フードシステム 〜その変革と飢餓のない世界は結びついていました〜 : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

特集

2021.08

フードシステム 〜その変革と飢餓のない世界は結びついていました〜

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遠い問題に感じてしまいがちな飢餓問題と、私たちの日々の食事は「フードシステム(食料システム)」でつながっています


私も途上国の農家の人たちも世界とつながるフードシステムに組み込まれている

「フードシステム(食料システム)」、あるいは「フードチェーン」という言葉、最近になって耳にしたことはありませんか? 9月にはニューヨークで国連の「食料システムサミット」も開催されます。

これらは、食料の生産から流通、消費までの一連の流れや、食品産業など産業界の相互のかかわりのことを指す言葉です。その過程で、効率化しながら付加価値を生み出すという意味で「フードバリューチェーン」と呼ばれることもあります。日本では「地産地消」「日本ブランドの海外進出」、最近では「フードロス削減」について語られる際に用いられています。

そして、流通の発達でフードシステムは世界中でつながるようになりました。今、国連をはじめ、さまざまな機関が、持続可能な開発目標(SDGs)や持統可能な社会の達成は、世界的なフードシステムの大変革なくしては成し得ないだろうと、強く呼びかけるようになっています。この先、増加する人口をどう養うかという深刻な課題に加え、人々の健康の促進、温室効果ガスの排出削減※に対しても、フードシステムの変革は重要な鍵であるとされているのです。
※SDGsのゴール3「全ての人に健康と福祉を」とゴール13「気候変動に具体的な対策を」

世界に食料は足りている。でも、高値で買うことができない

今では世界中のほとんどの人々が食料を買っており、フードシステムに組み込まれているといえます。そこには、開発途上国の農家の人々も含まれています。農家であっても家族が食べる食料をすべて生産できるわけではありません。栄養や健康のことを考えて、さまざまな食材を使った食事となるとなおさら、買わなければ揃いません。
しかし、開発途上国の農家は、生産物を安く買いたたかれる一方、売っている食品は高すざるために十分に食料を手に入れることができないでいます。食料生産に携わっていない収入が低い人々も同じです。

健康的な食事には費用がかかる

世界では全人口を賄うのに十分な食料が生産されているのに、飢餓が拡大している大きな要因は、収入が低い、あるいはまったくないために「食料を買うことができずに飢えてしまう」人々が多くいることなのです。

そして今、飢餓人口はコロナ禍により増加することが予見されています。

西アフリカのベナンからは、2021年6月に入ってこのようなレポートが届きました。

経済危機により世帯収入が落ち込んでいたところに、新型コロナウィルス感染症の影響でベナン国民の購買力はさらに低下しています。特筆すべき点として、日常的な食料価格が高騰しています。例えば、トウモロコシは175fcfa/kg→300fcfa、白豆は550fcfa→700fcfa、ピーナッツは600fcfa→800fcfa、大豆は300fcfa→500fcfa、食用油は600fcfa/litre→1000fcfa。(lfcfa=0.20円)

食料生産のさらなる増加を必要とする地域もありますが、持続可能性を考慮すれば、農地、水、資源の使い方は限られます。今、力を入れるべきなのは食料の価格を下げる努力です。食品にかける関税や輸入価格の見直し、ITや設備の整備による流通コスト削減、フードロスを出さない工夫などが重要です。一部の裕福な国や人々が食料を買い過ぎることで、本当に必要な人々に行き渡らない現状には、終止符を打たなければなりません。

また、世帯の所得向上や食品購入への補助金、緊急時の備蓄食料の配給、学校給食など、すべての人が食料にアクセスしやすくする政治的な取り組みも、なくてはならない要素です。

さらに、日本に住む私たち一人ひとりも、フードロスを減らしたり、地産地消を心掛けたりすることで、世界のフードシステムの変革に参加することができます。

参考:「持続可能な開発に関するグローパル・レーポト2019」、概要版(地球環境耽略研究棧関邦訳、国連広報センター監修)、「The State of Food Security and Nutrition in the World 2020」国連食糧農業機関(FAO)