HFWの2026年 複数の危機が同時進行する世界で私たちにできること - 飢餓のない世界を創る国際協力NGO ハンガー・フリー・ワールド HUNGER FREE WORLD     

活動レポート 日本

2026.01.01 日本

HFWの2026年 複数の危機が同時進行する世界で私たちにできること

今年もHFW一同、がんばっていきます!

~レジリエンスを持つ組織・地域づくりへ

 新年明けましておめでとうございます。今年もみなさまにとって良い年でありますこと、ハンガー・フリー・ワールド(HFW)職員一同願っております。 

 さて新年初めてのご挨拶に代えまして、HFWの2025年はどんな年であったか昨年を振り返るとともに、それを踏まえた今年の展望もお伝えすべく、事務局長の細井ななに、広報担当がインタビューを行いました。 

 

昨年を振り返って、大きな動きとは? 

ー昨年はいわゆる「令和の米騒動」にも見られるように、日本でも食料への不安が実感として強かった1年でした。私たちの活動地、ベナン、ブルキナファソ、ウガンダ、バングラデシュも世界的な食料価格の高騰や、気候変動による農業環境の変化、災害の増加など、「食料への権利」を取り巻く問題はより深刻になっているかと思います。 

 各国で状況は違うとは思いますが、昨年に特に大きな影響や変化はありましたか? 

 そうですね、昨年も一年を通して食料価格の高騰が続きました。各国の事務所からは、物価の高止まりがコミュニティの暮らしに影響をおよぼしているという報告が継続的に寄せられていました。政変やコロナ禍のような大きな混乱はここ数年の中では少ない一年ではありましたが、ともすると脆く、不安が常態化する暮らしの中で、支援者の方々の力強い支え、コミュニティの方々の、着実な歩みが感じられた1年でした。 

 2000年から活動を始めたHFWの支援地域では、2030年までに地域としての「卒業」を目指すことが住民の皆さんと合意できています。すでに当初の活動地域で支援を完了し、新しい活動地に移ったブルキナファソ以外はコミュニティが私たちの支援から「卒業」する時期が迫っており、ベナンのコミュニティは昨年末に卒業を迎えました。 

 厳しい環境の中でも、自分たちで乗り越えていく力がしっかり育ってきた、そんなことを強く実感した一年でした。気候の不安定さにも、住民の方々が落ち着いて適応しようとしている姿が印象的でした。ここ数年の厳しさを経て、コミュニティとしての“底力”がついてきたと感じています。 

 

ー「レジリエンス」は辞書では弾力や回復力、強靭性などと訳されますね。コミュニティにおけるレジリエンスとは、なんでしょうか? 

 コミュニティのレジリエンスというのは、気候変動や物価高、紛争など、すぐにはコントロールできない外部環境に対して、乗り越えていく力のことです。ただ、これは一人で備えるものではなくて、地域の人たちが団結して培う力なんですね。 

 例えば、天候や収穫量がいつでも思い通りになるわけではありません。だからこそ、どんなリスクがあるのかをあらかじめ知り、どう備えるかを学ぶ。そして必要な時に助け合い、協力して乗り越える体制をつくる。それがレジリエンスの基盤になります。 

 さらに、自分たちだけではなく行政とも連携し、「行政が果たすべき役割」をきちんと引き出す関係を築けることも、とても大切です。 

 バングラデシュでは、支援当初はHFWのバングラデシュ支部が女性グループの状況を行政に共有していました。ところが今では、女性グループの代表者が行政に直接働きかけ、研修や家畜へのワクチン接種などのサービスを提供してもらえるようになっています。まさに住民主体の、レジリエンスを備えた姿だと思います。 

 

事務局長同士の話し合いで見えてきた、コミュニティの力 

ーまず、昨年のハイライトは4月の支部の事務局長が一堂に会する、事務局長会議でしたね。 

 はい、そうですね。カントリーディレクター会議は、中期計画の方向性を丁寧に話し合い、しっかりと各国に浸透させていくための場です。前回の開催は2017年でしたが、その後コロナ禍もあって、ずっと対面で集まることができませんでした。その間にウガンダとブルキナファソの事務局長も交代し、新しい仲間として加わりました。 

