久しぶりの出張報告会開催。参加者のみなさんとベナンの“現在地”を一緒に考える時間になりました。
―ベナン出張報告会 開催レポート(12/11)―
12月11日、ベナン出張報告会「新担当者が感じた、ベナンの現在地」を開催しました。
今年9月に初めてベナンのハンガー・フリー・ワールド(HFW)の活動地のひとつであるベナンを訪問した新担当職員2名が、現地で見て・聞いて・感じたことを、会場とオンラインをつないだハイブリッド形式でお伝え。今回は久しぶりの出張報告会活動を支えてくださっている支援者様や関心を寄せてくださるみなさんとともに、ベナンでの様子や、現地で暮らす人々の姿を、少しでも身近に感じていただき、一緒に作る報告会をめざしました。
どんな報告会となったのでしょうか? その様子を、当日は裏方として参加させていただいた広報担当からレポートいたします。
会のはじまり:気になる治安状況は?
会場は無機質な会議室だった部屋が、アフリカのにぎやかな布や民芸品で彩られ、すっかり明るい雰囲気に。会場に、そしてオンライン会場に、続々とやってくる来場者を迎えます。
司会進行を務めたのは、国内事業チームディレクターの石川。
会の冒頭では、海外事業担当の内野とともに12月初旬に報じられたベナン国内のクーデター未遂についても触れ、「スタッフ全員の安全は確認され、現在は落ち着いた状況にあります」と最新情報が共有されました。遠く離れた国の出来事を、自分ごととして気にかけてくださる支援者の皆さまに、まず安心していただきたいと考えました。
アイスブレイク:ベナンの歩き方
続いて、監査のためベナンを訪れた管理チーム監査担当の小池によるバーチャルツアー。
初めてのベナン渡航で出会った日常の風景——経済的な中心都市コトヌーの整った道路沿いを歩く人々、色鮮やかな民族衣装、観光地として知られる植民地化へ抵抗した女性軍を讃えたアマゾン像や壁画アート、活気あふれる市場——現地の雰囲気が伝わる写真を見ながらの紹介は、まるで現地を旅しているかのようでした。
次は食文化。ベナンの食卓には、キャッサバから作られる「ガリ」、ヤムイモとピーナッツソースの「イニャムピレ」、発酵トウモロコシの餅「アカサ」など、土地に根ざした料理が並びます。料理の材料であるお米や豆もお見せしながら紹介しました。
また、ベナン南部で話されるフォン語の挨拶である「ア・フォンガンジャ?(こんにちは)」「エナチェ・ヌイ(ありがとう)」が紹介され、参加者のみなさんも実際に声を出してご挨拶。なかなか普段は知ることができない、ベナンが少し身近に感じられる時間となりました。
ベナン出張報告:事業地・ドジバタ地区の現在地 ― 自立を支えるしくみ
海外事業担当の内野からは、活動地であるドジバタ地区に根づく「自立のしくみ」の報告がありました。
ドジバタ地区はベナン有数のパイナップル生産地。換金作物による現金収入はある一方で、栄養バランスや健康面に課題を抱えています。そこで地域住民自身が運営する「モニタリング委員会」が中心となり、農業や栄養改善の活動を進めることに。
取り組みの一つが、トウモロコシなど栄養価の高い作物の種を栽培すること。他品種と交配しないよう、他の畑と距離を保つ工夫や、脱粒機の導入によって以前は指先の痛みを我慢しながら手作業で行っていた作業負担を減らすなど、着実な技術の積み重ねが行われています。
出張中には、モニタリング委員会のメンバーが、これまでの活動の成果と課題を内野に説明。印象的だったのは、地域住民が活動で集まる際に普段着ではなく民族衣装できちっと身なりを整えていたこと。それだけ真剣に取り組んでいるのだなと、気の引き締まる思いだったそうでした。
栄養改善の啓発活動では、女性や子どもだけでなく、男性や宗教指導者(イマム)も参加。「魚が買えないときはどうする?」という問いかけに、「チーズはどうだろう」「家庭菜園で補えるかもしれない」と、参加者同士が自然にアイデアを出し合います。
特に印象的だったのは、子どもたちの様子。最最前列に座って真剣に話を聞いているのですが、アフリカで大人の会合に子どもを含んでいる光景が、アフリカ各地を訪れてきた内野さんにとっては実は珍しいことだそうです。そして、咳をする子や不衛生な状態の子どもがほとんど見られず、全体的に健康状態が良かったことです。
長年の活動の積み重ねが、確実に暮らしに根づいていることが感じられました。
発表後の質疑応答では、事業地であるドジバタ地区の暮らしについて、具体的な質問や感想が寄せられました。
「ドジバタ地区はベナンの中でどのような地域なのでしょうか」「地域内で貧富の差は大きいのでしょうか」といった質問に対しては、ドジバタ地区はベナンの中でも一般的な農村地域であり、極端な格差がある地域ではないこと、一方で「特別に貧しい地域ではないからこそ、栄養の質をどう高めるかが課題」という説明に、うなずく参加者の姿も多く見られました。
また、オンラインでご両親と一緒に参加していた小学生も印象的でした。「村の人たちはどんなものを食べているの?」「どんなトイレを使っているの?」「パイナップルはいつとれるの?」といった素直な疑問が投げかけられ、それに対しては「トウモロコシなど手に入りやすく、調理しやすい料理を食べている」「トイレは屋外にあるが、囲いがしっかりしている」「パイナップルは通年でありますが、最盛期はある」と職員。
さらに、「換金作物が不作になったときでも、自分たちの食べるものを作れることが大切ですよね」という感想も寄せられ、家庭菜園や多様な作物づくりを組み合わせた現在の取り組みの意義を、参加者のみなさんと一緒に実感できる時間となりました。
HFW事業紹介:感謝と、これからの一歩へ
最後に石川から、HFWがベナンを含む4ヵ国で活動する国際協力NGOであること、そして、こうした現地の変化は25年にわたる支援の積み重ねによって生まれてきたことが改めて伝えられました。
現在実施中の冬募金(~2026年2月末)についてもご案内し、「今日お伝えした一つ一つの活動は、支援者の皆さまの想いによって支えられています」と感謝の言葉で会は締めくくられました。
ベナン出張報告会を終えて
遠く離れたベナンの“今”を、同じ時間として共有できた今回の報告会。
当日ご参加いただいた皆さまには、貴重なお時間を割いていただき本当にありがとうございました。残念ながらご参加できなかった方も、このレポートでわずかでも当日の雰囲気を感じ取っていただけたなら幸いです。
これからもHFWは、現地の人々とともに、飢餓のない世界をめざして歩み続けます。
ベナンの家庭料理「アタシ」の材料のアリコ豆とお米。会場にはベナンをより身近に感じてもらうために、民芸品や農作物なども展示しました。
アイスブレイクでベナンの暮らしを紹介する小池。オンライン参加のみなさんにも材料などをお見せしながら進行しました。写真の料理は、キャッサバの粉で作ったおもちのような主食のガリと、魚とトマトソースで調理したピロンという料理。
ドジバタ地区でのイマム(イスラム指導者の男性)が栄養改善の啓発活動をしている様子を説明する内野。参加者も興味深そうに聞き入っています。