特集

2011.03.01 Special Issue No.31

貧困を終わらせる。世界と私たちの約束
~あと5年。私たちにできること~2

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INDEX

MDGsと私たちの関係は? ~現在の進捗と今後の課題~

MDGsは各国代表が交わした約束ですが、破るとどうなるのでしょうか。何か罰があるのでしょうか。いえ、実は何もありません。これは、「目標」は努力することが大事だという理由だけでなく、そもそも、国と国が交わす条約などの約束には、罰則がないのです。もし私たち個人が法を犯せば、罰金や禁固刑などの裁きがあります。しかし、国際社会では、国に対する裁きがありません。あるとすれば、相手国への経済制裁や輸出禁止といった国と国の間での“仕返し”レベルです。あるいは、その条約に違反した個人や企業に対して、条約を約束した国の国内法で罰則があるだけです。

たとえば絶滅の恐れのある動植物の国際取引を禁止したワシントン条約では、約束した各国が国内の法律で個人や企業への罰則を定めていますが、条約そのものに罰則はありません。とすると、どうやって国際法が守られているかといえば、各国の努力によるのです。守らなければ秩序が乱れてしまう、他の国から信頼を失い外交上の損失がある、だから守ろう、というモラル意識や外交上のメリット・デメリットの上に成り立つもの。そのため、MDGsも、各国の強い意思がなければ達成されません。

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MDGsレビュー・サミットで、バングラデシュは目標4(乳幼児死亡率の削減)の達成状況が優秀との表彰を受けた。MDGsの進捗は国や分野ごとに大きく異なる


努力によって行方が決まる、MDGsの達成

では、MDGs達成の約束を守るため、どのような取り組みがなされているのでしょうか。

まず国連では、毎年『国連ミレニアム開発目標報告書』を出し、進捗と課題を広く知らせています。そして、MDGsが設定された際に、2015年までに5年ごとにサミットを開き、進捗確認と達成のために必要な話し合いが行われることが決められています。その取り決めにもとづき、2005年と2010年に、それぞれサミットが開催されました。

2010年のサミットでは、MDGsの中でも特に遅れているとされる目標4(子ども)と目標5(妊産婦)に議論が集中。パン・ギムン国連事務総長は女性と子どものためのグローバル戦略を発表しました。この戦略では、これまでに実証された効果的な政策や支援方法などを組み合わせて、必要な資金を出せば、2015年までに1500万人の子どもたちを救うことができるとしています。サミットで発表された戦略に各国、そして多くの企業、NGOが賛同し、今後、特に母子保健分野へ追加の資金や政策が必要であることが合意されました。しかし、約束されたことが本当に実施されなければ、救えるはずの子どもたちを救うことはできません。

こうした5年ごとのサミットがどのくらい実効力を伴うものになるのか、どのくらい具体的な努力が約束されるのかは、各機関や国に委ねられています。世界100ヵ国以上のNGOネットワーク「Global Call to Action Against Poverty(GCAP)」は2010年のサミットについて、「妊産婦の健康に焦点をあてるのはいいが、一番遅れているのはMDGs5ではなく、MDGs8(先進国の責任)であることを忘れてはならない。他のMDGsの進捗が芳しくない主因も、MDG8の遅れにある」と指摘しています。

実際に、地域別あるいは国別のMDGsの達成度は、資金が集まりやすい分野や効果的な取り組みが進む地域や国では達成が早まっています。 たとえば、ケニアではMDGsが大統領選挙の焦点の1つになった結果、選出後に小学校が無料化されて多くの子どもたちが学校に通えるようになりました。ケニアでの取り組みは、国内予算だけではなく、先進国からのODAも支えています。ところが、サハラ以南アフリカ地域全体を見てみると初等教育の普及率は1998/99年58%→2007/08年76%と(国連データ2010年)、決して楽観視できない状況があります。

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HFWが支援するベナンの母子保健センターで健診を受けるお母さんと赤ちゃん。適切なケアがあれば多くの命を守れる


日本の努力を妨げるのは、私たち?

また、政府開発援助(ODA)をたくさん拠出する先進国としない先進国がある、といったことが起きています。

では、日本の状況はどうでしょうか。先進国全体ではMDGs達成のため国内総所得(GNI)の0.7%をODAにあてることを長期目標としていますが、日本は2009年実績(暫定値)が0.18%で94億8010万ドル、先進国23ヵ国中21位と、目標に程遠い状態です。2010年9月のサミットでの、今後5年間で教育と保健分野に85億ドルという約束はこれまで教育や保健分野にあてられていた分を含まない新規の増額かどうか表明されておらず、仮に新規だったとしても0.7%には届きませんから、十分ではありません。しかし、日本の政治家が一番耳を傾けるのは有権者である国民。国内からMDGsを達成すべきという声が上がらなければ、MDGs達成やODA拠出の優先順位は下がります。

実は、日本でミレニアム開発目標あるいはMDGsという言葉を知っている人は3.7%しかいません((財)国際協力推進協会2010年)。私たちの認識の乏しさが、日本政府の努力を妨げているのかもしれません。

貧困をなくすためには、まずは私たち一人ひとりがMDGsの意義や達成に向けた現実を見据え、政治家任せにせず、自分の問題として捉える必要があるのではないでしょうか。

2010年時点のMDGs進捗

目標達成済み、または達成間近 現状が続けば2015年までに目標達成が見込まれる
現状のままでは2015年には目標達成不可 × 進展なし、または悪化 データが不十分
アフリカ アジア オセアニア 中南米・
カリブ海
独立国家共同体
(旧ソ連共和国/CIS)
目標 サハラ
以南
東南 西 欧州 アジア
目標1  とてつもない貧困と飢えをなくそう
貧困人口の割合の半減
×
生産的かつ適切な雇用
× × × ×
飢餓人口の割合の半減
× ×
目標2  みんなが小学校に通えるようにしよう
初等教育の完全普及
×
目標3  ジェンダーの平等を進めて女性の地位を向上させよう
初等教育における女性の就学率
×
女性賃金労働者の割合
国会における女性議員の割合
×
目標4  子どもの死亡率を減らそう
5歳未満死亡率2⁄3削減
目標5  女の人が健康な状態で妊娠し、子どもを産めるようにしよう
妊産婦死亡率妊産婦死亡率3⁄4削減
×
リプロダクティブ・ヘルスのサービスや
ケアを受けらる
目標6  HIV⁄エイズ、マラリア、その他の病気が広がるのを防ごう
HIV⁄エイスまん延防止
× ×
結核まん延防止
×
目標7  環境の持続可能性を確保しよう
森林破壊防止
× × × ×
安全な飲料水の得られない人口の割合の半減
×
衛生設備のない人口の割合の半減
× ×
スラム居住者の生活改善
× ×
目標8  世界の一員として、先進国「も」責任を果たそう
インターネット利用者

先進国のODA実績

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