世界の食料事情

飢餓は食べ物が足りないから起こるのではない、という事実。
どうやら原因のほとんどは、私たちが作り出しているようです。

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食べ物が十分にある世界

増えている穀物生産量

いま、世界の飢餓人口は7億9500万人。9人に1人が飢餓に苦しんでいます。 これは食べ物が足りないからではありません。なぜなら、毎年世界では、約25億トン(※1)の穀物が生産されていて、もしこれが世界に住む73億人に平等に分配されていれば、1人当たり年間340キログラム以上食べられることになります。日本人が実際に食べている穀物は、年間159キログラム(※2)。世界では穀物に加えて野菜などが生産されていますし、在庫があることを考えれば、すべての人たちが十分に食べられるだけの食べ物は生産されています。

※1 国連食糧農業機関(FAO)(2015‐2016概算値/2016年)
※2 厚生労働省「国民健康・栄養調査(2013年)」

飢餓が終わらないのはなぜ?

それではなぜ、飢餓が終わらないのでしょうか。飢餓に直面している地域が、教育が普及していない、十分な収入が得られないなど、さまざまな課題を抱えていることはもちろんですが、それだけではありません。私たちが毎日食べているものが生産されてから食べられるまでには、加工する、運ぶ、売る、買うなどのたくさんの工程があります。物を運搬するための交通が整備されたことや、食べ物を加工したり、冷凍したりする技術が進歩したことで、世界中で生産された食べ物が、世界各地へ届けられるようになりました。そのような世界では、国境を越えた地球規模の課題についても考えることが大切です。

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異常気象による農作物の不作

地球温暖化の影響を一方的に受ける開発途上国

農業で生活している人の割合が高い開発途上国。飢餓に直面している人たちの約7割が農村部に住み、そのほとんどが小規模な農家です。そのため、天候の不順や自然災害が起こると十分に食べられないだけでなく、安定した収入を得ることも難しくなり、生活が成り立たなくなってしまいます。
近年、異常気象による農作物の不作が世界各地で報告されています。温暖化の原因となっている二酸化炭素の排出を見てみると、そのほとんどが先進国や中国やインドなどの新興国によるもの。たとえばアフリカ全体の排出量は、全世界のわずか3.3%で、日本の3.8%よりも少ないのです(※3)。本当であれば、たくさん排出している国が責任を負うべき地球温暖化によって、開発途上国では自分たちの生活を支えることさえも困難になりつつあります。

※3 CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION 2015 EDITION/IEA(2013年)

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食生活に与える影響

例えば、西アフリカ・ブルキナファソからは、「ここ数年、雨季に十分雨が降らなかったり、降りすぎたりしている」「原因が何なのかわからない」という声が聞こえてきます。この国の気候は、雨が降り食料を生産することができる雨季と、全く降らない乾季にはっきりとわかれていますが、雨季は6~10月頃の5ヶ月のみ。その期間に1年分の食料を生産して保存し、乾季に備えるため、雨季に雨が十分に降らなかったり、降り始めの時期が遅れたりすると、農業に影響が出てしまいます。十分に収穫できないと、食事の量や回数を減らしたり、使う食材を減らしたりするしかないため、栄養状態が悪化します。また、食材を売ることで現金収入を得て、家族が病気になったときの費用にしていますが、収入が減ると通院を控えるため、病気を悪化させてしまうこともあります。

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国境を越えて取り引きされる食料

高くて不安定な国際価格

2007から2008年にかけて、世界の穀物生産量は当時の過去最高を記録しました。それにも関わらず食料価格が世界的に高騰し、大問題になりました。食べ物を求め世界各地で暴動が起こり、ハイチやブルキナファソ、カメルーンなどの国では、死傷者が出る事態になったのです。食料価格が高騰した理由の一つとして、穀物が投機の対象として注目されるようになったことがあります。投機とは、モノやサービスを実際に手に入れるためではなく、お金を短期的に増やすために売り買いすることです。もともと各国で生産された穀物の多くは国内の消費にあてられるため、国際市場に出回っている量が少なく、値段が変動しやすいという特徴を持っています。金融危機によってこのままでは利益が出せないと判断した投機家が目をつけたことによって、あっという間に高騰してしまいました。 食料価格は2011年にも過去最高値を更新したように、不安定な傾向が続いています。

国際市場に翻弄されるしくみ

どの国も、国際市場に影響されないように、自国での食料生産を安定させる必要があります。また、日本のような先進国は、たとえ農作物が不作の年があっても世界中から食べ物を買って手に入れますが、開発途上国には難しいことです。 開発途上国のなかには、主食の穀物を海外からの輸入に頼っている国が少なくありません。これには、植民地時代に支配国からコーヒーやカカオなど、先進国に輸出するための作物の生産を押しつけられてきた歴史が関係していますが、それでは国際市場で作物の価格が変動したときに大きく影響を受けてしまいます。特に、農作物の不作などにより価格が高騰するような場合にはなおさらです。たとえば、1993年に日本で起こった米騒動。冷夏による米の不足で困った日本が世界中から米を買ったその影で、穀物を輸入に頼る開発途上国のなかには米を買えなくなり、飢餓に陥った国があったと報告されています。

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食べ物と資源の奪い合い

どうなる?これからの食

人のお腹を満たすだけではなく、牛や豚などの家畜のエサや甘味料、バイオ燃料の原料としても利用される穀物。食料価格が高騰し、世界的な食料危機が起こったことで、食料を安定して確保することへの不安が募っています。そんななか、先進国のなかには、食べ物を生産する土地までも、アフリカなどの飢餓に苦しむ国々から買い押さえようとする動きが出ています。
世界の人口は増え続けており、2015年現在の73億人が、2050年には97億人になると予測されています(※4)。増え続ける人口に見合う食べ物を確保するためには、今よりも1.7倍もの食料を増産しないといけないといわれています。しかし、食料を増産するにも土地や水には限りがあります。食べ物、さらには食べ物を生産するための資源をめぐる争いが、国同士の大規模な衝突へと発展しないような対策も必要です。

※4 国連人口基金『世界人口白書2015』

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すべての人が生まれながらに持つ「食料への権利」

十分な量の食料が世界で生産されることはもちろんですが、それだけでは世界中のすべての人たちが食べられるようにはなりません。食べ物を買うための収入を安定して得られることや、必要な人の手に届くことも重要です。また、何を生産するかを自分たちで決められること、ただお腹が満たされるだけでなく、安全で、栄養のあるものを食べられることも大切です。
すべての人が生まれながらに平等に持っている「食料への権利」。健康で社会的な生活を送るために必要な十分な量と質の食べ物に、いつでも、身体的にも経済的にもアクセスできるよう、本来であれば各国が責任を果たすべきです。しかし、何らかの問題で実現できない場合は、国際社会や私たちの協力が不可欠です。2015年に日本も含むすべての国連加盟国が採択した持続可能な開発目標(SDGs)では、2030年までに飢餓を終わらせることが約束されています。

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