ご報告
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ウガンダ支部は、2000年のハンガー・フリー・ワールド(HFW)設立当時から支部として活動を続けています。
ウガンダ支部の会計体制については、他の3支部と同様に在外拠点として各支部が独自の会計帳簿を持っている独立会計体制をとっており、権限範囲に基づき支部において経費承認や記帳処理が行われています。ただし、日本の補助金事業に対する報告については本部で取りまとめるなど、本部でも必要に応じた措置を講じています。
また、本部における決算報告書は、2016年以前は各支部への送金額を支部運営費又は支部事業費に計上していましたが、より信頼性の高い会計体制とするために、2017年より各支部を独立単位として位置付け、本部及び各支部の決算を連結して作成しています。
ウガンダ支部は、首都カンパラの郊外の4つの地域で活動をしています。HFWの掲げる住民の自立に向けて、協同組合化という戦略をとり、住民の能力を向上させるための支援を続けてきました。HFWが2016年から2020年末までの中期計画で掲げている「(支部が活動する全活動地の中の)1つ以上の活動地で「食料への権利」が実現できるめどがたっている(=住民が自立し、HFWは撤退)。
また、他の活動地も実現に近づいている」という地域開発の目標に対して、ウガンダ支部では、独自に「少なくても2つの地域から撤退」という目標を定めています。
中期計画立案時は、ウガンダ支部は4つの活動地すべてから撤退し、2021年以降はその成果をもって、より支援の必要な地域で開発事業を開始することを希望していました。しかし、住民の収入創出につながる大規模な事業が実施できる、という条件付きであったため、本部との検討を重ね、より現実的に「少なくても2つの地域」とした経緯があります。
その後、2017年10月から外務省の日本NGO連携無償資金協力の補助金を得て、希望していた大規模な事業(以下、補助金事業)を開始することができました。現在、補助金事業は、本件の影響で計画を変更しつつも、協同組合がよりよく自主運営されるための仕上げが進んでおり、自己資金による事業の住民への移譲も順調なため、2020年末までに4つの地域から撤退できる可能性があります。
ウガンダ支部においては、事業が軌道にのる一方で、運営面の問題があらわになってきました。
HFWは、2021年から飢餓の「根本的な解決」に結び付く活動が始められるよう、2016年から2020年末までの中期計画は、4つの活動と組織運営において、これまでの総仕上げと次のステップへの準備と位置づけています。
組織運営の強化のなかでも「支部の運営体制の強化」に高い優先順位を設定し、支部事務局長は活動の現場から離れてマネジメントに専念する方針となりました。本部は、4支部の事務局長に対して、2017年に研修を実施するなどして、マネジメント能力向上を強く求めました。
加えて、補助金事業が実施されるウガンダ支部では、その準備や実施において、期日厳守やデータの正確性、大規模な事業をマネジメントする能力がより高く期待されます。そのため、本部は直接的な業務サポートを行うとともに、前支部事務局長に業務レベルの改善も強く求めてきました。
しかし、2017年から前支部事務局長の業務不履行や指示への不服従が目立つようになりました。
それらは本部理事会(以下、理事会)の議題にもなり、いくつかの対策や処分を経て、2018年11月には、2019年2月末をもって雇用止めとする旨を通知するまでに至りました。前支部事務局長は通知を不服として支部職員を巻き込んで争議へと発展させましたが、2018年12月に支部職員から、前支部事務局長と他の職員によるパワーハラスメントを受けているという内部通報があり、理事会は懲戒解雇を決定しました。
解雇と新支部事務局長の採用、及び激化と長期化が懸念される争議の収束を目的として、2019年1月22日、本部事務局長をウガンダ支部に派遣しました。
また、本部においては、補助金事業の書類を日本国内で精査するなかで、レンタカー代が不自然に多いこともわかってきました。これらのことから会計不正の疑いが強まり、現地でレンタカー業者を調査した結果、2019年2月8日、領収書の偽造が発見されました。
これを受け、派遣中の本部事務局長の任に会計調査を追加いたしました。既存契約とは別の監査法人と新たに契約し、2019年2月8日に採用した新支部事務局長とともに、2月26日~3月5日に第一次不正調査を実施しました。領収書発行元の確認、資機材等の購入価格の妥当性と納品実態の確認、支部職員へのヒアリングを行いました。
その結果、レンタカー以外にも、偽造の疑いが強い燃料費の領収書が発見されました。会計手続き上、前支部事務局長及び前出納責任者と前事業会計責任者の関与が考えられます。前出納責任者と前事業会計責任者は前支部事務局長の親族であることも明らかになっています。
第一次調査では、前支部事務局長と支部職員による調査への妨害や非協力により、不正の期間と事業を絞ることにとどまり、それ以外の不正、金額の規模、プロセスの解明及び原因の追究には至りませんでした。
