ワルドゴ村に到着したベナン支部の職員たち(標識左)と、ブルキナファソ支部の職員(標識右)。真ん中の黄色い服の女性がベナン支部ファトゥ事務局長、その右のシャツを着た男性がブルキナファソ支部フランソワ事務局長
― ベナン支部が訪れた、ブルキナファソ支部 現地視察のご報告
新たな活動地へ向かうため、参加型開発の手法を導入
ハンガー・フリー・ワールド(HFW)では、各国の活動地で「住民主体の参加型開発」を重視した取り組みを進めてきました。2025年11月には、ベナン支部の職員が、ブルキナファソ支部で実施している参加型開発の現地視察を行いました。 今回はそのご報告をいたします。
ブルキナファソ支部は、参加型開発の実践でモデル的役割を担ってきた拠点です。2022年から新たな地域へ活動の場を移すにあたり、初期段階から徹底した参加型開発の手法を導入しました。2024年からはパイロットプロジェクトも軌道にのり、参加型開発を徹底することの効果が目に見えてきた時期でした 。
一方ベナン支部では、これまでの活動地の卒業を控え、2026年には新しい活動地へと移行を見越していく時期です。ベナン支部は約20年にわたる活動の中で、住民主体の取り組みが根づいてきました。それは長年の試行錯誤の積み重ねによって培われた経験によるものでしたが、より体系立てられた参加型開発の手法を改めて学ぶことで、新たな活動地にそのノウハウを活かしていく予定です。
参加型開発とは何か
さて、ここで改めて参加型開発についてご説明します。参加型開発とは、外部の専門家や支援団体が主導して計画を立てるのではなく、住民とともに現状を調べ、課題を整理し、合意形成を経て行動につなげていく開発アプローチです。
例えば、農業が主要な目的であるプロジェクトであれば、作付け時期などを話し合い、コミュニティ全体の農業カレンダーを作成します。もちろん個人で違う訳ですから、その違いをすり合わせ、譲歩し、合意に至る過程そのものが、コミュニティの一員としての自覚を促し、結束を強め、その後の活動を行っていく上での原動力となります。
ブルキナファソの事例から学ぶ
その参加型開発をいち早く導入したブルキナファソのワルドゴ村とヴォセ村へ現地視察に訪れた、ベナン支部の職員。そこで見たのは住民たちの熱意にあふれた様子でした。しかし、ブルキナファソ支部のフランソワ事務局長によると、活動開始当初から全てが順調だったわけではありませんでした。
ブルキナファソは2022年に起こったクーデターにより、現政権が暫定政権を握っています。また、世界で最もテロの脅威にさらされている国であり(※)、不安定な社会情勢が続いていました。そうしたことから、地域住民が話し合いの場を持ち、自分たちで目標や期間を定めて取り組みを進めるというやり方は、次第に現実味を持ちにくいものになっていました。
そのためHFWが現在の活動地で活動を始めたばかりの頃、多くの住民は「何を持ってきてくれたのか」という姿勢でした。しかし物資支援を伴わない参加型開発に対し、住民たちの堪不満を募らせる場面もあったといいます。住民と向き合い、時間をかけて自立を目指す参加型開発は、今のブルキナファソで行う支援としては異色といえるものです。
しかし活動を進めていく内に、コミュニティ単位で課題に取り組むことで、研修を受ける機会を得られたり、農作業を改善できたりするなどの良さが住民たちに実感されてきました。さらに活動に協力的な行政の農業技官が気にかけてくれることで、「置き去りにされていない」とつながりの中で活動していることに気づくきっかけにもなりました。このような経緯を経て、農業や生計改善に関する成果が現れてきたのがここ2年の活動でした。
このような、ベナンよりも厳しい社会環境に負けずに活動してきたブルキナファソでの活動の説明を受け、ベナン支部の職員たちも感銘を受けたようでした。
外からの視点がもたらした気づき
今回、ベナン支部の職員がブルキナファソ支部の活動地を訪れたことは、ブルキナファソ側にとっても大きな意味を持ちました。外国であるベナンからの訪問者を前に、住民が自分たちの活動について説明し、自らの言葉で考えを語る姿が見られたのです。この変化は、日常的に接するブルキナファソ支部の職員だけの関わりでは、引き出すことが難しかったものでした。
また、ベナン支部では長年の活動を通じて衛生面の改善にも取り組んできました。啓発活動に参加する際の服装や清潔さについての考え方が共有されたことで、ブルキナファソ支部でも、これまで十分に意識されてこなかった衛生に関する課題が可視化され、今後の改善点として認識されるようになりました。
ベナンが得た学びを活かして
ベナン支部はこれまでも、本部海外事業担当の槌谷から参加型開発の基本的な研修をオンラインで受けるなど、理論の部分は学びを深めてきました。今回の現地視察を通して、その理論と実践が一貫していることが確認でき、理解を深めることができました。住民の熱意が引き出されている様子から参加型の徹底への不安が払拭され、大きな励みとなりました。
この研修は支部同士の学び合いというHFWにとってもチャレンジングな取り組みでしたが、両国の状況は異なるものの、同じアフリカでの参加型開発という手法を共有する有意義な研修となりました。今後も支部同士の連携を深め、住民主体の支援役に徹し、行政とも連携を図ることも視野に入れつつ、ベナン支部の新しい活動地に役立てていきたいですね。
※参考:Institute for Economic & Peace, Measuring the impact of terrorism Global Terrorism Index 2024
ワルドゴ村での住民の集会の様子を視察する、ベナン支部の職員
ブルキナファソ支部事務所内での打ち合わせの様子
ワルドゴ村での現地調査の際には、参加型開発について住民たちと意見交換を行いました
内野香美 HFWプログラムオフィサー
JICA海外協力隊(旧:青年海外協力隊)でセネガルに赴任して以来、西アフリカ仏語圏で農業、環境関係の活動を続けて早30年!
HFWではブルキナファソとベナンを担当させて頂いております。両国とも赴任経験があるのでそれを活かしていければと思っています。
