特集

2011.09.01 Special Issue No.32

お産とお母さんたち ~開発途上国での出産とリスク~

いま、世界では医療サービスの不足などにより、毎日およそ1000人の女性が、妊娠や出産のために命を落としてしまっています。


妊娠や出産が原因で亡くなる女性は年間35万8000人

「この村には、出産のために命を落とした女性を知らない人はいません」。2010年8月に行われた、ベナン・べト村での母子保健センター完成式典で、村の住民を代表してあいさつした女性は冒頭でこう伝えました。

母子保健センターが村にできるまでは、一番近い保健医療施設は村から7~8kmも離れていて、自宅で出産する女性がほとんどでした。施設で出産しようとしても遠すぎてたどり着けず、道端で出産せざるを得ないこともあったといいます。医療設備がなく、適切な介助者の立ち会いもない状況では、分娩後の大量出血や帝王切開が必要な事態などに対応できません。安全なお産の環境がなければ、赤ちゃん、そしてお母さんの命も失われかねないのです。

ベト村に限らず、世界には妊娠や出産が原因で命を落としてしまう女性たちが大勢います。その数は年間35万8000人(2008年推定値、Trends in Maternal Mortality)と減ってきたものの、それまでは年間50万人を超えていました。

この状況を受け、2000年の国連ミレニアム宣言をもとにつくられた世界のリーダーたちの約束「ミレニアム開発目標(MDGs)」の8つの目標では、妊産婦死亡率を2015年までに1/4に減らすという「目標5」がかかげられました。ほかの目標のうち、貧困と飢餓の「目標1」が“半減する”、5歳未満児死亡率の「目標4」が“1/3に減らす”などとなっていることを考えると、もっとも意欲的な目標といえます。ところが、その達成率は他の目標よりも遅いのが現状です。

べト村で完成した保健センター。ここで出産した女性が、赤ちゃんの検診にも訪れている

数字で見る妊産婦の現状(1)
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先進国と開発途上国の格差でもっとも大きい妊産婦のリスク

そもそも、妊娠や出産にまつわるリスクは、最先端の医学をもってしてもゼロにすることはできません。ですが、貧困や飢餓、教育、環境などさまざまな問題のなかでも、先進国と開発途上国の間でもっとも格差が大きいのが、妊産婦の安全の問題だといわれています。女性が生涯のうちに妊娠や出産で命を落とすリスクは、先進国では出産4300回に1回なのに対して、開発途上国では120回に1回。極端な例でいえば、世界で一番リスクの低いギリシャで妊娠や出産に関連した病気で亡くなる可能性は、女性ひとりが3万1800回出産したとして1回、世界で一番リスクの高いアフガニスタンの女性の場合には、11回出産したら1回となっています。

数字で見る妊産婦の現状 ②
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