HFWは、第一次調査の結果を受けて検討を始め、2019年4月13日の理事会にて、外部の第三者調査委員会による調査の継続、調査の範囲と精度について決定しました。調査対象期間は、補助金事業については、開始月である2017年10月以降のすべてとし、自己資金事業については、事業規模が補助金事業に比例して小さいこともあり、2018年1月以降を対象としました。
前支部事務局長を採用した2000年から不正がはじめられた可能性も考えられます。しかし、前支部事務局長が容疑を否認しており、不正金額の規模や動機について証言が得られないために、不正がはじめられた時期が不明な状況です。そのため、次の理由から期間を限定する判断をいたしました。
1)調査費用と期間が膨大となること
2)法的な保管期間を過ぎていて過去の書類がそろわないこと
3)損害賠償請求を行うには、調査費用を考えれば大規模な資金を扱い始めた時期からの不正額でも十分であること
4)要因分析と適正化施策立案のために必要な情報である、不正の手口は以前から行われているにしても大きくは変わっていないと考えられること
5月13日、本部では外部の弁護士と公認会計士で構成される特別調査委員会を設置いたしました。特別調査委員会は、フォレンジック調査(注釈1)など高度な調査が可能な現地の会計士に調査を依頼し、レポートの提出を受けました。特別調査委員会と現地の会計士は、HFWと取り引きをしたことはなく、利害関係もなく、適切な独立性を有しています。
注釈1:フォレンジックは、法廷、科学捜査を意味する用語。特にパソコンなどのデジタル機器に残る、あるいは復元した情報を収集、解析して法的な証拠性を明らかにする調査手法です。
現地の会計士からは、チームを編成し、以下のような調査を行ったという報告を受けています。なお、車両の走行記録やいくつかの契約書など、支部事務所にあるべきはずの証拠書類が存在せず調べることができなかったこと、前支部事務局長、取引業者数社のインタビューは拒否され、実施できなかったことも報告されています。
フォレンジック調査の内容
● 取引業者の存在を確認し、請求書及び領収書がそれらの業者により発行されたか確認する。
● 領収書が取引業者から発行されたことが確認できた場合、その価格が市場価格と比較して公正であるかを確認する。
● 目視検証と住民等へのインタビューを行い、供給された品物が実際に納入されているかを確認する。
● 実際に発生した費用を確認した場合、「全額」「費用が実際に発生した証拠」の情報とともに各アイテムをリストアップする。
■調査数:インタビュー数 39名(取引業者、活動地域の代表者など)
取引業者数 121の業者と個人 ※別に適正価格調査のため類似業者の調査も実施
■分析した書類、記録、証拠:契約書、請求書及び納品明細書、物品の現物、見積書、予算及び財務情報
特別調査委員会からは、現在の支部事務局長や職員、事業関係者、並びに本部の役職員、13名を対象としたヒアリングを行い、HFWの組織内の各種データを調査したという報告を受けています。HFWは、特別調査委員会が必要とする組織内の情報を迅速に調査できるよう全アクセス権限の付与をして調査に協力しました。
そして、特別調査委員会は、フォレンジック調査の結果、HFWがすでに行っていた調査結果を精査した上で、事実関係の認定、証拠不在分の流用金額を算定して報告書を作成しました。HFWは2019年9月1日に特別調査委員会から報告書を受理しました。
特別調査委員会により、調査対象期間において、HFWウガンダ支部の前支部事務局長は、建築費の見積もり偽造、消耗品費、燃料費、通信費の領収書偽造及び水増し請求などの手段により、適正な範囲を超える経費を本部に請求していたと認定されました。
●左が偽造で右が正規の領収書
●紛れて使われた安い建材
不適切な支出の金額は、約1722万2183円~約2132万3807円。内訳は、HFWの自己資金による事業からが約498万8085円、補助金事業の資金からが約1223万4098円~約1633万5722円です。
補助金事業の不正額に幅があるのは、不正に関わった職員の人件費、移動費通信費について、適正な活動も行われているため全額が不正とはいえませんが、どこからが適正であるかを立証できないという理由からすべて含むという厳格な判断を下した結果です。立証できない額も加算して、合計で約1633万5722円を外務省に返納します。
本件とは別に、2019年8月末までに同様の問題がないか本部職員による他支部での内部会計監査、取引業者への訪問による所在確認、支部職員への内部統制についてのアンケート調査を実施しました。その結果、架空の取引業者の存在は確認されず、親族採用を含めた支部事務所の私物化も認められず、不正会計の証拠も発見されませんでした。
現在、不正の動機と資金の使途は明らかになっていません。一般的に不正の動機は、「個人の金銭的問題」と「組織への恨み」とされていますが、本人の証言がなく「金銭的問題」を調べても、確定することは困難です。第三者でも確認できる土地事務所の登記簿上では、前支部事務局長が所有していた土地の一つが抵当に入っている状況がわかります。しかし、その事実と本件のつながりは不明です。
そこで、HFWでは組織的な要因について、特別調査委員会の報告に自省を加えて分析を行い、適正化施策を立案いたしました。
【要因分析】
