2008年、アジアの人々が望むこと ~世界のリーダーたちが日本に集う2008年G8サミット。アジアの貧困問題を考える~ : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

特集

2008.02.28 Special Issue No.18

2008年、アジアの人々が望むこと ~世界のリーダーたちが日本に集う2008年G8サミット。アジアの貧困問題を考える~

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私たちの役割

日本のみなさんにお願いしたいこと

私は、飢餓のない世界を世界中のみなさんと一緒に創り、経済の成長だけではなく、すべての女性・男性・子どもたちが自分の可能性を生かせる平等な社会を実現したいと考えています。

そして、実際に飢餓を体験した者として、個人ではなくバングラデシュの代表として、みなさんに訴えたいことがあります。これからお伝えすることは、私たちバングラデシュ人、南アジアに暮らす人々が望んでいることだとお考えください。

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1.各国政府へのリクエスト

貧困者のための政策を市民と一緒につくってください。そうすれば、貧しい人々の声を政策に反映させることができます。

また、GNIのうち0.7%を開発援助にあてる約束を守ってください。開発援助の内容に関しては、農村部に電気を通すなど、貧しい人々が自らの生活を改善できるような投資も必要だということを意識してもらいたいです。

そして、各国政府や首脳たちが、核兵器のない平和な世界、紛争ではなく外交を通した和解ができる社会、戦争ではなく援助にお金を使える社会へと導いてくれることを望んでいます。


2.日本の市民へのリクエスト

日本はアジア唯一のG8加盟国で、2008年には議長国になります。日本のみなさんに一番伝えたいことは、この機会に私たちアジアの貧しい人々の声を日本政府に届け、G8加盟国に届けてほしいということです。

ODAの質の向上と債務の免除を日本政府にリクエストしてください。日本政府が開発途上国へ債務免除を行えば、多くの国が自国の開発に自己資金を使えるようになります。そして、日本の市民のみなさんには、ぜひ北海道洞爺湖でのG8サミットに向けた日本のNGOのネットワーク「2008年G8サミットNGOフォーラム」の活動をサポートしてほしいと思います。貧しい人々への支援だけではなく、こうした問題に関心を持ち行動することでも、大きな成果を得られます。

アジアの貧困がいずれ過去のものとなるよう、みなさんと一緒に、私たちにできることを積み重ねていきたいと思っています。すぐには世界を変えられないかもしれません。でも、信念を持って1人ひとりができることを行っていけば、夢は現実になると信じています。


HFWも参加しています 「2008年G8サミットNGOフォーラム」
http://www.g8ngoforum.org/

日本では、2008年G8サミットに向けたNGOのネットワーク「2008年G8サミットNGOフォーラム」が2007年1月31日に発足。貧困・開発、環境、人権・平和など地球規模の課題に取り組んでいる約100のNGOが参加しています。

NGOが分野を超えて連携し、地球規模の問題について各国首脳が真剣に討議し、有効な取り組みを約束するよう、共同で働きかけを行います。HFWもフォーラムに参加し、G8サミットに向けて行動を起こす準備を進めています。

参考/世界子供白書2007(ユニセフ、2007) アジア開発展望2007(アジア開発銀行、2007)、外務省ホームページ、2007年8月5日シンポジウム「アジアの貧困は終ったの?」講演記録


アジアにとっての2008年G8サミットの重要性

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三宅隆史さん(教育協力NGOネットワーク事務局長)

2007年7月末にフィリピンのケソン市で開催された、各アジア地域G-CAPの代表が集まる「アジア地域ODA会議」に参加しました。そこで得られた示唆についてお話します。

会議では、慈善より正義を、軍事費より援助を、ODAとテロとの戦いとは分けるべきなどの意見が出されました。G8に向けて日本の市民社会は、教育、保健など分野ごとに議論を行っていますが、援助の役割そのものについても議論するべきだと気づかされました。

また、ODAの再定義についての議論があり、ODAは「開発」援助であり、債務免除、留学生支援、難民支援をODAとしてカウントすべきではないという結論が出されました。そうしたODAの再定義をふまえた上で、アジア地域ODA会議の最終文章が採択され、援助国への提言がまとめられました。


アジア市民社会から援助国への提言(抜粋)

1.開発援助の量の拡大

対GNI比0.7%の目標を守ってください。アフリカ援助にあてられている資金をアジアに振り分けるのではなく、開発援助量全体の拡大をめざしてください。

たとえば、教育分野のMDGsを達成するためには90億ドルが必要ですが、世界の教育分野へのODA総額は35億ドル程度です。一方で90億ドルといえば世界の軍事費の約3日分。政治的意思があれば達成可能な金額といえます。また、世界のODAの約2割が既存の借款の債務免除で、新たな開発に使える借款と贈与の総額は減少しています。

2.開発援助の質の向上

借款を減らし贈与を増やしてください。援助国主導の援助はやめてください。

ある程度経済発展している中所得国でも借款返済に苦しんでいます。 また、被援助国政府の計画と援助国による援助には、整合性が必要です。たとえば、日本の援助が教育に取り組むとき、日本政府は学校を増やす、バングラデシュ政府は教員の数を増やす、といったことがあれば、それは整合性がとれていない状況です。援助国主導の援助ではなく、開発途上国政府や市民社会が求める ODAプログラムを実施する必要があります。

アジア市民社会からの2008年G8サミットに向けた日本の市民社会への期待は、計り知れないものがありました。私たちは、それにこたえられるよう2008年にむけて最大限がんばっていかなければならないと思います。