アフリカの多様な食文化と飢餓 ~国際イモ年に、アフリカの食料確保を考える~ 2 : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

特集

2008.10.01 Special Issue No.21

アフリカの多様な食文化と飢餓 ~国際イモ年に、アフリカの食料確保を考える~

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INDEX

人々の食文化を尊重した支援が必要

このように、アフリカの人々の食を支えているイモ類。古くから食べられているとはいえ、品種改良や加工・流通面では、まだまだ課題があります。たとえば、ヤムイモは収穫時期が決まっており保存が難しいため、年間を通した供給量や価格が不安定です。またキャッサバは1年を通じて収穫でき、地中に埋めておけば2~3年は保存できますが、収穫するとすぐに味が落ちてしまうため、流通には加工が欠かせません。しかし、加工技術が発達しておらず、効率的に生産されていないのです。

こうした事情を踏まえれば、イモ類の品種や栽培技術の改良、収穫後の管理方法改善などが、アフリカにおける安定した食料供給に大きな効果をもたらすと考えられます。しかし、現在のアフリカに対する食料生産支援は、先進工業国側に馴染みのあるトウモロコシやイネなどの研究開発と技術支援が中心であり、イモ類の研究や支援は、ほとんど行われてきませんでした。

飢餓撲滅のためには、食料を提供するだけではなく、アフリカが持つ多様な農業体系や食文化を尊重し、人々が昔から生産し食べてきたイモ類生産への支援も積極的に行っていく必要があるのではないでしょうか。

ベナンでキャッサバ加工の機械を導入。安定供給を実現しました。

イモ類がよく食べられている西アフリカに位置するベナン共和国。HFWでは、活動地ベト村で、2004年度から、女性協同組合を対象にキャッサバを使った食品加工のトレーニングに取り組んでいます。

技術研修や機械の導入によって、生産工程の効率化や、商品の保存技術の向上を図り、市場に安定して売り出せるよう支援してきました。

以前は手作業で行われていたキャッサバを乾燥させて粒状に加工する“ガリ”の生産も、HFWの支援ですり下ろす機械を導入し、約2倍の生産量に。また、品質が高く保存状態がよいと、好評を得ています。

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1. 収穫
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2. 皮むき
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3. 機械で粉砕
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4. 炒って乾燥
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「日本によるイモ類の開発支援が鍵」

志和地 弘信 教授
(東京農業大学 国際食料情報学部 国際農業開発学科)

アフリカで農業開発を通して飢餓を減らしていくためには、伝統的に利用されている作物の生産性を高め活用することが重要です。アフリカ在来のヤムイモ、タロイモなどは、これまで研究開発の対象にされてこなかったために、低い生産性にとどまっています。イネやトウモロコシの研究者は世界中に数千人単位でいますが、アフリカ在来のイモ類の研究者は両手で数える程度と、圧倒的に少ないのです。

また加工や流通面への支援も必要です。たとえばキャッサバは収穫してから24時間以内に加工しなければ品質が落ちてしまいます。しかし、農村地域では、ほとんど手作業で加工されているので、時間がかかり無駄になっているキャッサバも少なくありません。同じ生産量でも、ちょっとした機械の導入で、加工効率と流通に大きな違いが生まれ、安定した食料供給に寄与できます。

日本が支援するネリカイネなどは、作物栽培の多様性という点では重要ですが、アフリカでのコメの消費地が限られている現状も考慮する必要があります。ヤムイモの一種である長芋や自然薯、タロイモの一種である里芋などで高い生産技術を持つ日本は、研究開発に大きな可能性を秘めています。これらのイモ類は、欧米では全く栽培・利用されていません。

アフリカの飢餓撲滅のために、日本は率先してイモ類の生産性改善に向けた支援を行う必要があると思います。

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