中期計画の評価のフローチャート。活動国に出張できないため、オリエンテーションを含めた全てをリモートで行っている
ハンガー・フリー・ワールド(HFW)ではみなさまからお預かりしている寄付金をしっかりと社会的インパクトにつなげていけるよう、事業評価を重視しています。「何をやったか」ではなく「どんな変化を起こせているのか」で測り、報告するよう心がけています。2021年は、2016年から2020年まで取り組んできた中期目標の評価にも取り組んでいます。
中期目標を評価する際に焦点となるのが、事業の移譲です。
バングラデシュ、ベナン、ブルキナファソ、ウガンダ4ヵ国8地域のうち一つ以上で、住民たちの「食料への権利」が実現できる目処が立っている。また、残りの地域も実現に近づいている。(中期目標(2016~2020)より)
HFWは、これまでも活動地域の自立を目指して活動してきていますが、前々回の中長期目標(2006年〜2015年)までは地道に地域開発を続けてきました。そして、前回の中期目標(2016年〜2020年)でいよいよ住民の能力強化や啓発、行政へのアドボカシーに力を入れ、具体的に地域の自立に向けた目標を掲げることができました。実際、いくつかの事業が移譲されています(例:ブルキナファソでは保健センターでの栄養改善事業の行政への移譲が完了)。
中期目標の評価では、目標として掲げた事業がどこまで進み、進んだ要因、進まなかった課題などを分析しています。次の中期目標・計画では、事業の移譲までの工程をHFWの支援の手法として確立する予定です。
まずは、昨年までにHFWが取り組んできた事業にどのような成果と課題があるのか、前回の中期目標の評価を行います。その後、今年後半から次の中期目標を設定し、中期計画を立てていきます。
スタッフの集合写真。4支部のスタッフが日々取り組んでいる事業を中期目標に照らし合わせて評価し、方向修正などを行う
【ブルキナファソ:2019年】2005年からHFWが運営してきた公立の保健センターでの栄養改善事業を行政に移譲する際、合意書を交わす郡知事とHFW職員
【バングラデシュ:2019年】「事業の推進役」として選ばれた村人は2つの活動地で合計56名。写真はボダ郡の研修終了者。手にしているのは、活動に使う教材
■事業の移譲。それは、住民たちの「食料への権利」が実現に近づいたことの証明
HFWは「食料への権利」を実現するための多様な事業に取り組んでいますが、本来これらは、地方行政や政府が費用を負担し、提供するべき社会サービスです。HFWでは、地域住民や、地方行政などの運営能力強化や関係構築に取り組んだ後、適切なタイミングで事業を移譲するようにしています。
■移譲のために、HFWは人を育てています
HFWは4つの国で活動を行なっていますが、各国ではそれ支部事務局長を含めた全員が現地人からなる支部スタッフがおり、日々の事業を運営し、「食料への権利」を実現するための活動を担っています。さらに、事業地では「事業の推進役」を育て、自治体も巻き込んで事業を進めています。
しかし、支援対象者のまだ支援を続けてほしい、あるいはスタッフ側にもいざ支援を終了するとなると忍びないなど、気を付けていても、このような心情が起きてくることもあります。実際に、今も事業の移譲が予定通りのペースでは進んでいない支部もあります。
そのような支部のスタッフに対しては「直接支援する当事者」ではなく「住民主体で地域を改善していけるよう支える伴走者」へとスタッフ自身が意識を明確に保つよう、継続して働きかけることをし、移譲への段取りを立て直しています。
このようにして徐々にしかし確実に、貧困家庭への食料支援や母子保健センターの運営などから、協同組合の能力強化や、「食料への権利」実現のためのアドボカシーなど、より社会的インパクトが大きく、住民主体で地域を改善していくための能力や環境を整える事業へと移行しています。