連続公開セミナーで、「誰一人取り残さない」地域づくりの事例を学びました : 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

活動レポート 日本

2016.12.27 日本

連続公開セミナーで、「誰一人取り残さない」地域づくりの事例を学びました

写真右が猪瀬さん。15人の参加者と学びあった

12月9日に明治学院大学で、「食べものの危機を考える」連続公開セミナー2016年度第1回を開催しました(共催:アフリカ日本協議会、日本国際ボランティアセンター、オックスファム・ジャパン、明治学院大学国際平和研究所、HFW)。セミナーは、NGOが提言の質を高めるために「食べもの」につながる専門家を招き、一般の人々に公開しながら最新の情報を収集するもので、2008年から開催しています。

今回は、日本で以前から障がい者とともに農業に携わっている見沼田んぼ福祉園の猪瀬浩平さんを講師として招きました。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、「誰一人取り残さない」と、社会的に弱い立場にいる人々もともに目標の実現に向けて歩むことを誓っています。見沼田んぼ福祉園は、耕作放棄地で不法投棄も絶えなかった地域を、多様な人々とともに環境保全型の農地として復活させており、その取り組みについてうかがいました。

見沼田んぼ福祉園は、埼玉県川口市の北東部にある広大な見沼たんぼの中心部に位置し、「循環」と「持続」を基本姿勢としたたい肥づくりや無農薬での農業で、地域の自然の回復に貢献しています。そこでは多くの障がい者が農園で働いていますが、障がい者のための施設としてではなく、「誰もがともに」自然とふれあい、農業を楽しみ、人との関係を深めていく場としてスタートした、と猪瀬さんは言います。その背景には、以前は大家族と伝統農業のなかで多様な役割を担っていた障がい者が、農業の近代化と核家族化によって役割を失い、排除され支援される対象の“障がい者”になったことがあると指摘。見沼田んぼ福祉園では、障害のある人もない人も、高齢者も若者も子どもも、さまざまな約200人が自分に担える役割を果たすなかで、いきいきと農業に従事し、お互いに交流を深め、とても居心地のいい場所になっています。

開発途上国では障がい者は弱い立場に置かれがちですが、アフリカでは障害があっても農業に携わり役割を果たしていることが報告されています。すべての人々が、ともにいきいきと生活できるような地域を作るために、どういう視点が必要か、大きな学びを得た回でした。

次回は、世界の食料支援の課題を明らかにするFAOなどが発信するレポートに触れながら、情報の活用法について学びます。

 

 

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