今回は海外事業部で主にフランス語圏(ベナン・ブルキナファソ)の担当をしている、内野香美さんです。内野さんはHFWに入職しておよそ1年ですが、これまでも砂漠化防止や農業・農村開発の分野で西アフリカに関わってきたそうです。今回はそんな内野さんに、入職以前の経験も踏まえて、HFWでの取り組みについて伺いました!
ベナン:自立の指標をもとに地域住民が活動の評価を行う
HFWに入職して「初めて」だったことや印象的だったことはありますか?
内野:やっぱり、現地に駐在員を置かずに活動する点※ですね。今までは現地に自分が実際に赴いて活動をすることが主だったので。
※インタビュー:「主体的に変化を手繰り寄せて」海外事業担当の細井さん・寺尾さん・槌谷さん
HFWの方針として「地域の人たちのエンパワーメントを大切にするために、駐在員を置かない」ようにしていますが、日本で現地の活動をサポートする立場として、課題は感じますか?
内野:重要だと思う一方で困難もありますね。というのも、現地の様子が日本からではよく分からない。毎月の報告書やオンライン会議を通じて情報を知ることはできますが、どこかこう雲をつかむような、肌感覚がないような感じがしています。
例えば、否定的な意見を「もっている人」や「もっていそうな人」に話を聞けているのかが現地にいなければ分かりづらいですね。否定的な意見は、現地住民の参加の度合いを低めてしまい、結果としてプロジェクトの失敗にもつながりかねません。
ブルキナファソ:プロジェクト実施のために、支部事務局長より農業資機材(噴霧器・肥料・線引き機)が地域住民へ供与された
上記の危機感はこれまでの経験から来ているのでしょうか?
内野:そうですね。マダガスカルでコンサルタントとして活動をしていた時に現地NGOの活動を見させていただく機会がありました。その時に、現地NGOのスタッフが地域の人々との会議を運営するのと同時に、どの人が会議に参加していないのか、あるいはどの人が途中で離席していたのかを確認していたんです。彼らは、後日そうした人の声を聞き逃さないために、どうして参加しなかったのかや、どうして途中で帰ったのか等の聞き取りを行っていました。そうした細かい配慮が現地の開発には必要なのだと、この活動からは教えてもらったと思います。
内野さんが担当している西アフリカのベナンとブルキナファソのプロジェクトでは、どのくらい地域の人たちが参加できているのでしょうか?
内野:ベナンでは現地の事務所長であるファトゥさんが、女性など比較的立場の弱い人たちの声をしっかり汲みとろうとしていているのであまり心配はしていません。一方で、ブルキナファソでは現地職員のほとんどが男性であるということもあり、彼らがどこまで気を配れているのかについては分からないところがありますね。
日本から現地での活動をサポートするために、今後重要視していきたいことはありますか?
内野:現地の人たちの小さな変化をキャッチするということが一番大事なことかなと思います。例えば、日本では目標を決めてその実現に向けて必要なタスクを積み重ねていくことが普通ですけど、向こうではそれよりもまず今日をどう生きるかを考える傾向が強いです。そうした違いを前提としたうえで、一足飛びに大きな変化を求めるのではなく、長い目で見たときに最終的な目的につながるような小さな変化にアンテナを張って、そうして小さな変化を捉えて次につなげようとすることが重要だと思っています。
矢代:現地の住民の方々のエンパワーメントを重要視する一方で、彼らとの距離感が離れすぎてもいけない、そんなせめぎ合いの中で良い社会を目指す開発の難しさを垣間見た気がします。一歩一歩彼らと歩幅を合わせて歩もうとする内野さんの姿勢、勉強になります!
2025年7月収録。役職名は当時のものです。
文責:フードシステム変革推進チーム学生インターン 矢代