適正化施策の進捗状況のご報告(2020年4月) : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

適正化施策の進捗状況のご報告(2020年4月)

 

昨年末から適正化施策に取り組んでおりますが、新型コロナウイルス感染症の世界での拡大を受け、本部・支部での活動が大幅に制約される状況になっています。下記に支部国の状況と適正化施策の進捗についてご報告いたします。

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【新型コロナウイルス感染拡大の活動国における対策と活動への影響】

(情報は4月7日現在のもので、感染拡大の状況によって著しく変わることがあります)

バングラデシュ:政府機関の業務停止、自宅待機要請、外出者への取り締まり、入国制限強化など。

●職員は在宅勤務。さまざまな活動における定例会、家庭訪問、研修などの活動を延期。SNSを使ったキャンペーンなどは継続。ハンガー・フリー・ワールド(HFW)の栄養改善事業の推進役である住民たちが、政府が行う貧困層への救済制度に地域の人々をつなげる取り組みを開始。

ブルキナファソ:夜間外出及び大規模なデモや集合の禁止、交通制限など。

●職員は、一部在宅勤務。51名以上が集まる会合、集会を自粛。

ベナン:外出自粛、渡航規制など。

●事業対象者を含む関係者に感染防止対策のレクチャーを実施。活動地域の住民である事業推進役が、それぞれの地域の活動について継続か一定期間の休止かを検討中。活動継続の場合には、政府決定が守られているかを当団体が確認し、必要があれば自治体の承認を得る。

ウガンダ:入出国禁止、交通やマーケットの制限、学校休校など。3月21日、日本人女性がコロナと呼ばれ殴られる事件が発生(世界的にも、新型コロナウイルス感染がアジアから広がったとして、アジア系の人が暴力を振るわれたりするケースが相次いでおり、外務省が注意喚起)。

●「本部の人材の長期派遣」により契約した日本人を含め、職員は在宅勤務。

日本:(国の対策省略)

●3月から職員の一部在宅勤務、活動説明会など一部の活動の延期や休止、事務所でのボランティアの活動の休止。「書損じハガキ回収キャンペーン」は、ボランティア休止による仕分けとカウント作業の遅れ、及び社会的な経済活動の縮小による集まった切手、貴金属、商品券などの業者の買取価格下降の影響。4月13日からは事務所を閉所し、職員は在宅勤務、パートタイマーは休業予定。


【16の適正化施策への取り組みの詳細】

A.不正発見に非常に有効で、抑止効果も高いと考えている適正化施策

(1)領収書と見積書の信憑性の確認強化、(2)取引先の確認強化、(3)内部監査体制の構築、本部の人材の長期派遣、(4)外部会計監査人の活用

●内部会計監査規程とマニュアルの目的に不正発見を加え、領収証と見積書の発行業者の住所を訪問することを追記しました。なお、発行業者の住所訪問は2019年8月までに全4支部において第1回目を実施しています。

●本部の人材の長期派遣について人選を進め、ウガンダ大使館での勤務経験があり、ウガンダ事情にも精通している方と契約し、支部への派遣を開始しました(※ただし、現在は在宅勤務)。

●内部監査での指摘事項のモニタリングとフォローアップをより適切に実施するために、英語圏の公認会計士と契約を結び、支部の監査の機会に本部の内部監査担当が実務研修を受ける計画を進めていました。しかし、公認会計士が交通事故にあい中止となり、改めて内部会計担当の能力強化策を検討しています。


B.抑止効果が高いと考えている適正化施策

(5)実効性のある内部通報制度の運用(6)通報前にも相談できる仕組みづくり(7)資金を大切に使う組織風土の強化

●ブルキナファソ、ベナン、ウガンダにおいて日本の寄付者およびボランティアのみなさまからのメッセージ動画を支部職員に見てもらい、支援金の重みを伝える機会を持ちました。支部職員からは、「寄付者からの貢献に心を打たれた。日本から遠く離れた知らない国のために寄付できることはすごいこと。われわれに失敗は許されない。事業で成果を出すことが日本の貢献に応えること」という感想を得ています。今後も定期的に支援金の重みを伝える機会を設けていきます。

●「不正行為防止規程」に内部通報者の保護強化のために、承諾なしに通報内容は第三者には開示されないことを追加しました。

●既存の内部通報制度に実効性を持たせる改善をしました。内部通報窓口を管理部門常務理事とし、オンラインフォームを使い匿名で通報できるようにしました。周知と理解を進めるためポスターと携帯用カードも作成しました。本部とバングラデシュ支部で下記のコンプライアンス教育研修の機会に、職員に新制度を紹介しました。制度が作りっぱなしとならないよう、一年運営し、評価して改善する計画です。コンプライアンス意識を育てるよう事例紹介をするニュースの年数回の発行も計画しています。また、不正流用について理解を深め、適正化施策の取り組みへの理解を深めるための職員対象のワークショップを開始しました。合わせて「倫理規程」や「不正行為防止規程」などが組織内部に浸透するよう、コンプライアンス教育教材を使った研修も開始しました。教材は、すでにある規程やガイドラインなどを活用して作成しました。本部では2月から4月にかけて研修を実施。バングラデシュでは3月上旬に常務理事が訪問し、本部事務局長はオンラインで参加する形で実施しました。
他の3支部も常務理事が訪問し3月に内部通報制度の紹介とコンプライアンス教育研修を実施する予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で延期となりました。

