バングラデシュのカルポナさん・リピさん・シリピさん【インタビュー】 : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

バングラデシュのカルポナさん・リピさん・シリピさん【インタビュー】

バングラデシュボダ郡で、「ウィメン・エンディング・ハンガー (WEH) 連合会」を束ねる連合会事務局メンバー3名にインタビュー。女性たちは地域変革の担い手として、力強く語ってくれました。

話を聴いた人(写真左から)
カルポナさん(会計係。息子が2人いる。ヒンドゥー教徒)、リピさん(メンバー。息子・娘のほか、孫も2人いる。イスラム教徒)、シリピさん(総務担当。子どもが2人。イスラム教徒)

話の聴き手
横山秀(HFW職員、グローバル管理オフィサー)

Q. 連合会はどんな活動をしていますか?
カルポナ(敬称略、以下同じ):昨年、加盟グループの全メンバーを調査し、牛乳や食事がとれているかなどをはじめ、生活水準に応じて4つのレベルに分けました。私たち連合会メンバーは毎月会議を開き、特に所得が低いレベル1~2の女性をサポートしています。
シリピ:こうした女性たちには、5~6羽の鶏を提供し養鶏を始める手助けなどを始める手助けなどをして、収入を増やそうとしています。以前は無料で支援していましたが、今は本人の自立に対する意識を高めるため貸付に変え、少しずつ返済も始まっています。
リピ:世界食料デーなどに、米のお菓子「ピタ」やケーキを売る屋台を出したり、地域課題を洗い出すためのワークショップを開いたりもしています。

Q. これまでどのような成果がありましたか?
カルポナ:畜産研修の共同開催などを通じて、行政府の役人と良い人間関係を築けるようになりましたし、団体登録や助成金の申請方法も学べました。
リピ:レベル4のメンバーがレベル1・2のメンバーをサポートするなど、相互の支え合いが生まれています。
シリピ:「育児支援金が停止してしまった」とメンバーから相談を受けて登録状況を確認し、支給が再開されたこともありました。社会的な認知度も高まり、村で何かあると、村長が私たちの意見を聞くようになりました。

Q. HFWとの関係はどのように変わりましたか?
シリピ:HFWの長年にわたる能力強化のおかげで、地域には相互扶助の力がゆっくり、しかし着実に育っています。私たちも主体的に組織を運営できるようになり、HFWは現在、後方でサポートしてくれています。

Q. ご自身に変化はありましたか?
リピ:私は15歳で結婚し、家庭での立場は弱いものでした。しかし研修での学びを自宅で実践すると家計が改善し、夫が私を尊重するようになりました。
シリピ:活動の中で意思決定や責任を担う中で、次第に家庭でも、子育てなどに責任を持って向き合えるようになりました。今は子どもが学校を休んだ日は、勉強を見てやるようにしています。

Q. 今後、取り組みたいことを教えてください。
シリピ:活動を通じて私自身が収入を得て評価されたように、娘も教育したいです。
カルポナ:レベル1・2のメンバーを、全員レベル4に引き上げたいです。
リピ:より多くの人をサポートし、女性が収入を得て尊重される社会をつくりたいです。それには、これまで以上に資金が必要です。

聴き手横山の感想
彼女たちは、グループ活動からの資金獲得に加え、行政などから活動への融資や補助金を得ていこうとしています。彼女たちの力強さ、HFWからの支援卒業支後を担う人としての覚悟が、今回の取材で印象に残りました。

会議の様子

会議の様子

カルボナさんが作詞したWEHオリジナルの歌とダンスを披露してくれました

カルボナさんが作詞したWEHオリジナルの歌を披露してくれました

「なんと美しい連盟~強い人を育てるため、毎月会議と研修を行います」といった歌詞。次第に踊りも始まりました

「なんと美しい連盟~強い人を育てるため、毎月会議と研修を行います」といった歌詞。次第に踊りも始まりました


ウィメン・エンディング・ハンガー運合会ってどんな組織?

ボダ郡にある18の女性グループ、約380名の会員からなる組織で、2022年に設立されました。グループのひとつが連合会の事務局を担い、加盟グループの活動のモニタリングとサポートをしています。グループによって、週14円~140 円程度(1タカ=1.37円)を出資する仕組みもあります。カルポナさんら連合会事務局メンバーは、中心的存在であると同時に、自らも女性差別や貧困などの課題を抱えており、当事者同士が支え合って活動しています。
HFWは前身団体だった2000年以前から、ボダ郡の最貧層の女性たちを支援してきました。2003年からは、栄養補助食の提供や助産師指導などを行ってきました。支援を受ける女性たちの中から、グループが生まれていました。さらにHFWが2018年から2021年に行った、特に弱い立場にある女性たちへの栄養改善事業によって28のグループができました。コロナ禍でHFW職員が現地に入れなくなった時も、女性グループとやり取りする形で緊急食料支援を実施できました。
「グループを取りまとめ、政府との窓口役となる上部組織が必要ではないか」との女性たちの提案もあり、既存グループから18グループが加盟し、結成に至ったのです。
少しずつ活動主体を連盟にシフトすることで、 最終的にはHFWによる支援からの卒業を目指しています。

キノコ栽培も始めた

始めたばかりのキノコ栽培

近くに公立学校ができて役目を終えたHFWが支援していた学校校舎を事務所として使っている

近くに公立学校ができて役目を終えたHFWが支援していた学校校舎を事務所として使っている