妊産婦に栄養指導。安くて栄養価の高い旬野菜の組み合わせなどを教えた
乳幼児と妊産婦対象の栄養改善・指導
HFWでは2010年から、緊急に栄養改善を必要とするお母さんと赤ちゃん100名ずつ計200名を支援してきました。お母さんに栄養と調理の指導をしつつ、週5日、お母さんと赤ちゃんに栄養改善食を提供。HFWの支援が終了した後も栄養を取り続けられるよう、2年目からは改善食の提供を減らしつつ、お母さんたちに鶏を提供して養鶏を指導しています。実施にあたっては、家庭訪問を繰り返して、家庭の様子や参加者の栄養状態をつぶさに見てきました。この3年で、ほとんどの参加者の栄養状態が回復。鶏も順調に育ち、全世帯が毎日2個以上の卵を得られるようになっています。
ここまでくるためには、大きな障害がありました。農村部では、予想以上にお嫁さんの地位が低かったことです。栄養を残す調理方法であっても、お姑さんの好みに合わない場合には実践できません。また、お嫁さんは食事を一番最後にとることになっているため、栄養ある食事をつくっても夫がほとんど食べてしまった残りものばかり。ほかにも、家の食材はお姑さんのものと見なされるため、お嫁さんが育てた鶏でも、卵を本人が食べられないのではという懸念もありました。このような背景から、HFWが支援しても、低体重から回復しない参加者がいました。
そこで私たちは、2011年から家族向けのワークショップを行い、妊産婦は特に栄養を取らなければならないことなどを理解してもらうようにしました。また、提供時に鶏はお嫁さんのものであることを家族に伝え、鶏小屋に名前プレートを貼りました。これにより、お嫁さんたちは気兼ねせずに卵や鶏肉を食べています。
こうした事例は、バングラデシュの他の農村地域でも参考になるはずです。HFWでは今後、この3年間のノウハウを生かして、別の妊産婦と赤ちゃんを対象に同事業を1年間に凝縮して行うことを検討しています。そして、その様子をメディアに取材してもらう、手法を冊子にまとめるなど、地方行政や他のNGOへの波及をねらった展開を考えています。
(バングラデシュ支部 栄養改善・指導専門職員:マレカ・ベグム)
※この事業は、味の素「食と栄養」国際協力支援プログラムの助成を受けています。
義母と夫に、妊産婦には十分な休息や栄養が必要であることを伝えた
Message from Bangladesh
村での栄養指導の様子
Message from Bangladesh
私は、長男が生後12日目のとき、この事業の参加者に選ばれました。これで1日1回はきちんとした食事をとれると、本当にうれしかったです。その後、HFWのマレカさんに、私の体重が増え、子どもも順調に育っているといわれました。でも、その後、予定外の妊娠をしてしまい、ふたたび栄養が足りなくなるのではと心配になって、すごくショックでした。そんな時、夫が「心配しなくていい、僕は君も子どももケアするし、全力でサポートするよ」と言って、とても協力的になりました。夫からこんな言葉を聞いたのは初めてのことです! いったい彼に何が起きたのかしら? 後で、夫がHFWの栄養ワークショップに参加して考えが変わったようだと、マレカさんがこっそり教えてくれました。それからは、妊娠をうれしく思えるようになりました。その後、無事に出産し、今では家族4人、元気に過ごしています。
シャヒダ・ベグムさん シェルケルパラ村