要因1 不正の機会
偽造の想定/価格の精査/会計の精度
内部統制の乱れ(前支部事務局長への権限の集中)
要因2 不正の正当化
組織風土の甘さ
(不正防止規程の読み合わせの不実施、コスト意識への甘さ、フォローアップの甘い内部監査)
要因3 不正の動機
厳しくなる指導から解雇への過程で、組織への恨みをいだいた可能性
活動現場の前線に立てなくなったことを不満に思った可能性
本部とのコミュニケーションが不全で、不満が高まっていった可能性
要因を生み出した組織構造
本部事務局長への権限と業務の集中、業務執行への適切な評価の不履行
本部事務局への監督機能の不全
事業の内容と予算の精査へのリソース投入不足
【適正化施策】
(1)領収書と見積書の信憑性の確認強化
(2)取引先の確認強化
(3)内部監査体制の構築、本部の人材の長期派遣
(4)外部会計監査人の活用
(5)実効性のある内部通報制度の運用
(6)通報前にも相談できる仕組みづくり
(7)資金を大切に使う組織風土の強化
(8)予実管理の向上
(9)採用プロセスの透明化
(10)支部事務局長の任期制の実効性のある運用
(11)採用、人事考課、人材育成の改善
(12)理事長及び本部事務局長の交代
(13)本部事務局長の権限分散
(14)役員の体制強化
(15)認定NPO法人格の取得
(16)職員が不満を抱かない組織運営(人権・労働慣行などSRへの取り組み計画の確実な実行)
●前支部事務局長:HFWは、本部と直接雇用関係のある前支部事務局長に対し、争議扇動を激化させていること、2名の元職員に対しパワーハラスメントを行ったこと、調査を妨害していること及び領収書偽造への関与の疑いが強いことを理由に、特別調査委員会や裁判などの外部による事実関係の認定を受ける前ではありましたが、すでに2019年2月8日に解雇しています(前支部事務局長が労働局に調停を申し立て、懲罰委員会を経たため正式解雇日は2月28日付)。
不正流用金の賠償請求を、前支部事務局長に対し実行します。共謀者の存在は確実ではありますが、物的証拠による立証が困難なため、会計責任者であった前支部事務局長のみへの請求とします。
なお、法的措置に与える影響から、現段階での解雇者の実名公開を控えてきました。しかし、HFWの活動への影響力を最小化するために、不正流用には触れることなくHFWと雇用関係にない事実のみを添えて、実名をウガンダ国内において公開することとします。
●前出納責任者と前事業会計責任者:前支部事務局長と同じ理由で、現地の労働法や懲罰委員会にのっとり停職処分後に、前出納責任者は4月3日付、前事業会計責任者は6月10日付で、現支部事務局長により解雇されました。
●その他の職員:業務妨害行為により3名の職員と1名のパートタイマーが停職処分の後、2019年3月7日付で現支部事務局長に解雇されています。
●本部事務局長:引責辞任が表明され、2019年9月27日付で理事の役職を解任しました。9月30日付で本部事務局長の役職を解任し、降格としました。
支部事務局長を中心とした体制の下で、ウガンダで実施していた地域開発事業は継続中です。補助金事業の計画の一部は、関係者と慎重に協議を進めながら変更及び縮小しますが、住民自身が生活を継続的に改善させる「能力」が身に着くという目標を達成させ、2020年度にこの事業が完了する予定に変更はありません。
自己資金の地域開発事業は、住民への移譲に向けた計画を進め、順調にいけば今年度中、長くかかっても来年度中に移譲が完了する見通しです。アドボカシー、啓発活動、青少年育成については支部の活動担当者も代わり、一時停止をしていましたが、現在活動を再開する準備をしています。
支援対象地域には、2月に本部事務局長、現支部事務局長、支部活動担当及び4月と8月には本部活動担当が訪問し、複数回にわたり住民に対して説明の機会を持ちました。住民は事業の継続を求めています。
なお、ウガンダ支部で新しく採用した職員は、公募による適切な審査を経ています。2019年10月現在、新旧の支部事務局長と親戚関係にある職員はいません。
お便りやホームページでの情報の公開などを通じて、本件について寄付者及び関係者のみなさまにご説明させていただきます。そして、お寄せいただいたご意見・ご質問・ご寄付引き落としの停止手続きなどに誠意を持って対応させていただきます。
注釈2:1)本部役職員、支部事務局長の免職処分にあたる不祥事 、2)10万円以上の資金不正流用 、3)社会的に多大な影響を及ぼす不祥事のいずれかに該当する案件の公開を規定しています(第2条 情報の範囲)。
■特別調査委員会の調査報告書 PDF26ページ(1.5MB)
HFWは、2019年9月1日に、以下の委員により構成されてた特別調査委員会より、「調査報告書」を受領しました。
委員長 大野 薫(大野薫法律事務所 弁護士)
委員 駒田和也(駒田和也公認会計士事務所 公認会計士)
両者ともに、日本弁護士連合会による「企業など不祥事における第三者委員会ガイドライン」(平成22年7月15日公表、同年12月17日改訂)に準拠して選任されており、HFWとは利害関係を有していません。
ご意見・ご質問は、 メール:info@hungerfree.net、電話:03-3261-4700
国内部門マネージャー宛までお願いいたします。