2008.08.03 Special Issue No.20
有機農業と地球の食 ~おいしくて安全なだけじゃない。 育まれる命の循環~
INDEX
- P1有機農業と地球の食
- P2続けられない? 近代農業の課題
- P3食べられない…… 売るための農業
- P4世界の農業事情と日本の私たち
続けられない? 近代農業の課題
石油を食べている?
しかし今、農薬などに使われる化学物質の一部が、アレルギーやアトピーの原因ではないかと健康被害が疑われるほか、近代農業の様々な弊害が指摘されています。一つは「石油を食べている」といわれるほど石油エネルギーに依存していること。例えば、お米を栽培するための田植え機、稲刈り機などの農業用機械を動かすには石油エネルギーが必要です。
また、イチゴやトマト、キュウリなど季節外にハウスで栽培された作物は、自然に育った旬の作物と比べ、4~10倍の石油エネルギーがかかります。ハウス栽培のトマト1個には、石油180ml(牛乳ビン1本分)が使われています。このように、農産物を作るエネルギーのうち約9割は石油であり、化学肥料や農薬を作るためにも石油が不可欠です。
地球規模でみると、農業で使われる石油の量は、製造業、建築業、農林水産業など全ての産業部門で使われる石油の約2割にもなります。さらに農産物の貯蔵・輸送・加工なども石油にたよっています。しかし、石油は限りある資源。40年後には枯渇するともいわれています。
ハウス栽培された作物は、自然に育った旬の作物と比べ、4~10倍の石油エネルギーがかかる
子どもたち、孫たちの世代まで続けられるのか
化学肥料や農薬は、土壌を劣化させ、もともと土が持っている栄養や微生物を奪ってしまいます。つまり、近代農業を続ければ続けるほど、土地はやせていくので、化学肥料なしには作物が育たない土地が増えていきます。また、化学肥料の原料の一つであるリン鉱石は、産出国が限られているためその枯渇が心配されています。このように、化学肥料の生産も、いつまで続けられるかわからないという問題があります。
さらに、いちど土壌や空気中にまかれた化学物質の中には、1年や2年では消えないものもあり、自然環境や人体への影響も懸念されます。人体に影響がないといわれる化学物質でも、子どもたちや孫たちの世代の健康に影響を及ぼす可能性を、完全に否定することはできません。
近代農業は今、その持続可能性が疑われているのです。