ロックダウンを乗り越え、女性たちはさらに意欲的に。貯金や家庭菜園に取り組みながら家族の「食」を支えています : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

活動レポート バングラデシュ

2021.08.31 バングラデシュ

ロックダウンを乗り越え、女性たちはさらに意欲的に。貯金や家庭菜園に取り組みながら家族の「食」を支えています

 

ラベヤさんの家庭菜園にはレモンが実った

ハンガー・フリー・ワールド(HFW)は、2019年からぜい弱な立場にある女性758名(2021年6月現在)を対象とした、栄養改善事業に取り組んでいます。

バングラデシュでは、2020年のコロナ禍におけるロックダウンにより多くの人が失業し、女性たちやその家族も深刻な食料不安に陥りました。命の危機は、緊急食料支援により回避することができました。2021年にもロックダウンがありましたが、前年よりも柔軟な行動制限であり、HFWの活動地では住民もロックダウンでの生活の術を身につけ、深刻な影響は見られませんでした。

このような中、HFWは公的支援に女性たちをつなぐ活動と食料と収入を増やす取り組みを続け、女性たちの生活は安定を取り戻しつつあります。緊急食料支援から1年、コロナ禍前にも増して事業の推進役(HFWが育成した地域住民)と事業対象の女性たちは家庭菜園や貯蓄に意欲的に取り組むようになり、自身とその家族の「食」を支えています。

1.公的支援と対象者をつなぐアドボカシー活動

本来、HFWの支援対象者は、最も公的支援を必要とする人々ですが、受給の枠組みから外れていました。昨年の緊急食料支援前にHFWが行った行政への働きかけでは80名しか受給を実現できませんでした。その後も働きかけを継続した結果、多くの対象者が受給できるようになりました。

●内容

・HFWが行政と協議し、行政の担当者にHFWによる支援の状況を視察してもらう
・対象者との定期ミーティングに行政の担当者を招待し、公的支援制度について説明してもらう
・事業の推進役が、担当する対象者の状況をリスト化し、行政機関に提出・交渉

●成果

・カリガンジ郡で対象者376名中200名、ボダ郡で対象者382名中260名が、米や現金などの公的支援を受けられるようになっている

 

2.食料と収入をふやす活動

事業の推進役が、担当する対象者にHFWから学んだ知識を伝える定期ミーティングと、実践までをフォローする家庭訪問を月2回ずつ実施しています。コロナ禍は続いていますが、ミーティングは、学べるだけでなく連帯や楽しみが得られる貴重な場であると、対象者たちが継続を希望していました。感染症対策をとり、これまで新型コロナウイルス感染症の感染者を出していません。
こうして活動を続けた結果、食料が手に入りやすくなっているほか、定期的な収入にも結びついています。どれも小さな一歩ですが、対象女性にとっては人生を変える努力であり、変化です。

●内容

【ミーティング】
・養鶏、家庭菜園、たい肥作り、牛の飼育、手織物などの知識を伝える
・グループでの貯蓄に参加して、最低でも月約13円を目標に貯蓄することを促す(10タカ、1タカ=約1.30円)

【家庭訪問】
・学んだことを実践できているかの確認
・対象者の家族が活動について理解し、女性に協力するよう対話

●活動の成果:

・98%の対象者が庭や裏庭、フェンスや街路樹などを活用して、小さくても家庭菜園を始めている
・対象者の多くが鶏や鴨を飼育し、互いに売買するようになっている
・地域の協同組合や豊かな農家から牛をリースして飼育し始める女性たちもいる
・食料へのアクセスが改善されてきているほか、定期的な収入にも結びついている
・収入が増えたことで、グループでの貯蓄において目標の2倍以上を貯蓄できるようになっている
・女性たちは知識を得て自信をつけ、また、家族も協力するようになるなど、家庭内での女性の立場も向上している

多様な野菜を畑から収穫できた

グループで行っている貯金についてのミーティング

グループで行う貯金の出納帳に現金の出し入れを記録する

事業概要:女性のエンパワメントを通した食料安全保障、緊急食料支援

期間:2019年1月〜2021年8月現在継続中 対象地域:ボダ郡、カリガンジ郡

普段の栄養改善事業でも、緊急食料支援でも活躍しているのが、対象者と同じ村に住み、HFWの研修を受けた“事業の推進役”です。バングラデシュ支部には現在54名おり、それぞれが栄養改善事業の対象者10~18名を担当しています。
2020年のロックダウン時には国内の移動が制限されたため、HFWの職員が対象者の置かれた窮状を直接確認することができませんでした。そのため事業の推進役が対象者の状況を確認、HFWバングラデシュの職員に電話で報告し、連絡を取り合いながら緊急食料支援と感染防止の啓発活動、そして評価活動を実施しました。事業の推進役は対象者とHFWの橋渡し役です。


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