食と栄養の現場から考える~龍口知子さん : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

食と栄養の現場から考える~龍口知子さん

龍口さんインタビュー

「食」が満たされることで、より健康的な生活になります。
でも、健康は目的ではなく手段。
「なりたい自分」になり、よりよい明日を生きることができます

龍口知子(たつのくちともこ)さん
(株)タニタヘルスリンク 管理栄養士・健康運動指導士


食への関心から管理栄養士へ
父が糖尿病を患っていたこともあり、「食」に対して強い関心を持っていました。「食」は生まれて最初に口にするところから、最期の一口まで人の一生に関わっていくものです。生涯にわたって自分の好きな「食べること」に携われるということで、管理栄養士の道を選びました。
高齢者の栄養指導など病院や介護関連施設での勤務を経て、タニタヘルスリンクに入社して10年になります。2010年にレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』(大和書房刊)が話題になったときは連日取材が続き、年間のセミナーが100本を超える時期もありました。現在では、ホームページで情報発信や講演を行うほか、メタボ解消のための特定健康指導、自治体に向けた健康サポート業務に携わっています。健康は目的ではなく、あくまでも「どういう自分になりたいか」を実現させるためのツールです。タニタは“はかる”ことで自分自身を「見える化」させ、「なりたい自分になる」ことをサポートしています。

世界栄養報告セミナーで登壇
これまでの活動のなかで、特に印象に残っているのは、昨年4月に開催された「2016年世界栄養報告セミナー」(日本リザルツ、ワールド・ビジョン・ジャパン、栄養不良対策行動ネットワーク、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、国際母子栄養改善議員連盟共催)で活動発表の機会をいただけたことです。経営者や経営幹部などに向けて社員に対する健康リテラシー向上に関する話を中心にしました。国会議員や国際機関、NGO関係者の方など、命にかかわる栄養問題に携わっている大勢の人々に真剣に聞いていただくことができました。これまで日本国内で地道に栄養改善に取り組んできたことが、世界の栄養問題の解決にも通じているということが改めて感じられました。

「世界から肥満と飢餓をなくそう」
最近、持続可能な開発目標(SDGs)が話題になっています。これまでCSRの文脈で取り組んでいる企業もありましたが、持続的に取り組むためには、課題を解決でき、同時に収益も上げられるビジネスとして取り組む必要があると思っています。タニタでは体重をはかることから人々の健康に貢献しようとしており、体重を「食と生活の総合評価」ととらえています。ふだんの食事や生活態度が体重という数字になって表れるのです。増えすぎや減りすぎもよくありません。日本人は自分の体重や体脂肪率、血圧など詳細に把握していますが、ここまで自身のからだの数値を把握している国はほかにはありません。日本でのノウハウをもとに、世界中の国々の健康リテラシーを高めていくことに貢献できるかもしれません。
タニタでは海外にスタッフを派遣して活動する体制づくりはこれからですが、現在、企業として飢餓に対しても取り組んでいます。有料健康ポータルサイト「からだカルテ」の利用状況に応じたたまるポイントを、国連世界食糧計画(WFP)へ寄付する「肥満と飢餓をなくそうプロジェクト」や、WFP主催のウォーキングイベントへの参加などの取り組みを行っています。

HFWの自立できるような栄養改善の活動を評価
飢餓の解消のためには、食料援助だけではなく、自立支援の援助の両方を並行していく必要があると思っています。栄養・衛生に取り組んでいるNGOの方から話を聞く機会がありました。衛生面の教育や環境を整えるとともに、地域の人と一緒にごみを拾いながら、なぜ清掃が必要かを伝えると、次に訪問時には環境の改善がみられるということでした。同じように、緊急援助として食料を提供することは必要なことですが、栄養の大切さを伝え、自分たちで食料を得られるようになることは、重要なことだと考えるに至りました。飢餓に直面する人々を「かわいそうな人たち」と捉えるではなく、「食べる権利」が奪われていると考え、その権利の実現のために活動されているHFWの活動は素晴らしいと思います。単なる食料援助にとどまらず。その人たちの食が満たされることで健康的な生活を送れるようになり、良い社会をつくっていくことを支援するところに賛同しています。

龍口さん

長野県出身。「もし私が“最後の晩餐”として選ぶなら、おすしかな(笑)。好きなネタを選んで食べたいですね」と龍口さん

社内サイネージ

社内のサイネージで社員の食事や歩数を共有。他の人の目を意識するのでやる気が継続する

龍口家の夕食その1

龍口家の晩御飯その2

龍口家の夕食その3

龍口家の食事メニュー。数多くの素材を使用し、彩りも豊か。「毎食栄養バランスを気にしなくても、1日3食のなかでトータルとして必要な栄養が摂取できれば大丈夫ですよ」と龍口さん