協同組合の可能性 : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

特集

2022.02

協同組合の可能性

支援に頼らず、地域住民が力を合わせて地域をよくする。協同組合支援という国際協力


社会課題の解決に向けて高まる協同組合への期待

生協、JA、ろうきん※1など、私たちの身近に存在する協同組合。農林水産業などでの食料生産、共同購入、金融、共済、旅行、医療など、さまざまな事業を行っており、日本は約4万2000組織にのべ1億500万人強※2が加入しています。世界では約260万組織に約10億人※3を超える組合員が加入しており、世界的に大きな影響力を持っています。

協同組合は、企業とは違って営利を目的としていません。出資金を自分たちで出し合い運営に関わり、組合員としてそのサービスを利用します。組合員のための存在という点で、公益を目的とするNPOとは違いますが、その活動はNPOと同じく地域の生活改善と課題解決に直結しています。

産業革命後に資本主義が広がりはじめたヨーロッパで、生活用品の高騰や粗悪品の横行、低賃金などに苦しむ人々が、必要なものを共同で調達して分け合う仕組みを構築したことから始まった協同組合。一人ひとりは弱い立場でも、助け合うことで自分たちの生活を守り、向上させることができる「相互扶助」の精神に根差し、地域の経済活性にとどまらず、市場原理だけでは解決できない課題を解決してきました。

現在の国際的なテーマである持続可能な開発目標(SDGs)でも、協同組合は国連から重要なグループの一つとして位置付けられています。日本政府は、SDGs実現のための国家戦略「SDGs実施指針」の2019年の改訂で、新しい公共の担い手として協同組合という名称を明記しました。協同組合の国際組織 国際協同組合同盟(ICA)も、SDGs達成に向けた取り組みを強く表明しています。

世界に広がる協同組合。相互扶助の精神で、組合員が出資、利用、運営しています。
福岡県の生活協同組合「エフコープ」の組合員証(左)、バングラデシュの女性たちがグループ貯蓄を集める様子(右)

協同組合を通じて届く、安全な食料(日本・ブルキナファソ)

運営能力の向上が急務

今や多くの政府や支援機関が、社会課題を抱えた地域において協同組合の設立と運営を支援しています。協同組合自身も、知見をいかして積極的に他の協同組合を支援しています。その成果があがる一方で、設立が急増した結果、所轄官庁による法人登録や管理が追い付かない事態も発生。運営が立ち行かない組合も増え、さらには補助金目当ての協同組合が現れている国や地域もあります。

開発途上国で急務となるのは、協同組合の運営基盤の整備や事業運営能力の向上です。例えば、協同組合が所得向上につながる共同生産・加工・出荷等の事業を行うためには、ビジネスを計画・実施するマインドとノウハウを、組合員自身が身につけることが必要になってきます。また、政府は安易に設立数を追う、逆に厳しく取り締まるのではなく、適切に協同組合法や監督体制を整備しなければなりません。

食の安全のために集会を開催(日本)/ 協同組合の能力強化研修(ウガンダ)

持続可能な住民組織が地域に根付くことをめざしたHFWの活動

ハンガー・フリー・ワールド(HFW)も、飢餓に直面する人々に「食料への権利」を持っていることを伝え、その実現のために自ら立ち上がるよう呼びかけながら、協同組合の設立と能力強化などの支援を積極的に行っています。ただし、HFWが活動報告において使用している「協同組合」という用語には、本来は「協会」「委員会」と呼ぶべき状態も含まれています。そこで現在、HFWは活動地域における住民組織の法的区分の確認や定義の整理をしています。

国によって住民組織の種類や関連法は多様ですが、一般的に協同組合は、年次監査の実施、所轄庁への総会議事録や予算等の提出、指定された活動に一定の割合以上の予算を充てるなど、条件が多く設けられています。だからこそ優遇されるという傾向にありますが、構成員を女性に限定したい、管理能力にまだ不安があるなど、それぞれの住民たちの思いや段階にあわせて、協同組合に固執せず組織の形態を選ぶことが大切です。

HFWは、相互扶助の精神に基づくことは忘れずに、それぞれに適した形で持続可能性のある住民組織が地域に根付き、HFWの支援を卒業することをめざします。

※1:生活協同組合、全国農業協同組合、全国労働金庫協会の略称
※2:「2018(平成30 )事業年度版協同組合統計表」(一般社団法人日本協同組合連携機構)
※3:国際協同組合同盟(ICA )2021年2月現在

写真提供:エフコープ