特集

2005.03.01 Special Issue No.7

Hungry is Angry 飢えは怒り~貧困が招く争い、争いが生む貧困~

米国同時多発テロから3年。 その後も、イラク、スペイン、インドネシア、ロシア北オセチア共和国…と世界各地でテロが発生、国家間や国内の紛争も続いています。
私たちは、争いを終わらせることができないのでしょうか?


なぜ争うの? “お腹が空いて気が立っている人は、話を聞こうとしない。”

人間は、食事をしないでブドウ糖が不足すると、脳内活動が緩慢になります。そこで、脳はブドウ糖を作るように指令を出します。その時に分泌されるのが、攻撃性ホルモンでもある“アドレナリン”です。お腹が空くとイライラするのはそのせいです。貧困地域で住民と接するHFW職員やボランティアもこう言います。「お腹が空いて気が立っている人は、話を聞こうとしない。Hungry is angry ― 飢えは怒りだ」。

そして、空腹による苛立ちが続く人々が、一方で豊かさを享受している人々を見たら、どんな気持ちになるでしょうか。日本史にも、飢饉の後には百姓一揆や打ちこわしなどが記録されています。長年、貧困に耐えた農民も、飢えによる死を前にして権力者や富裕層を襲ったのです。現在の紛争やテロリズムの背景にも、根深い貧困、貧富の格差の存在が指摘されています。国際社会もテロ抑制の1つの手段として、貧困の解消を掲げています。決して暴力が許されることはありませんが、テロに訴えるしかない状況が作り出され、容認されていることを、私たちは考えなければなりません。

さらに、貧困が生む争いの他にも、宗教や政治的思想の対立、土地や資源の所有、莫大な資金を動かす戦争ビジネスの存在など、いくつも争いの原因を挙げることができます。しかし、これらも際限ない欲望や他者への無理解といった“心の飢え”という点では、同じかもしれません。

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『おもちゃの兵隊人形で遊ぶスラム街の少年』(1988年9月ハイチ)


そして、争いが貧困を生み出す

ストックホルム国際平和研究所(スウェーデン議会が設立した機関)によれば、2003年の1年で1000名以上が死亡した紛争は19件、プロジェクト・プラウシェアーズ(カナダの平和・開発NGO)は、2003年に累計の死者数が1000名を超えた紛争が36件あったとしています。その他にも、複雑化し細分化された紛争・テロリズムが頻発しています。各国とも、軍備やテロ対策に莫大な予算が向けられ、その中で特に貧しい国では、医療費や教育の費用が削られ、子どもや女性をはじめ社会的立場の弱い人々が、一層困窮しています。

もちろん、直接戦闘に巻き込まれた人々は、さらに凄惨な体験を強いられます。例えば、突然兵士がやってきて、村を焼き、家族を殺し、暴力を振るわれた辛い経験。隣国への亡命や難民キャンプに入ることができても、ビニールシートや草木で作った狭い仮設住居で、いつ故郷に帰れるか不安な中、不自由な日々を過ごさなければなりません。現在、戦闘のために住む家を追われた難民・避難民は1710万人(国連難民高等弁務事務所UNHCR、2004年 1月)といわれています。

ようやく、帰還できたとしても、破壊された建物、残された地雷、荒れた田畑、負傷による障害など、過酷な現実は続きます。そして、悲劇を体験した心の傷は一生消えることはないのです。

参考:『わたしたちの難民問題』(国連難民高等弁務事務所UNHCR)

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『スラム街に住む母と子』(1996年2月ハイチ)