栄養改善事業の自主運営を見据え、住民たちの体制や役割分担を協議しました : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

活動レポート べナン

2022.06.24 べナン

栄養改善事業の自主運営を見据え、住民たちの体制や役割分担を協議しました

       

HFWと「地域のアクター」、それぞれが担う役割について議論した

現在ベナンのゼ郡でHFWが行っている、栄養不良児を対象とした「栄養改善事業」は、2022年から新しい段階に進みます。
これまでは、栄養不良の子どもと家庭に対してHFWが直接支援してきました。対象となった子どもたちの多くは危機を脱しましたが、本来の狙いは地域が自立し、支援の輪を大きく広げていくことです。そのために、支援事業はこれまでサポートしてきた住民で組織した「地域のアクター」が担い、HFWはこれまでの経験を活かし、その育成を含めた後方支援に専念することになります。

2022年1月、事業モニタリング委員会、地域委員会、事業の対象農家、先輩お母さん(元支援対象者)、ユース・エンディング・ハンガー(YEH)などで構成された地域のアクターを集めた会議が、3回にわたって開催されました。
会議の目的は、HFWがこの地での活動を完了しても、栄養改善の取り組みが持続できる仕組みを作り、実行できる体制を構築すること。3回の会議の中で、地域のアクターからの提案と検討が繰り返され、HFWとしては、支援を完了するまでに達成すべき目標を3点提示しました。

・地域の人々が恒久的に栄養価の高い食材にアクセスできている。
・支援対象の家庭で栄養バランスのよい食事を毎日摂れている。
・持続可能な事業、活動によって地域のシステムが機能している。

このような3つの目標に対応して、地域のアクターを中心に3つのグループが作られ、それらをモニタリング委員会が監督しながら事業を進めることで合意しました。
各グループの主な役割は以下の通りです。

■栄養価の高い地元の農作物グループ
・地域で栄養価の高い農作物栽培を続けるために、農家間の連携を図る
・YEHと若い農家に栄養価の高い農作物を栽培するよう奨励する
・啓発ファシリテーター、農家、菜園グループの関係者などによる会議を定期開催する
■栄養バランスのよい食生活グループ
・栄養価の高い地元の農作物を各家庭が日々の食生活に取り入れているか調査する
・新しいレシピを紹介するHFW主催の料理教室に、若い男女が参加するよう促す
・栄養価の高い農作物の地産地消に地域のリーダーを巻き込む
■意識向上とアドボカシーグループ
・劇場やラジオで、栄養価の高い農作物の栽培、小規模な畜産の意識を高める
・劇場やラジオで、栄養バランスの取れた食事を啓発する
・恒久的に栄養改善が進む仕組みを作るため、地域のリーダーと住民の意識向上を行う

「今後の大きな目標は、HFWの支援完了後も栄養改善事業が、地域アクターたちがこの体制を理解し、オーナーシップを持つことを通して、きちんと持続可能なシステムとして機能していくことです。そして、私たちはその目標の達成に挑んでいきます」(ダニヌウ・クレマン/HFWベナン プログラムオフィサー)
HFWの栄養改善事業では、地域のアクターがHFWの支援を受けずとも栄養改善の取り組みを継続できるよう、能力強化を進めていきます。

地方自治体担当者と住民主導で進めていく事業体制への協力と支援について協議

地域全体で栄養価の高い地場農産物の「地産地消」を目指す

先輩お母さんなどが中心となり、家庭での栄養バランスの良い食生活を推進していく

HFWベナンには多くのセッションを提供してもらい、感謝しています。HFWがここでの支援を完了しても、地域の未来は住民の手で切り開いていくのだということを理解できました。私たち地域のアクターは、受け取った知識すべてを活用して、事業を継続していきます。私は、現在構築しているシステムは、適切だと思います。なぜなら、私たち地域のアクターを力づけ、さらに地域の目指す成果を得られると思うからです。

ペマグバ・マティアス(モニタリング委員会 会長)

事業を持続可能にするための仕組みを考える機会に、さまざまな事業の受益者として私たちを含んで話し合ったことは、とても良い方向性だと思います。今後も、私の村では栄養価の高い地元の農作物を育てる取り組みを続けていきます。

アグンジ・バーナベ(村のコミュニティリーダー、農家)

2022年に海外出張が再開され、HFWベナンのスタッフや「地域のアクター」のみなさんに直接会うことができました。地域の子どもの栄養状態の改善や維持、食料安全保障のために活動されている地域のアクター。その活気と、その活動を支える現地スタッフの熱意に触れ、私もあらためて「さあ、がんばろう!」という気持ちになりました。

寺尾美菜子(海外事業担当)

べナンの最新レポート