バングラデシュでのワークショップ

バングラデシュでのワークショップ

事務所にポスターを掲示

支部事務所にポスターを掲示

ポスターとカード

事務所内で掲示するポスターと携帯できるカード


C.Aの適正化施策の効率的な運用に寄与する施策

(8)予実管理の向上

●予実管理の向上につながるよう、公認会計士と業務契約し、資金繰り及び事業計画策定、月次損益書表など、より質の良い管理会計ができる制度設計を進めています。4月末をめどに完成をめざし、その後に運用をしていきます。


D.ABの適正化施策の有効性を高める適正化施策

(9)採用プロセスの透明化、(10)支部事務局長の任期制の実効性のある運用

●支部事務局長の実効性のある任期制とそれに必要な人事考課の設計及び導入について、専門性が必要であることから、大手企業グループのコンサルディング会社より1名の社員の無償出向というご支援をいただきました。5月から着手の予定です。


E.「支部事務局長の任期制」に必要な施策

(11)採用、人事考課、人材育成の改善

●支部事務局長や職員の採用基準の明確化や人事考課を伴う人材育成が大切です。人材育成制度の整備は2016年から2020年の中期計画でも戦略の一つの柱となっています。しかし、他に優先事項を抱えた前本部事務局長が実務を担っていたために遅れていたことを反省し、新たにアクションプランを作成中です。


F.施策運用に必要な統制環境の適正化

(12)理事長及び本部事務局長の交代、(13)本部事務局長の権限分散、(14)役員の体制強化

●適正化施策発表前に理事長は9月、本部事務局長は10月に交代しました。内部登用でしたが、理事長は本件発覚時の役員以外の人物の正式登用、本部事務局長は、職務権限分散(適正化施策13)をして、資質や条件を明確にしてから、広く公募し正式登用する予定としています。

●本部事務局長が主に支部管理部門の統括、次長が主に国内管理部門と広報・資金調達の統括、活動部門マネージャーが活動の統括を担っていた体制を変更しました。国内だけでなく支部も含めて組織全体の管理部門を統括する管理部門マネージャーを新設しました。内部登用ですが、本部事務局長同様、職務権限分散(適正化施策13)をして、資質や条件を明確にしてから広く公募し正式登用する予定としています。また、次長の職は廃止し、3部門(管理部門、活動部門、広報・資金調達)のマネージャーの3名に本部事務局長の権限を分散し、本部事務局長はこの3名を統括します。本部事務局長と3名のマネージャーさらに常務理事を加える運営委員会で意思決定を行う体制となっています(ただし、3月に活動部門マネージャーが退職となったため、活動部門の常務理事が兼任しています)。

●2名の常務理事を迎え、週2回本部職員の業務を確認し伴走する体制を開始しました。管理部門常務理事は、公益財団法人の元事務局長、活動部門常務理事は特定非営利活動法人のアドバイザーで、認定特定非営利活動法人の元事務局長です。担当を分けていますが、両者が他組織での経験を生かして、特に適正化施策については連携して本部事務局の業務を伴走及び率先して推進しています。

●広報・資金調達担当理事が理事長に就任したため、同担当理事を新たに登用しました。

●2019年6月に新たに就任した監事からは、適正化施策の視点に適い、会計の質を高める意見が常時出される体制となっています。
※現在の役職員体制についてはこちらもご覧ください。役員紹介スタッフ紹介


G.推察される動機の解消・軽減につながる、よい組織運営のために考慮すべき視点

(15)認定NPO法人格の取得、(16)職員が不満を抱かない組織運営(人権・労働慣行などSRへの取り組み計画の確実な実行)

●特別調査員会より助言を受けた認定NPO法人格の取得については、適正化施策内容の実質的な機能が果たされている状態、会計データに不備がない状態を作るための自浄作用とすることを目的に、不正発覚前からの取得に向けた取り組みを続けています。特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会による、認定基準充足度チェックを受けました。診断結果を受けて、定款変更を一部行うなど組織の改善を進めています。


その他:NGO業界への働きかけ

ご支援をいただいている組織の方より、「HFWは規程※もあり、不正を公開し、公開に耐えうる調査も行った。自分の組織では、それをもとに支援継続について検討を進めることができた。しかし、不正があっても公開はしないという支援先があっては対応に差が出て困る。業界団体への依頼になるかと思うが、HFWも率先してNGOの不正対応について足並みを揃える動きをとってもらいたい」という趣旨のお申し入れをいただきました(※HFWは、10万円以上の不正は公開すると規定しています)。また、業界団体である国際協力NGOセンター(JANIC)への本件報告の際にも、これを機に業界内で勉強会を開催できればというご希望もいただきました。そこで、働きかけを行った結果、JANIC主催で HFWの事例を取り上げた不正対応への勉強会が、NGO及びNGO等を支援している組織・企業の方を対象に1月に開催されました。18の団体・企業・組織が参加し、「不正防止に対する危機感が高まった」「 HFW の報告書は、所属団体の職員全員に読むことを奨励した」などの感想がありました。NGO業界としてのガイドラインや通報対応などの整備などが必要であるという期待も寄せられたことから、業界内でのワーキンググループ発足の準備が進められ、当団体も参加しています。

以上