 HFWでは2021年にビジョン(めざす世界)、ミッション(使命)、バリュー(価値観)を明確にする過程で、オンラインでは何度も対話を重ねてきました。そんな中で、今年ようやく、日本を含めた5つの活動国が一堂に会するコロナ禍以降初の対面の機会を持つことができました。 

 それぞれが向き合って意見を交わし、「私たちはなぜこの活動をしているのか」「何をめざし、何のためにここにいるのか」を、改めて深く確認し合えた、とても貴重な時間だったと思います。 

 

ーその中で、世界的な物価高の影響で経費が増加し、以前より活動にかけられる費用が少なくなったことを背景に、どのような活動ができるか問題定義があったそうですね。 

それに対して 「答えはコミュニティにある」という言葉が出てきたこと印象的でした。これは、具体的にどのような経験を踏まえて、地域にあるリソースを活用するという学びが生まれたのでしょう。  

 そうですね。ブルキナファソやウガンダではその苦悩が語られる一方、ベナンやバングラデシュでは、予算が厳しい中でも、逆にコミュニティから「こうすればいい」と提案を受けた経験が共有されました。 

 例えばベナンでは、本来は種を購入する必要があったのですが、住民の方々から「自分たちで作って、持続できるようにしたい」という声が上がりました。また、種を栽培するための畑の確保でも、予算が限られる中でどうするか迷っていたところ、支部事務局長が「コミュニティの動きを見ましょう」とお金を与えず静観する判断をしたんです。すると、住民たち自身が畑を見つけてきました。
 そこで私たちは、その畑にまくための種の購入の部分だけを支援しました。その結果、今年には住民の方々が自分たちで種を栽培できるところまで成長し、まさに住民主体の集大成のような良い場面を見ることができました。 

 

ーそれは素晴らしいですね! これも、住民たちの自主性を育てる参加型アプローチが実を結んだ瞬間ですね。 

 HFWは、住民の自主性を育てる参加型アプローチを大切にしてきました。私たちが考える幸せを押し付けるのではなく、「食料への権利」を知り、栄養や農業技術、持続可能な農業について学ぶことで、「その日を生きるだけでなく、未来に夢を持てるようになる」ことを支えています。
 最初の頃は種や苗を提供しながら学びを進め、栄養のあるものをとれば健康に生きられる、自分たちにはそれを実現する力がある、と知ってもらいます。地域の状況を理解し、小さな共同プロジェクトから始めて支援し、成功体験を積むことで5ヵ年計画を立てられるようになります。自分たちだけでうまく出来るようになれば支援を終えます。
 たとえ感染症や気候変動といった危機があっても乗り越えていける。それが参加型アプローチのめざす姿です。ベナンの例は、お金がないから種を買えない、という発想から、自分たちで作るという考えに変わっていく。土地の選択も自分たちで行い、農薬が使われていない場所を選ぶなど、参加型の帰結した姿が現れていました。 

 

ー今でこそこうした成果につながった参加型アプローチですが、これまでの苦労などはあったのでしょうか? 

 そうですね。2020年度までの活動の評価では、「依存を生んでしまったのでは」という反省がありました。2022年以降、改めて参加型とは何かを検討し直し、プログラムの実践を通して深めました。そのうえで、2025年の経営戦略に参加型アプローチを明記することができました。 

 

活動上の困難と、乗り越える組織のあり方 

ー今年は政治的な事情などで、ブルキナファソ支部の法人登録審査が長引くなど思うようにいかない場面もありました。 

 ここ数年、私たちが支部を置く国々では、NGOの活動環境に変化が見られます。「市民社会スペースの縮小」(Shrinking space for civil society )とも呼ばれるように、政府などからの市民活動への管理が強まっています。2000年にHFWが活動を始めた頃と比べて、いずれの国でも組織運営や事業実施にあたって、より丁寧な対応が求められるようになっいます。
 ブルキナファソでは、2022年にクーデターが2回起こり、その後の暫定政権のもと、治安悪化に伴う資金管理の監督強化が進みました。海外からの送金についても制限があったり新たな手続きや調整が必要となる場面が経験され、事務所運営においては、これまで以上に時間と労力がかかるようになっています。
 こうした情勢下でも、組織としてコミュニティから学び、予期せぬ事態にも対応できるレジリエンスを備えた存在になるよう努めています。 

 

大きな変化を迎える、今年の動きとは? 

