HFWの活動地では、家族で営む昔ながらの小規模な伝統農業がほとんどで、現金収入も限られており、国際社会の定める貧困ライン1日1.9ドル以下で生活する人々がほとんどです。
サハラ砂漠の南に位置する乾燥地帯で、日中は強い日差しが照りつけます。住居は日干し煉瓦に藁葺き屋根の伝統的な家で、平均10名の家族が同じ敷地にあるいくつかの小屋に住んでいます。住居の近くには、円柱に三角屋根の藁の穀物貯蔵庫があります。
調理は屋外のかまどで行いますが、薪を燃料にするため、節約のために1日1回しか調理せずに、夜の残りを朝食べることも多いです。料理の素材やバリエーションは限られており、住民に何を食べたか聞くと、料理名よりも素材名で答えが返ってきます。
トウモロコシなどを入れて保存する貯蔵庫。高床式で防湿、防虫の効果がある
収穫した作物は、長期間保存できるように棚の上などで天日干しして乾燥させる
家の外で調理。石を三つ並べただけのかまどで薪を使って調理。熱効率が悪い
熱効率を高めた改良かまど。写真奥には村の井戸から汲んだ水をためる水がめが
収穫前の時期は食事の量、質ともに落ちる傾向に
活動地の住民の主食は主にミレット、トウモロコシなどで、自給自足の生活ですが、天候の影響などによる不作で収穫が少ない年や、食料の備蓄が厳しくなる端境期は、市場の食料も値上がりするため(※)、食事の回数や量、質を落として生活することになります。野草をつんで食べたりしていますが、食事の量は収穫直後と比較すると約 2/3から1/2近くまで落ちます。一方でこの時期は、農作業の時期に重なるため、重労働の男性の穀物摂取量は増え、HFWが給食を支援する学校に通う子どもは学校が休みで給食がないため家で食事をとります。そのため、限られた量を家族で分け合うことになり、十分な栄養がとれません。また、肉や米は非常に高価で、ごく一部の裕福な家庭を除いて食べられる機会は限られています。
※収穫直後と収穫前では、トウモロコシ350→650、アリコ豆600→1000、ミレット400→650~700に値上がりする。(数字の単位はフランセファCFA[1 CFA=約0.2円]各販売用の器1杯分の値段/2015年のHFW調べ)
農作物
日本でいうアワやヒエに近いミレット
雑穀の一種ソルガム
ブルキナファソの特産品ピーナッツ
収穫したアリコ豆
村の食事
トウモロコシのパットと野菜のソース
甘いフルーツから作ったモンキーブレッド
ミレットのパットとバオバブの葉のソース
ネレの実を発酵させて作る伝統調味料のスンバラ
地酒のドロ。雑穀を発酵させて作られる。器はヒョウタンをくりぬいたもの
シアーと雑穀、砂糖と塩、水で作られた飲み物。歓迎の時に飲まれる
HFWの活動地の人々の食事の一例
ニキヤマ・スザンヌさん(ウェドビラ村・住民)
朝 一昨日のバーベンダー(地元の野生の野菜)と米
昼 なし(夫と子どものみ一昨日のバーベンダーと米)
夜 米とピーナッツソース
タサンベロ・マデレンヌさん(ワムテンガ村・住民)
朝 ドロ(地酒)のみ
昼 食べなかった(畑仕事している夫はトウモロコシのパット※)
夜 トウモロコシのパット
コンゴ・パリブドゥさん(ワムテンガ村・事業の推進役)
朝 トウモロコシのパット
昼 アリコ豆とクスクス
夜 食べない(端境期で穀物の備蓄が少ないので1日2食)
バジィ・マティウさん(クブリ郡保健センター責任者)
朝 コーヒー
昼 パームオイルのソースと米
夜 昼の残り
ティアンドレベオゴ・サキナタさん(HFW栄養改善事業対象者/娘が栄養不良)
朝 昨日のトウモロコシのパット
昼 イスラム教徒のためラマダン中で食べない
夜 トウモロコシのパット
※パット:ミレットやトウモロコシの粉をお湯で練って作る。現地ではトゥオとも呼ばれる
農業は昔ながらの手作業で重労働
ブルキナファソの活動地では、トウモロコシ、ミレット、ソルガム、豆類は、雨季にあたる6月~10月ごろに栽培・収穫され、キャベツやナス、トマト、ピーマンなどの野菜類は乾季の11~2月頃に栽培・収穫されることが多いです。農作業に機械はほとんど使われず、昔ながらの道具に頼った手作業が中心であるため、村の人たちが共同で助け合って植えつけや収穫などの作業を行います。雨水に頼る農業で灌漑設備も十分でないために、天候の影響を受けやすく、干ばつになると作物が育たず、収穫を得ることが難しくなります。また、近年の気候不順によって雨季と乾季がずれ、農作業の予定が立てにくくなっています。元々土地がやせており、近年の砂漠化などで農作物の生産量が低く、需要を満たしていない状況です。
地面近くに実った豆を収穫
ミレットを臼に入れて杵でついて脱穀する
風の力でもみ殻と穀物を分別。軽いもみ殻は吹き飛ばされ、容器には穀物が残る
育ちの良かったトウモロコシは、干して来年の種用にする
3日に一度開かれる市場で食材を購入
活動地の4ヵ村から数キロ~5キロ先にあるクブリで、3日に一度、市場が開かれます。首都ワガドゥグの市場と比べれば品数は少ないものの、村の人が日常的に使う食材や日用品のほとんどは調達できます。市場で購入するだけでなく、自分たちで作った野菜や食品をそこで販売もしています。HFWでは村で現金収入を得にくい女性たちのグループを対象に、マイクロクレジット事業(小規模貸付)を実施しており、女性たちは、元手をもとに事業を実施。材料を仕入れて自分たちで調味料のスンバラや地酒のドロを作り、市場で販売して収入を得ています。なかには、収穫したタマネギを貯蔵庫で保管し、市場で品薄になった頃に高く販売して利益を得るというグループも出ています。タマネギはブルキナファソでは人気の野菜で、収穫期と端境期との価格差が大きいため、時期をずらして販売すると、利益が得やすくなります。最近はテロの影響で国境が閉鎖されているところが多く、市場で売るために仕入れる食料が減ってきているという報告もあります。
活動地では3日に一度市が立ち、多くの人でにぎわう。乾燥させた穀物や野菜類などが並ぶ
キャベツの収穫時期には大量にキャベツが出回る
小麦粉の揚げ菓子を作って販売する女性も
タマネギを販売する女性グループ。タマネギは人気だが、価格変動が激しい
街での食事はバラエティ豊かで肉や魚も
街のレストランなどで出される食事は、村での食事に比べ、はるかにバラエティに富んでいます。主食も米、バナナ、イモ、パスタなどさまざまで、肉や魚も入っています。首都ワガドゥグの市場では、輸入食材も並びます。
バナナのフフと肉入りのソース
魚のスープにトウモロコシのアカサを添えて
鶏肉とクスクスの炊き込みご飯
鶏もも肉と野菜の煮込み
豚肉のグリル
首都の果物屋