先輩お母さんが調理のデモンストレーションを行う
2017年に開始した3歳未満児155名(開始時は156名)とその家族を対象にした栄養改善事業では、2021年3月現在で155名中126名(81%)の対象児が栄養不良から回復しました。現在は感染症対策のために様々な工夫をしながら、まだ回復に至っていない29名の子どもたちに焦点を当てて栄養改善に取り組んでいます。
これまでハンガー・フリー・ワールド(HFW)では、母親が家庭で子どもの栄養状態や衛生状態を改善できるよう、栄養バランスの取れた食事や食品衛生に関するセミナーを開催してきました。また、父親に対して収入管理や栄養の重要性を伝え、食費に家計を割くことへの理解を促進するなど、知識を提供することで、行動変容を促してきました。
対象家庭の多くが農家であるため、栄養価の高い地元の作物などを栽培する技術を伝えたことで、各家庭でも栄養豊富な食材を食べられるようになりました。事業の対象となっていた栄養不良児のうち81%が回復した背景にはこのような取り組みがあります。
ベナンでは以前から続く景気後退にコロナ禍が重なり、人々の購買力は大きく低下しています。さらに日常的な食料の価格が高騰しており、トウモロコシ、大豆、ピーナッツ、食用油などが以前と比べて1.5倍以上の値段になるなど、家計を逼迫しています。
HFWでは、以前から家庭菜園の必要性を伝え推奨してきましたが、2019年9月時点で家庭菜園に取り組む対象者の割合は44%程度でした。しかし、2021年3月には75.7%に上昇しています。経済的理由でバランスの取れた食事が取れないという声もありますが、購入できないなら、自ら栽培し家族の食と栄養を守ろうと行動を起こす人が増えているということです。
昨年3月以降は、感染症対策のため、農業研修の参加者は小さなグループに分けて研修を実施しています。また、子どもや母親が対象の活動でも、調理の際や会場に入る前には手洗いを行い、セミナー中も母親はマスクを着用するなど、徹底して感染症対策に取り組みながら、活動を継続しています。
栄養価の高い作物の苗木を配布した
種や苗を配布した後も、農作業の進捗状況などを確認しアドバイスしている
会場に入る前には手洗いを行う。この習慣を通して参加者は手洗いの重要性を実感していった
Message from Benin
新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた頃、対象児のお母さんたちはこのウイルスは西洋人にしか感染しないと思い込んでいました。しかし、活動の中で辛抱強く感染症対策の必要性を伝えたことで、最終的には感染予防に取り組んでくれるようになりました。活動への参加は、感染症対策の重要性を学ぶ貴重な機会になりました。
ガンデ・ジゼルさん(アゴンドタン村の栄養改善事業に協力している先輩お母さん)