私たちが今日も「食べる」理由 ~すべての人が持つ「食料への権利」~ : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

特集

2009.02.23 Special Issue No.22

私たちが今日も「食べる」理由 ~すべての人が持つ「食料への権利」~

食料価格の高騰によって、世界が食料危機に襲われています。問題解決に向けた取り組みを進めるにあたって忘れてはいけないのが、支援の対象となる1人ひとりが、何を、どのように食べるべきかを考えること。あらためて、私たちが「食べる」理由を見つめなおすとともに、飢餓問題解決に向けた取り組みのあり方を考えます。


私たちのからだのしくみ

人間の体は約37兆個の細胞から成り立っています。その細胞は1秒約1000万個ずつが死に、新しい細胞と生まれ変わります。酸素と栄養素を使って営まれるこの活動は新陳代謝と呼ばれ、人間の生命を支える基本となるものです。新陳代謝が停止したときに、私たちは死を迎えます。

また、体には、心臓や肺、胃腸、骨などいろいろな器官があります。心臓はポンプのように血液を体内に行き渡らせる、肺は呼吸によって吸い込んだ酸素を体中に送るなど、それぞれの器官は異なる役割を持ちます。私たちが起きているときも寝ているときも休まずに働くこれら器官の原動力は、さまざまな栄養素から作られるエネルギーです。このように、私たちが生きるために必要な活動には、栄養素が欠かせません。


食べたい気持ちは、生きることへの欲求

ところで、生きるために栄養素を必要とするのは人間だけではなく、動物や植物も変わりありません。植物の場合は、太陽の光と二酸化炭素、水、土の中の物質を原料として、でんぷんや糖を自ら生産し、必要な栄養素を確保することができます。しかし、人間や動物は自らの体内で栄養素を生み出すことができません。そこで、生命を維持するエネルギーを確保するためには、植物や動物を「食べる」ことで、自分以外の個体が持つ栄養素を体内に取り込む必要があります。
万が一、栄養素が不足することのないように、私たちの体内には見張り役が存在します。脳の中にある飢餓中枢と呼ばれる部分です。飢餓中枢は、栄養素が不足してきたなと感じると「食べる準備を開始!」という命令を体内に伝えます。すると、私たちは「食べたい」と感じる。これが食欲です。この時、脳からはどんな栄養素が足りないのかが同時に伝えられます。スポーツで疲れたときに甘いものが食べたくなったり、汗をかくとのどが渇くのはこのためです。


動物とは大きく異なる、人間の食料確保

生きるためのエネルギーを食べ物から得ている私たちにとって、食料確保は最も重要なテーマの1つです。もともとは、人間も動物と同じように、木の実や果物を採集したり、狩りをしたりして、食料を得ていました。
しかし、道具、言葉、火の3つを手に入れたことによって、人間の食料確保は大きく発展しました。まず、道具を使い、仲間どうしで言葉をかけあいながら獲物を追い込むことで、狩りの質が向上しました。また、食べ物を加熱するようになったことで、生のままでは食べられないものを口にできるようになったり、食べ物をより長期間保存できるようになりました。これら新しい知識は、言葉によって、世代を超えて蓄積されていきます。


定住生活によって食料は生産するものに

やがて、私たちは大地を耕したり、身近な動物を家畜として育てる術を学び、集団で一ヵ所に留まって生活するようになります。食べ物を追い求めて移動するこれまでの生活とは異なる、定住生活。収穫した食べ物をいかにして活用するかが、定住生活成功の鍵です。そのため、生産増加はもちろんのこと、貯蔵や加工技術の発展にも力が注がれました。また、山間部と沿岸部のように、異なる特性を持つ地域の間で食べ物の物々交換や売買が始まると、鮮度を保って運搬するために流通の技術が発展していきます。


衰えることのない食への探究心

現在、冷蔵、冷凍、フリーズドライや真空パックなど、多くの技術を開発した私たちは、飽食の時代を生きています。自宅で画面上のボタンを押せば世界中から生鮮食品を取り寄せることができますし、お湯をかけたり温めるだけで、簡単な食事が完成。「食べたい」という欲求をすぐに満たすことができます。そればかりか、栄養素を抽出した錠剤や飲料を活用して、効率よく体に必要な栄養素だけを摂ることだってできます。私たちは、必要な食料を継続的に確保するための知識や技術をすでに十分持っています。
それなのに、私たちが持つ食へのこだわりや探究心が衰えることはありません。生命の維持だけでは説明することのできない何かが、私たちを食べたいという想いに駆り立てています。

海外・活動国インタビュー

「あなたはどうして食べるのですか?」
バングラデシュ、ウガンダで、スタッフや事業地の住民にインタビュー。「食べる」理由をつづってもらいました。

バングラデシュ

22_01

持続的に共存するために食べる

22_02

精神的、肉体的成長のために食べる

22_03

家族を幸せにするために食べる

ウガンダ

22_04

生きるために食べる

22_05

生命維持のために食べる

22_06

食べることは、地球上のすべての人が生き抜くために必要な活動

22_07

健康のために食べる

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