミナーを終えて

当日は、定員30名を上回る51名が参加。栄養士さんや栄養士をめざす学生さんなど、国内の食の現場に立つみなさんが集まりました。終了後は、「栄養の視点から国際協力を考えている人が周りにいないので、同じ思いを持っている人とお話ができ、よかった」「栄養士としてできることを考えるきっかけになった」との声も。具体的な行動のヒントを提供できました。

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    食料デー素材

世界の飢餓と日本の食生活について紹介できる素材です。HFW内にある「世界食料デー」月間の事務局で制作しました。セミナー当日は、「ぜひ給食だよりに載せたい」との声も。多くの人が活用中です。
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◆「世界食料デー」月間 特設サイト www.worldfoodday-japan.net/