特集

2010.04.28 Special Issue No.28

栄養が守る、子どもの命と未来 ~子どもの飢餓~3

子どもたちを守るために、できること。

では、どうすれば子どもたちを栄養不良から守れるのでしょうか。

栄養改善というと、国際機関が支援する栄養剤の投与や栄養強化ビスケットなどの食品配布を想像する人も多いでしょう。もちろん、そうした特定の栄養素がしっかり摂取できる栄養剤や栄養強化食品の支援はとても重要です。一方で、食べ物が得られる地域であってもたくさんの栄養不良の子どもたちがいること、女性や子どもに栄養が行き渡っていない現状を考えれば、そうした支援で解決されない問題もあります。

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文化に影響される「食べる」ことへの支援の難しさ

「食べる」ことは文化に根差した行為で、支援が難しい分野でもあります。たとえば多くの日本人にとってはコメが主食。栄養が足りないから、毎日イモを主食にしましょうと、もしも急に言われたら……。多くの人にとっては一度習慣になった食生活を変えることは難しいのではないでしょうか。転勤などで遠くの地域に引っ越し、味噌や醤油の味の違いに違和感を覚え、慣れるまでに時間がかかった経験を持つ人もいるでしょう。

開発途上国でも同じこと。どんな食材をどんな調理方法で食べたいのか、舌になじんだ味、おいしいと思う味、食事の回数、それは長年の習慣で身に付くもので、誰かに言われて簡単に変えられるものではないのです。そのため、その地域の食習慣や固有の食材を活用した栄養改善を展開することが求められます。問題は、地域の中で栄養バランスのとれた食材が一年を通して確保できるかどうか。そして、その食材を生かす術、知識、誰に栄養が一番必要かを、人々が知っているかどうかです。

栄養は、毎日、一生、必要なもの。支援の成功は、地元で手に入る食材の活用、地域住民の参加、あるいは地域や国の制度に組み込まれた形で行われるなど、継続性を確保できるかどうかにかかっています。

ところが、先進国からの援助でも開発途上国の保健関連予算の中でも、栄養改善に向けられる予算はほんのわずか。でも、栄養改善を行うことで病気にかかりにくい人が増えることは、病気の予防、ひいては地域全体、国全体の医療費の削減にもつながり、さらに人々の生産性を高める経済効果も得られることが研究されています。保健分野での支援や政策において、栄養を予防医療と位置づけその価値を見直すことで、栄養改善への支援や施策を拡大できるのではないでしょうか。それが、世界の子どもたちの命と未来を守ることにつながります。


ブルキナファソの国営保健センターと協力し、地域の食材で子どもの栄養改善

5人に1人の子どもが5歳までに命を落としてしまう、西アフリカ・ブルキナファソ。HFWは2005年から国営の保健センターと協力して0~5歳未満児約4500名の栄養改善に取り組んでいます。

この栄養改善事業は、もともとはブルキナファソ政府が国営の保健センターで全国的に展開していた事業でしたが、資金難のため多くのセンターで打ち切られてしまいました。HFWは首都から25キロメートルほど離れたクブリ郡の保健センターで、すでにある建物と資材、かつて働いていたスタッフを活用して事業を再開しました。

センター内での健診と各村での出張健診で、子どもの体重、腕囲・頭囲などを測定して栄養不良かどうか診断しています。栄養不良と診断された子どもたちは、お母さんと共に毎週の定期健診に通ってきます。ここで体重測定などを行い、子どもの発達度合いを記録して、年齢相応に成長しているかどうか管理しています。

加えて、二つの活動に力を入れています。一つは、地域内のどの家庭でも手に入る食材を使ってつくることのできる、栄養バランスの取れたお粥の作り方をお母さんたちに教えること。材料は、ミレット(雑穀)、スンバラというネレの実でつくった調味料、ピーナツ、アリコ豆、塩、燻製魚など、ほとんどの農家で栽培されるか、村の中で販売されているものばかり。地元で手に入る食材を工夫し、組み合わせることで十分に子どもたちの栄養源となっていきます。

もう一つ力を入れているのは、お母さんを対象とした啓発活動。子どもにとって正しい食事の質と回数のほか、離乳食を与え始めるタイミング、衛生管理、マラリアなどの感染症の予防に関しても指導しています。

2008年度の一年間だけでも、600名以上が診察を受け、うち126名が定期健診や治療を通して栄養状態を改善しました。4年間の活動の中で、一度栄養状態を回復した子どもが再度栄養不良に陥ったことはありません。こうした成果が広まり、2008年からは、HFWの支援する栄養改善事業が、再び地域行政の保健施策に位置づけられるようになりました。HFWとしては、今後も支援を継続し、その成果を政府に報告していくことで、国全体で再び運営されていくよう働きかけていこうと考えています。

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定期健診で体重測定し、栄養不良を診断

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ミレット、ピーナツなど栄養粥の材料。地元で手に入る

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お母さんたちに衛生管理を指導。下痢を防ぎ、子どもの栄養を守る