ーベナンでは新しい活動地の選定、ウガンダでは現事業地の協同組合の自立、そしてバングラデシュにおいてもパートナー団体を通した事業の継続という大きな動きがある今年ですが、どう見ていますか? 

 まずベナンは今年2月に昨年卒業した活動地の卒業式典を予定しています。
 また、新しい事業地を決めるための絞り込みを進めています。昨年12月にはベナン支部の職員の強い希望により、新事業地選定を2年前に経験しているブルキナファソへの視察研修も実施しました。選定基準に沿って統計や公開資料からから絞り込んだ候補地を訪れ、コミュニティ代表者や行政へのインタビュー等からの聞き取りを通じて選定を進めますが、調査段階においても参加型アプローチの姿勢を崩さないよう慎重に進めたいと思っています。
 ブルキナファソも、新事業地で参加型アプローチを導入した当初は住民のみなさんにアプローチの意義を理解していただくことに、多くの時間と労力を要しました。しかし、そうした過程を経て、昨年は住民の努力もあって農業プロジェクトの収穫もよく、良いスタートを切っています。そうした経験を他の支部の取り組みにも生かしたいという気持ちもあったのか、はじめは予算面で研修の実施が難しかったベナン支部に対し、ブルキナファソ支部が自支部の予算枠の振り替えを提案し実現するという、感動的な一幕もありました。 

 ウガンダで支援してきた4つの協同組合も今年いっぱいで支援を卒業し、ウガンダ支部は新しい事業地の選定を始めます。 

 バングラデシュでは、昨年末に2つの事業地で行ってきた活動を、現地のNGOへ引き継ぎました。HFWは、現地NGOが自立して活動できるよう伴走し、2030年に支援を終了する予定です。  HFWは、公益に資する活動は最終的に現地の人びとが担っていくことが大切だと考えています。事業地では住民組織が育っていることから、今が引き継ぎにふさわしい時期だと判断しました。引継ぎ先の現地NGOは、HFWに影響を受けて生まれ、自国の発展を自分たちの手で実現したいという強い思いを持っています。理念もHFWと共通しており、HFWの思いは受け継がれていくと考えています。 

 今回の引き継ぎは、単なる撤退ではなく、国全体での活動を次の担い手へ託す大きな節目です。また、現地NGOとの協働は、HFWにとっても今後の活動の可能性を広げるものとなります。   

 

飢餓のない世界へ向けて 

ーSDGs2を達成する、飢餓をなくしていくという大きな目標のある私たちですが、どのぐらい近づいたのでしょうか。 

 コミュニティ単位では、レジリエントな地域が育ってきたという意味で大きな前進があります。ただ、世界的な食料システムの問題は依然として大きな壁です。 

 この問題は誰もが当事者です。私たち消費者はもちろんのこと、貿易や物流に影響力を持つ政府や企業が、遠く思える開発途上国の生産者と全てつながっている。 

 地域のレジリエンスと、上流の食料システムの改革、大きな目標の達成のためにはその両方が必要です。HFWが事務局を務めている「世界食料デー」月間でも、近年では参加者が増え、また多様な分野の方が関心を寄せてくださるようになりました。これは「食料は生産だけではなく、社会全体の問題」という理解が広がってきたことを心強く思っています。
 今年もこの食料システム改革の働きかけを想いを同じくする様々な団体、個人のみなさまと、進めていきたいと考えています。 

 

ー それでは最後に、 HFWを支援してくださっている方へメッセージをお願いします。 

 いつも応援してくださって感謝しています。みなさまの期待に応えられる組織となれるよう、ここ数年、組織強化にも取り組んできました。
 私たちのバリューである「包摂・連帯・誠実・革新」を大事にし、 HFWが包摂性のある活動ができるようにみなさんと連帯し、支援者の方々にも、コミュニティに対しても誠実でありたいと思っています。そうすることによって、ともに革新的な動きをもたらせると考えています。これからも温かく見守っていただけたらと思います。お気づきのことがあれば、どうかご意見をお寄せください。 

 今年もみなさまにとって良い一年になりますように。